社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年01月08日

「無消費」を「消費」に変える


 昨年末、テレビのコメント出演の依頼があった。20世紀末のピークに比べて消費が少なくなってしまった花を、どうすれば消費者に買って貰えるか、問題解決のアドバイスをするバラエティ番組である。昨日7日は、七草粥を食べて、本日の成人の日からは、春の花を家で飾るつもりだ。こんな風に習慣的に花のある生活を楽しんでいる私にとっては、花が消費されないことは考えられない。しかし、一般的には、無いならば無いで慣れてしまう。

 モノやコトを買うということは、商品そのものが目的なのではなく、問題解決や自分の進化・進歩をしたいという気持ちからだ。そんな目線で一般消費者を見てみると、花の「無消費」の人が多いことに気付く。しかも、花や緑を飾ってくれれば、かなり問題解決の手助けとなるのではないか、と思われる人も多い。それは、家庭や職場、そして、街にも多いのだ。私の家には、朝、顔を洗う洗面台にお気にいりの花が必ず飾られている。これを見るだけで、一日分の元気や感情ののりしろを貰っている。腹が立つシンギュラーポイントまでの余白を、広げてくれているような気がするのだ。また、フラワーアレンジメントを行うと、自律神経が整い、ストレスに反応するコルチゾールが下がるというエビデンスがある。このような花や緑の効能を証明するエビデンスが、随分と出てきている。だから、職場に経費で花や緑を飾ってもらえれば、絶対に上手くいく。社会的にもそうだ。街にある花や木々、緑は、自然と一体化し「生きていて良かった」と教えてくれる。そして、後は「気持ち」だ。花のプレゼントは、貰った人が喜ぶだけでではない。贈った人もこんなに喜べるプレゼントがあるだろうか。この花と緑の「機能・社会的意義・心の豊かさ」の三点を、どのように「無消費」の人たちに気付いてもらうか、きっかけ作りがとても大切である。

 例えば、今月1月なら、昨日は七草粥だから、七草の寄せ植えを綺麗に洗って食べてしまう。今日からは鉢物のプリムラを飾ろう。21日は、松田聖子さんの「赤いスイートピー」がリリースされたことから「スイートピーの日」だ。歌好きの人や、その時代に思い出のあった人に飾ってもらう良いきっかけになる。31日は「愛妻の日」だ。特に新潟県では、県のチューリップを飾ってもらおうと宣伝活動をしており、我々も応援している。大声で愛を叫ぶのが恥ずかしい人が、そっとチューリップを贈る。このように、花を買う新しいきっかけを、特に路面店やネット販売のお店はプロモーション活動して頂きたい。

 「無消費」の人がこれだけいる。食欲ほど強い欲求ではないので、無いならば無いで、花が与えてくれる筈の“生きるよろこび”レベルが下がっても、気付かないで済ませてしまう。例えば、一輪の花と、テーブルのパソコンの横の一つの多肉植物。これがあるだけで、その人の「生への感謝」レベルは上がる。「意識が行動をつくり、行動が習慣をつくる。習慣が人格をつくり、人格は運命をつくる」。これを念頭に、花を販売する我々は、「花は人を幸せに出来る」という確信を持って、買って貰えるきっかけづくりを行っていきたい。これだけ無消費の人が多いということは、今後に期待出来るということである。

 


投稿者 磯村信夫 : 13:50