産地ウンチク探検隊 生産者が語る花に対する熱き思いをご紹介します。

2022年11月08日

Vol.138 塩原花園様:埼玉県 プリンセチア/ポインセチア


穏やかな秋の気候に包まれる関東平野を黄金色に染める一面の稲穂。胸のつかえがすーっと落ちていく感じを覚えるのは、まさにこれがウンタンの原風景だからかもしれません。
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などと思いながら、この度は久々の鉢物生産者さまを訪問。ウンタンの取材では実にポインセチアは2006年以来、埼玉県は2016年以来でございます。どもども大変お待たせいたしました。鉢物ファンのみなさま、プリンセチア/ポインセチアファンのみなさま、クリスマスが待ち遠しいみなさま、そして塩原花園様ファンのみなさま!

関越自動車道にのって、あとちょっとで群馬県に入っちゃう~!!というぎりっぎりの埼玉県最後の出口上里スマートICでひょいと高速道路を降りて、10分くらい。
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「地元車両優先」の赤い看板を恐縮しながら品川ナンバーで通り過ぎ、やってまいりましたのは埼玉県本庄市の塩原花園さま。
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今回ここを訪れたのには理由があります。あるときウンタンは言われました。

「トップレベルのプリンセチアを出荷してくださる生産者さんがいてね、数量だけではなく、その品質も素晴らしい。形の均一さ、苞葉の揃い、ピュアホワイトという品種の白さも随一で、ポインセチアの品評会では毎年受賞する常連さんの凄腕生産者さんなんだ。何しろボリュームと仕立ての美しさが別格なんだよね。
どのようにしてあんなに素晴らしいプリンセチアができるか、探ってきてほしいんだけど」

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ラジャ(^^ゞ!!

指令を受けて、その指令先の生産者さんこそ、埼玉県本庄市の塩原花園・塩原茂夫(しおばら・しげお)さんです!

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★塩原茂夫さんの塩原花園様 基本情報

圃場所在地:埼玉県本庄市
生産品目:茂夫さんはプリンセチア専門、ご子息の卓哉さんはポインセチア専門、春夏はアジサイ
従業員:茂夫さん、奥様、ご子息の卓哉さん、そのほかに11名
圃場面積:施設2,000坪、露地300坪
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立派な連棟ハウスッ!あまりにも立派で大きなハウスだったので、最初は野菜か何かかと思って(つまり塩原さんのハウスと思わず^^;)、通り過ぎてしまったくらいです。

生産キャリア:約50年 ポインセチア一筋ほぼ半世紀!
プリンセチアを作り始めたのは2009年くらいから。


★ポインセチア・プリンセチア 基本情報
学名:Euphorbia pulcherrima
分類:トウダイグサ科
和名:猩々木(しょうじょうぼく) 顔が赤いサルの種類「猩々」(←もののけ姫にも出てくる)から
原産地:メキシコなどの中南米
名前の由来:アメリカの初代メキシコ大使ポインセットさんの名前から。メキシコで見つけて、ポインセチアをアメリカに持ち帰って広めたと。

★プリンセチアとは?
プリンセチアとはポインセチアを基に種苗会社のサントリフラワーズ様が開発した新品種の商品シリーズ。学名はポインセチアと同じEuphorbia pulcherrima
“プリンセチア”の名の由来は、“プリンセス”のような華やかな印象と、“ポインセチア”を組み合わせたそうです。
学名は同じですが、植物生理は異なるとのこと。とりわけ生産者さんにとってはその差は大きく、同じ圃場管理では生産は難しいといいます。

★圃場拝見
塩原さんのハウス内はこ~んな感じ!ひろっ!
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こんもりとドーム型に仕立てられたプリンセチアが、きれーーーーーーに等間隔で並べられています。
もうこの時点でウンタン感動•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧⁺.*♡
一見にして、塩原さんのお仕事の緻密さを感じることができます。
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まるで碁盤状に区画整理されたベンチに、1マス1鉢ずつ置いてあるよう。塩原さんの美学と秩序すら感じます。

せっかくなので動画でもどうぞ↓


こんもりと均一に仕立てられたプリンセチアが規則正しく並べられて一面に広がります。
並べ方ばかりではありません。ベンチや通路、カーテン等などのまとめ方、資材の整理整頓などあらゆるところに至るまで、清潔感があり、圃場内の空気も衛生的な印象。
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衛生管理に加え、湿度と温度が適切にコントロールされているということなのでしょう。一足踏み入れた瞬間に卓越した商品を作られていることが伝わってきます。
もうなんだか塩原さんにお話を伺う前に、塩原さんの仕事に対する心意気や人となりを垣間見たようです。

