社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年09月18日

「敬老の日」=「歳を忘れるほど元気な年配者が多いことを祝う日」としたい。


 本日は9月18日(月)祭日、「敬老の日」である。20世紀末ごろまでは、「敬老の日」のお祝いで花が随分と動いた。アレンジもそうだが、リンドウの鉢やミディコチョウラン等、「敬老の日」向けに商品開発されたものも多い。しかしそのうち、60歳の還暦祝いに、赤いちゃんちゃんこをプレゼントする習慣も廃れてきた。高齢者は65歳以降というものの、いつのまにか日本国民の平均年齢が50歳になった今、65歳以降も元気に働く人も多い。

 これまで、年代別、性別、所得別等、デモグラフィック属性を用いてマーケティングがなされてきた。確かに、「2024年~25年、団塊世代が全て75歳以上になる」だとか、「団塊ジュニア」や「Z世代」、「経済格差の問題」だとか、こういったデモグラフィック属性を分析した話題も多い。マーケティングの基本でもある。それが、広告代理店の博報堂生活総合研究所では、世代による意識や価値観の違いが無くなってきている「消齢化」を提唱し、分析を進めている。勿論、昭和の時代のように、「一億総○○」といったものは無い。多様化しているが、その多様化の中でも、年代を超えて同じ好みや趣向、行動の人たちが多くなってきているのだ。これを「消齢化社会」と名付け、物を考える時、商品を開発する時にも、今までのデモグラフィック属性を用いたマーケティングとは違った考え方をする必要があるとしている。私もその通りだと思っている。例えば、私も歳を取ったから魚ばかり食べているかというと、野菜やお肉をバランス良く摂ることを意識したり、プロテインの摂り方を考えたりしている。SDGsに対する取組みも、Z世代の人たちと同じように捉えている。これは共通の問題意識から来る行動かもしれない。そして花き業界も「消齢化」で、鉢物や切花、さらにこの頃、お墓参りの花も、年代を問わず同じような趣向になってきているように感じられる。

 2020年の新型コロナウイルスのショックで、その年の春、花きの需要は極端に落ち込んだ。そのショックが甚だしかった一方、青果は在宅勤務やステイホームの増加で、家での食事が多くなり、スーパーの青果物や総菜の需要が高まった。その為、花から野菜に転作した人たちが多く出た。新型コロナがインフルエンザと同じ「5類」となり、withコロナで生活するようになった今も、共働き世帯の増加や、年配者も働くようになってきた日本では、総菜や加工食品が欠かせない。花から野菜に移った人は、そのまま青果の生産を増やしている。花き農家は高齢化で、手のかかる花が出来なくなってきたので、更に生産減になっている。しかし、「消齢化」で、テレビの朝ドラを見ても、マスメディアの報道を見ても、花のある生活の素晴らしさを知らせることが日常化しており、需要はしっかりある。価格は異常天候の影響もあるが、生産出荷量が少なめで、単価はここ10年で最高の部類になっている。従って、もう一度花にチャレンジしようとする機運が高まってきた。生産資材の高騰や天候の不安はあるかもしれない。しかし、相場水準を考えると、十二分にペイする。また、今後の人口減の中でも、一人の専有生活スペースは広がるため、消費は減らず拡大する可能性もある。さらに、「消齢化時代」と共に、地域差も少なくなっているのではないか。確かに若い人が多いと活力は違ってくるかもしれない。しかし、かつてのように地域差ばかりに目をやるのではなく、共通のことに目をやると、花き生産はどこの地域でも消費と対になって活発化してくるものと思われる。

 多様化で様々な価値観がある中でも、共通のポイント(日本の最近の変化や、共通の好み等)、何か一本筋のようなものを中心に物を見ることを花き業界でもやっていき、活性化を図りたい。

 
 投稿者 磯村信夫  14:36