社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年09月05日

『卸売市場に希望はあるか 著者:小暮宣文』を是非お読みください


 実質今日5日から九月の商いが始まった。先週の中ほどから、今度の台風は大きそうだというので、台風の事が気になり行動を控えた人も多いだろうが、東京などではまだ先の事。進路や予報を注意しておく事は必要だが、台風が来るからと困った気持ちになって、行動を疎かにしてはいけない。目の前の事をより真剣に行うべきだし、楽しんで過ごすべきである。正に西洋のことわざ「橋まで来ないうちに橋を渡るな」であり、目の前の事を確実にすることによってそれが未来へつながってゆく、という事である。

 こんな事を考えながら、今年の小生の夏のライフワークである、小林秀雄について ‘考える’という題材を考えていた。考えていくと、その徹底した考えの其処には信ずるという事が、信念となってそれをそう判断したり、実行したりするのだ。考えるためには空想ではなく想像力が必要で、想像には、理性も感情も直覚もある。その人の立場に立って考えていく。自分の事が一番分からないのだが、自分の事でさえ客観的に、自分の今いる立場に立って、しかも感情を添えて考える。そのことが想像になり、それが考えることの大切な要素になって、直接経験したことではないことも、考えるネタになって信ずることへと繋がっていく。信ずること、というのはそれが自分にとってどう考えても真実だ、と思う事である。社内でも、ひとつのセクションのトップが部下に、まず考えろ、と言っている。考えて行動しろ、という事であり、このことは今僕が言った考えるという事と深さが違うが、その時の真実を見つけてそして行動しろ、という事を言っているのだと思う。とどのつまり信ずるという事は、もっと静かな、波打たない鏡の様な水面(すいめん)に映る月の様な、静かな、しかし透明感のある、確固たる信念という事である。あたふたしたところがない、騒がしくない、うわついていない、静かに日常生活を送っている、その静けさが真に考え抜いた時に出てくる、という事である。相手の身になって想像する、これが、考えることの本質である。相手というのは人の場合もあろうが、自然の場合もあろう、物体の場合もあるが、それも広くは人や自然がつくったもの、その身になって考える、という事だ。

 そんな風に休暇を頂いて考えた後、小暮宣文先生の『卸売市場に希望はあるか』を読んだ。 ぜひとも生鮮食料品花き業界の人には読んで頂きたい本である。市場特有のエネルギッシュな諸活動を、文章から感じることができ、書き手の筆致はというと、先ほど言った、澄んで透明感の強い、ものの見方と園芸農業と卸売市場に対する愛情が感じられる。結論は、人口が少なくなるため、生産も少なくなる、特に嗜好性の強い果物や花は野菜に比べてその速度は速い。卸売市場は合併するなどして、財務上の健全化を図るだけでなく生産者の販売代理業として、卸、仲卸は小売店の仕入れ代理業として、良き人材を揃え、消費者が好むものを生産流通させていく。また特に卸売市場においては、生産者と共に、自分のエリアの消費者が必要とするものをつくってもらい、そして、生産者が必ずペイするようにする。そこに力を注ぐ事ができる、即ち小売業と生産地の発展に寄与する市場は生き残っていく。それ以外の卸売市場は消えていく。今、生産地への“足し前”で、国税庁は日本全国の主要市場に対し、それは寄付金あるいは交際費でそれは税法違反ではないか、との問題をつきつけている。 この様な厄介な問題をクリアしながら、今申し上げた市場集約の目途を、2024、2025年、遅くとも2030年までにつけていく。日本経済の中で起きている、広くはこれも二極化のひとつである。


投稿者 磯村信夫 16:20