いえしかし!実際に塩原さんとお話ししてみると、厳しさや細かさを感じさせない、なんとおおらかなお人柄なのでしょう!とてもお優しい笑顔で、根気良く丁寧にわかりやすくウンタンに説明してくださいますし、さらにはフレンドリーに接してくださいました。
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塩原さん、なんだかますます不思議。圃場はきっちり、お人柄はおおらか・・・さらに興味を惹かれます。

★品質の秘密はここにあり!
さて、塩原さん、早速ですが、この均一なドーム型にプリンセチアを仕上げるポイントは何でしょうか?

「なんだろ。支柱かな」

え?支柱??
どこどこ?ナィ(・д・ = ・д・)ナィ、ミエナーイ!!
と葉をめくってみますと・・・あら、ほんとだ。よく見ると支柱が挿してあります。
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これまたきれいに、わからんように挿してあるわけですよ。言われるまで気づかないのも無理ないな・・・。

「隠れているからね。ほぼ花の数だけ支柱が立っていると思っていいよ。」

えっ!Σ(゚Д゚)花の数だけ?外側の枝だけに挿しているわけではなく??

「こっちに誘導するとこのあたりに穴が開いちゃうから、またここにも花が来るように枝を誘導して・・・なんてやっていると、結局ほとんどの枝に対して支柱を立てることになるんだよ」

プリンセチアをこんもりドーム型に成形するために、全体のバランスを見ながら、なんとほぼすべての枝に支柱をさして、枝を誘導していたのです。

“なんだろ。支柱かな”と控えめにお答えになったこの支柱にこそ、塩原さんのプリンセチアの最大の秘密があったのです。

ていうか花の数だけ挿すってどのくらい?1,2,3,4,5,6・・・
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うんわっ!つまり1鉢につき20本くらいは挿してあることになります。

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「なんてったって支柱差しが一番大変なんだよ。今の時期は従業員全員で1日中、支柱挿しだよ。40日間、ず――――っと支柱挿しに全員で専念するんだ

工エェ━━(il!´・д・)━━!!!
40日間、全員で1日中支柱挿しだなんて!どんだけ大変な作業なのでしょう。全員バレーならぬ、「全員支柱」。
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こんなふうに日除けパラソルさして、1日中黙々と圃場に整然と並べて管理されるプリンセチア全部に支柱を挿していくのです。

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支柱挿し完了組。そして相変わらず感動するほどきれいに並べられています。
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1鉢に挿すのにどのくらい時間がかかるのですか?
「わたしでも1時間で5-6鉢くらいかな。夜明け前、3時半とか4時とかに起きて作業スタートして、1日14時間15時間ず―――――っと支柱挿し。
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すごく時間もかかるし、挿し方のノウハウもあるし、商品を傷つけないように丁寧に刺さないといけないから神経も使うしね」

ギャァ━━(゚Д゚il!)━━ァァ!!!支柱差しにかける時間は1鉢に10分以上??
そんなに?うんわー、気が遠くなる~

この支柱は、ほぼほぼ咲きそろってきた今が“挿し時”。気が遠くなっても逃げるわけにはいかないのです(ツライ)。

「でも支柱が“立っているように挿す”のではなく、“立っていないよ~に”立てるのがコツなんだよ」
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ホント、商品を間近に見ても言われるまで支柱が立ってることに気づかなったくらいでしたから、上手に“立っていないように”立てていたのですね。この支柱は、完成度を高めるだけでなく、商品品質を維持するのに大きな役割を担っていました。
ほぼすべての枝に支柱を立てているため、販売中にお店で形が崩れにくいというメリットがあるのです。

「“売れるまでの間だんだん枝が垂れて形が崩れてきちゃったな~んてことがないからいいね”って言ってくるお花屋さんもいるんだよね。うちが出荷したままの状態でエンドユーザーまで届くんだよ。消費者のところでも形が崩れず、ずっと楽しんでもらえるから、お花屋さんも安心のプリンなんだよ

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なるほど、塩原花園さまのプリンセチアを塩原プリンたらしめているのは、この支柱技にあったわけですね。

極める人は違いますね。大変さを厭わずやり通す力、研究分析する力、探求心と向上心。
ここまでできちゃう塩原スピリットがどのように醸成されたのか、後ほど分析いたします。

ひとまず、これで塩原プリン(※)のこれで謎が解けました。
塩原プリン=なんだかおいしそうな名前ですが、「塩原さんのプリンセチア」の略称です。
本日ウンタンが許可なく勝手に名づけました( ´•ᴗ•ก )

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本邦初公開!!塩原プリンの秘技「支柱挿し」の様子を一瞬だけ倍速でご覧くださいませ。


ほんの30秒足らずの動画ですが、これをご覧いただくだけで、いかに1鉢の支柱挿しを完了させるまでに手間と時間をかけているか、お分かりいただけるかと存じます。“百聞は一見に如かず”ならぬ、“百読は一見に如かず”ですな。


★ハウスに漆黒の闇を・・・・!~塩原プリンの色付け~
ポインセチアは短日植物といって、日が短くなったと感じることで花芽分化が始まる性質を持ちます。まだ日長の長い彼岸前から、ポインセチアの開花や色付きを促すために実際の日没よりも早く、人工的にハウス内に漆黒の闇をもたらす必要があるのです。
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それをしないとポンセチア(プリンセチア)も永遠に葉の成長のみになってしまいいます。
そう、プリンセチアの色付けはポインセチアと同様、毎日同じタイミングで一筋の光も入らないくらい真っ暗な状態を作らないければならないのです。
塩原さんはどのようなタイミングで遮光を始めるのでしょうか。


「9月3日くらいから遮光を始めるんだよ。
夕方5時から朝7時くらいまで天井に遮光カーテンをかけて、圃場内を真っ暗にするんだ」

夕方5時。なるほど9月第1週ではまだ5時には日没になりませんから、やはり人工的に闇を作る必要があるのですね。
塩原プリンの色付けのコツは、毎年ほぼほぼ同じタイミングで始め、厳格なまでに毎日定刻に行う遮光にあったのでした。


★そもそもなんでポインセチア
塩原さん、50年もポインセチアと向き合っていらして、そもそも最初にポインセチアにしようと思ったきっかけは何でしょうか。

「うちの親や養蚕と露地野菜をやっていたの。それがすごく大変でね。
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うちはこの辺りの地域でも一番規模が大きな養蚕をしていたんだよ。しかも作型っていうのかな、1年に4回も5回も飼育するんだ。(お蚕を育てて繭にして出荷するまでのサイクルを年に4-5回やっていた)

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わたし自身が幼いころからイチ労働者みたいな感じでよく手伝っていたんだよ。
それでも親はいっそがしくてねー。
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地下足袋履いて仕事から帰ってきて、地下足袋も脱がずに玄関の“あがりっぱな(※)”で数時間寝ちゃって、そのまままた仕事に出ていくなんてこともあってね」
(※「あがりっぱな」といいます、はい。玄関を上がる端のところ。上がり端。)

関東平野でもとりわけこの辺りは米麦養蚕(べいばくようさん)が盛ん。塩原さんのおうちにおいても例外ではなく、かなり大規模でされていたわけですね。

「何が大変かってね、お蚕(※)が飼育ベンチからよく落ちるんだけど、学校に行く前に通路に落ちたお蚕を拾ってひとつひとつベンチに戻すのも大変だったし、お蚕がもぞもぞ桑の葉を食べる音もいまでもよく覚えているけど、夜寝ているときに枕元までお蚕が這い出してきたこともあったしね」

※「お蚕」といいます、はい。「お」をつけるんです。養蚕が大事な産業だった地域なので、大切な収入源として普通に「お」をつけます。最上級は「お蚕様」、カジュアルにいって「お蚕さん」、そして最低でも「お蚕」です。

うぎょーーーー(=◇=;)

「寝ている間に神様が枕元でささやいた」という経験はよくありますが、お蚕様が耳元でもぞもぞ桑を食む音を聞くなんて!それも錯覚ではなくリアルでですよ、これ。

「雨でも降っているんかな~っていうくらい耳元でざわざわもぞもぞ音がしてね」

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お蚕が桑の葉を食べる“もぞもぞ音”。そしてベンチに敷き詰められた一面の桑の葉の上に広がるお蚕。飼育中のあの匂いと空気感は、ウンタンの記憶にも鮮明に刻まれています。

幼い茂夫少年にとっては、大変すぎてトラウマになってしまうほどだったのですね。
「そんな親の姿を見ていたから、中学2年の進路決めるときに、園芸の道に行こうと思ってね。やはり農業を学ばないといけないとは思ったんだけど、同じ農業とはいえ養蚕ではなく花がいいかなって思ったんだ」

園芸の道を選んだのは14歳の茂夫少年。
塩原さんは高校生の時から園芸を学んでいたスーパープロフェッショナルなのです。(脱帽)

でもなぜゆえにポインセチア?
「高校の先生に紹介してもらって、卒業後に修行に行った先が、同じ埼玉県の行田市でポットマムを生産する人だったんだ。

ポットマムの研修のつもりだったんだけど、そこのお父親さんがちょうどポインセチアを作り始めたころで、せっかくならとポットマムとポインセチアと両方研修させてもらったんだよ。
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ポットマムは少し出荷量が減少傾向になっていた時だったから、ポインセチアがいいかなと思って、独立した時からポインセチアを作り始めたんだよ」

それがちょうど昭和48年後半くらい。
「ちょうど第一次オイルショックの時でね。周りがこんなタイミングでハウス立てて、花を作り始めるなんて大丈夫かって随分心配したけど、その逆風を原動力にして頑張れたように思うよ」

塩原さん、本当によく園芸の道を選んでくださいました!そして、その逆風に負けない精神力も、お蚕のお世話で培われたのかもしれません。
そのあとはカーネーションやクチナシなど10品目くらい生産されましたが、現在は春夏はアジサイ、秋冬はプリンセチアという二毛作です。
↓来期植えるアジサイの苗。すでに用意されていました。
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ベンチ下のバルブが2本に分かれているのも、春のアジサイ生産のため。
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アジサイ生産には青と赤の色味を調整するために、pHの調整が必要です。片方には肥料にアルミを多く含んだものをタンクから引いているので、バルブをこのように分けているのです。

そして今は、ご子息の卓哉さんにポインセチアを専門にお任せし、茂夫さんはプリンセチアに特化していているというわけです。
ご子息の卓哉さん。後ほどもう一度ごご登場いただきます☆
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プリンセチアに特化しているのはどのような理由があるのでしょうか。ポインと両方作ることはできないのですか?
「プリンセチアとポインセチアは管理温度が違うんだよ。同じ環境では栽培できない。やりにくいんだ」

なるほど、似ているようでプリンとポインは同居できないんですね。プリンセチアの方が若干暑さに強く、ポインセチアの方が暑さケアを必要とします。とはいえ、私たちの感覚からいけば大した差のように感じない程度かもしれません。きめ細やかな管理をされて、ちょっとした温度や湿度の変化、植物の異変にも敏感な塩原さんにとっては、これは本当に大きな差なのです。

「ポインは暑すぎると高温障害が出やすいんだよ。“柳葉”のように細くなったりする。
夏場の管理が難しいということから、ちょうど息子も就農したことだし、ポインを息子にお願いして、私はプリンに特化することにしたんだ」

いや、ウンタン読者のみなさま、本庄市の暑さを侮るなかれ!
本庄には気象台がないからニュースに取り上げられませんが、塩原さん曰く“本庄市はきっと日本一暑い場所”。
というのも、毎年気温高いと報道される伊勢崎、桐生、館林、熊谷、秩父などは本庄からすぐそこ。これらの地域に囲まれた本庄市は、「涼しいわけがない!」のです。

ハウスの中は、遮光していても43度は優に超えてしまう。本庄市は自然災害は少ないとはいえ、夏の暑さは毎年災害級。
高温障害対策のためにも、プリンとポインを分ける必要があるのです。


★改めましてポインセチアの塩原卓哉さん
ご子息の卓哉さんはポインセチア専門。日大の芸術をご卒業されたアーティスト系生産者。
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(アーティスト系生産者というカテゴリーがあるのか?いやあるんです。続きはまたの機会に)

こちらが卓哉さんの圃場です。
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「自分がこれがいいと思ったものを商品で表現して、それをマーケットにぶつけてみてどう返ってくるかというのが、とても興味深いと思うんです」
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さすがアーティスト系生産者さん。
農業生産とアートを同時に実現するホットスポットこそ卓哉さんの圃場。きっと卓哉さんのポインセチアの圃場は自己実現の場なのでしょう。
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卓哉さんが体現するポインセチアは、どのポットのサイズでも縦横比が同じというミラクルさが特徴です。
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通常4寸では足元が小さく、とはいえ苞葉のサイズ、花序のサイズは5寸6寸と変わらないので、結果頭でっかちになったような印象の商品になることが多いのです。
しかし卓哉さんのポインは違います。

「ドラえもんのスモールライトで大きな鉢をそのまま縮尺したような姿を4寸で実現しているんです」
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写真を撮ってネットで見たら、何寸なのかわからない感じですね。

「そうだよ。縦横比、上下のバランスを変えずにそれぞれの鉢のサイズに仕上げる。スケール感を合わせているのがポイントなんだよ。4寸なら花も小さくして密につけてコンパクトに仕上げる。
昔の4寸ポインは足元は4寸でも頭が大きかったり、苞が大きくて今見るとバランスが取れていなかったりするから、その違いが大きいと思う」

えー、そんなことできるのですか?
たとえ4寸でも上下、縦横のバランスが良く、完成度が高いと感じたら、それは卓哉さんのポインかもしれません。ぜひ生産者さんをチェックしてみてくださいませ。あたまデッカチではないバランスが特徴です。
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★プリンセチアを開発したサントリーフラワーズさんに伺いました!
それでは塩原さんのプリンに戻りまして、プリンセチアを開発したサントリーフラワーズ株式会社のプリンセチア担当上松治久(うえまつ・はるひさ)さんに塩原プリンの感想をお伺いいたしました。
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塩原さんのプリンセチア、どう見ていらっしゃいますか?

「塩原さんには毎年15,000鉢を超えるプリンセチアを生産していただいています。どの品種も素晴らしいですが、特にローザやオペラといった八重系の品種については圧倒的なボリューム感で群を抜いていると思います。
全国各地で開催されるポインセチアの品評会でも、毎年塩原さんのプリンセチアが多くの賞を受賞しています。
これからも贈られた方がその美しさに心を奪われるような素晴らしいプリンセチアを作り続けていただきたいと思います」

種苗元のサントリーフラワーズさんからすごい評価高!wow(゚Д゚屮)屮!!
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とりわけ八重系の品種が評価されているようですね。ウンタンがお邪魔したときには、八重は色付いていませんでした。
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八重の品種は晩生で色づくのは一重のものより遅いようです。つまり、その分管理する時間が長く、その分手間も時間もかけて管理コストも高くなるというということ。
しかも、八重の中でも色付きまでの日数は品種によってそれぞれ。よく植物の性質を観察して見極めて、最後まで完遂されるのが塩原さんのすごいところ。

「早いのがよくて遅いのがダメとかではなくて、季節がずれてくれることで、労働配分ができるんだよ。出荷作業が集中することなく分散して出荷できるから、考え方によってはいいこともあるんだ」
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このように大変なこともポジティブに捉えるところが素晴らしいですね。
「以前ね、うちで作ったロゼマーブルという八重の品種を海外の生産者マシューさん(仮名)が見て、“コレ、欲しいよ!うちでも作りたい!”と言ったんだよ。でもふたを開けてみるとすでにその生産者のところで作っていたんだ」
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Oh, Matthew! What’s up!?(ㆆ ㆆ ).。oஇ?
すでに圃場に同じ品種を作っていたのに、なぜ塩原さんのロゼマーブルを見てそれを作りたいとリクエストしたのでしょうか?

「海外の鉢物生産は概してオートメーション化されていて、効率化が重要視されているでしょ。いかに回転を速くして圃場を有効活用するかが勝負。晩生で生産に時間がかかる八重は効率が合わなかったのか、苞葉が色づいて開ききるまで待てなかったんだろうね」


つまり、完成品としての出来具合が全く別物だったということですね!?
マシューは自分で既に作っていたにもかかわらず塩原さんのロゼマーブルと同じ品種であることに気づかなかったくらい、完成度が違ったのです。

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「八重系は新しい苞葉が増えて展開して色付いて、バラも恥じらうほどのきれいな姿が出来上がるんです。効率重視の生産方法ではハウスを早く空けたい、どんどん回転させたいという思いから、苞が展開しきる前に出荷してしまうことが多いのでしょう」
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マシューが同一品種と認識できなったほど、塩原さんは立派に作り上げます。管理時間が長くて根気も必要な晩生系の品種。生産コストが高くなる分、品質の良いものを作らないとなかなかコストを充分カバーするに足る単価で販売することはできません。時間をかけて一級品を作る必要がある晩生の品種で高い評価を得ているところが塩原さんの実力の示すところですね。

プリンセチアの品種一覧はこちら(サントリーフラワーズさんのサイト)

★養蚕で培った強い精神力
14歳の時に茂夫少年が園芸の道を選んでくれたからこそ、現在の日本のポインセチア、プリンセチアがあることがわかりました。
顧客ニーズに合わせるために、ご自身の辛苦はさておき、どこまでも良いものを突き詰めて頂点まで行ってしまうのが塩原さんのようです。
「私の国ならすぐ色づいて、手間をかけずにすぐに出荷できるものを大量生産できるのがよい花なんだぜ」by マシュー
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でも日本の場合は、とりわけ塩原さんの場合は生産効率と出荷量よりも、1鉢に魂がこもった一鉢入魂系(←造語です)です。一鉢入魂系の逸品を追求するうちに支柱がマストになり、時間と手間をかけて栽培するのが塩原プリンのスタンダードになったというわけです。

こんな素晴らしいプリンを作ってくれる塩原さんは日本の至宝ですね。
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日本で最もよい花を作る生産者さんは、ほぼほぼ世界一に匹敵するとウンタンは思っております(๑ˊ͈ ꇴ ˋ͈)ウンウン
そして、塩原さんが品質をどこまでも追求されるのは、幼いころにお蚕の飼育で大変な思いをされて培った粘り強さに理由がありますかね。

プリンセチアは日本に生産者38人(のみ!)。
そしてそのうちの5人が本庄にいらっしゃるのだとか。
本庄5レンジャーといったところでしょうか。
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↑赤いのが塩原さんかな?

本庄はプリンセチア生産の聖地でもあるですね。


★良いプリンセチアの見分け方三箇条
【その1】塩原プリンを選ぶ。
これ間違いなし。

【その2】花の数を見る。
同じ鉢のサイズであれば花の数が多い方を選ぶ。花の大きさもバラバラよりは均一なものの方がおすすめ。

【その3】全体の形を見る。
こんもりときれいなドーム型になっているものがオススメ。※これは個人の嗜好にもよります。
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★消費者の皆様に管理のコツ by塩原さん
「水をやりすぎないことかな~」
熱帯の植物ですから、日本では管理は室内。それでも気温が低い冬に流通するので、そんなに水は必要ないのです。表面が乾いていても土の中は十分に水分を保っているときも。水やりは毎日ではtoo much!です。ご注意くださいませ。

塩原さんのお優しい口調と、なにも知らないウンタンに根気よく教えてくださる温かさにウンタンは感激してしまいました。明るい笑顔とトークを交えながら、次々とオモシロイお話しを展開してくださいます。穏やかで知的な人となりに触れ、ウンタンはここ本庄で心を洗われた気持ちになりました。
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人間性を取り戻すために塩原さんにお会いしたくなったら、塩原プリンを買って見つめていようと思います。


★塩原花園さまの格言
★支柱挿し命なり!
塩原プリンを塩原プリンたらしめているのは支柱挿し!
考え抜かれた場所に手間をかけて花の数だけ施された支柱は塩原プリンの命です。美しさと品質を支える柱だったのです!形が崩れないから生花店さんも安心。

★プリンセチアは労働コストがハンパない!
「全員支柱」で40日間支柱を丁寧に挿しまくる!
すごい手をかけて作っているものなんですよ。ココ大事。

★八重系、晩生系品種は完璧に苞葉が完全に展開するまでじっくり待つべし!
僕にはさっぱりお手上げだぜ。by マシュー

★ポインセチアとプリンセチアは生産環境もノウハウも大きく異なる。
生産圃場を分けて、最適環境で管理せよ。

★今年は塩原プリンをご堪能せよ!(食べないでね★)
ご家庭サイズの4寸、5寸がたくさん流通しています。生産キャリア50周年を迎えた今年、品質、数量ともに充実して、世界中どこを探してもプリン生産においては、もはや塩原さんの右に出るものはいないというくらいのレベルに達しています。


卓哉さんのアーティスト系ポインも併せてどうぞ!卓哉さんのポインは機を改めて取材させていただきたいと思っています。
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文責・写真:ないとういくこ@大田花き花の生活研究所
※一部の写真はサントリーフラワーズ様にご協力いただきました。