産地ウンチク探検隊 生産者が語る花に対する熱き思いをご紹介します。

2017年08月25日

vol.119 いいたての花様:福島県 カスミソウ


みなさま~、お待たせいたしました!( ^-^)ノ


5か月ぶりのウンチク探検隊は福島県飯舘村からお届けしマッス!

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飯舘村と書いて、「いいたてむら」と読みます。
イイテではなくイイでございますので、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m

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東日本大震災直後に全村避難となり、今年3月31日、6年ぶりに一部を除きほとんどの地域が避難指示解除となった福島県の飯舘村です。

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なんとこの夏から、その飯舘村に新しく花の産地が誕生!
大田花きにカスミソウなどの切花を出荷してくださるというではありませんか!?
震災復興のシンボルとして花を生産して、すでに生活者のみなさまにお届けできるようにまでなって、もしかしたら今みなさまのお手元にあるカスミソウも飯館村のカスミソウかも!?

そのような産地があると伺えば、訪問せずにはいられないのが産地ウンチク探検隊!
福島県飯舘村に誕生した新しい花の生産地をレポートします!

お邪魔したのは、飯舘村の「いいたての花」さま。
4人の生産者による生産組合です。
そのうちのお一人が高橋日出夫(たかはし・ひでお)さん。

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高橋さんの圃場に伺うと・・・
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ま、まさかの露地栽培\(☆o◎)/!!?

★露地栽培

おっと~!これは目を疑うまさかのカスミソウの露地栽培?これは現実か否か!?

「そう、うちはカスミソウを露地で生産しているの」

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現実であったーーー!( ゚ ω ゚ ) ! !

国内では比較的珍しいケースだと思うのですが、新規でカスミソウを栽培されるいいたての花さまが露地栽培を選ぶというのは、どのようなお考えが元になっているのでしょうか?

「これはね、生産指導をしてくれる種苗会社さんのアドバイスによるものなんだよ」

取材時に種苗会社のご担当者さまがいらしてくださいました!お話を伺ってみましょう。
こちらの方が生産指導をされているこちらの方が種苗会社の・・・・

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ん?
あれ?


ハリウッドの俳優さんですか?



ニホンゴ、OK??

「こんにちは」

Oh, my Godddd!!!!\(◎o◎)/!
これは大変失礼いたしましたm(_ _)m
まるで若いころのシルベスター・スタローンかジョン・トラボルタかというようなお姿ですが、もちろん100%日本人です。
決して怪しい方ではないのですが(笑)、匿名ご希望とのことで、今回の取材ではシルベスターさんと呼ばせていただきたいと思いますm(_ _)m

では日本語OKと確認できたところで、本題に戻ります。 なぜいいたての花さまではカスミソウを露地栽培されているのですか?

「これはあくまでも私からの提案だったのですが、カスミソウは別名“光草(ひかりぐさ)”と言われるくらい光を好むので、栽培には日照量が必要なんだよ。
だけど昨今の品種は水をたくさん吸収するんだ。乾燥は苦手な品種でね。ハウスでも水分コントロールを誤って乾燥してしまうとよくないんだ。 また、水をたくさん吸収するのに日照量が十分確保できないと、茎や根が柔らかくなりすぎてしまったり、花が密に付くのが難しかったりするんだ」

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つまり、弱々しい感じになってしまうということですね。

「特に夏場ね。
この日照量が多くてカスミソウにとって良い時期に、露地で作ったら良いものが作れるのではないかと思ってね。カスミソウでも今の品種ならではの発想だよ。
昔の品種ならちょっとハードルが高かったと思うけどね」

以前の‘ブリストルフェアリー’などの品種であれば雨に当たると茶色くなってしまうリスクがあり、“雨除けくらいしなくちゃね”と思われるところですが、現在の品種なら雨除けもいらず、最後まで露地で栽培できるのです。現に、既に大田花きではブリストルフェアリーの取り扱いはゼロ。
ハウスで栽培するときは、株が倒れないようにフラワーネットを張ったりしていたのに、もはや露地で栽培できる、フラワーネットも不要とは、良い品種が次々と登場し品種の世代交代が進んでいるのですね。

現在では「アルタイル」という品種がマーケットではダントツでナンバーワンシェア、2位がベールスター。
いいたての花さまでもアルタイルとベールスターを中心に栽培しています。

「私自身もカスミソウを露地で栽培してみるというのは初めての取り組み。恐らく全国でも現在は飯舘村くらいしかないだろうね」

全国でも唯一ですか!
他の人がやろうとしない露地栽培に着目したのはどのようなきっかけがあったのですか?
今まで各地で露地をしていない理由は何ですか?
「品種が露地には向いていなかったということかな。
少し前の品種、例えば‘ブリストルフェアリー’や‘雪ん子’など、どちらも現在の品種と比べると開花段数が多いんだよ」

開花段数とは花が徐々に開花していくときの段数です。

「現在の品種は3-4段ほど。だけど以前の品種は5段以上あった。
すると、全てが咲き切るまでに時間がかかりすぎてしまうし、上の段が咲いてくる頃には下の段の花が終わり始めてしまう。つまり、茶色っぽくなってきてしまうんだよ。それに、下から上に徐々に咲いていくから、どのタイミングで収穫すればいいのか判断が難しい。ハウス栽培で、ある程度開花調整する必要があった」

つまり、下の方の段と上の方の段にある花の開花期に時差があったということですね。

「そう。でも今の品種は比較的一斉に咲くから、露地栽培にも向いている。最後まで水をよく吸うので、ハウス栽培で水分コントロールを誤ったり、水を切ったりすると、逆に歩留り(製品率)が悪くなっちゃうこともあるんだ。」
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カスミソウの原産地は地中海沿岸からアジア圏。原産地を考えれば比較的乾燥した場所を好み、本来は加湿を嫌うはずなのに、改良種は最後まで充分な水を必要とするわけですね。

拝見した限り茶色くなった花もありません。

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「雨に当たってもシミにはならないんだよ」
これまで“カスミソウは露地では作れない”という概念もあったかと思いますが・・・
「最近は高冷地でさえも温暖化の影響で夏の気温が上がってきているでしょ。ハウスだと暑すぎて難しい時もあるんだよね。
そんな事情も考えると、飯舘の場合は露地栽培の方が良いものができるんじゃないかなって思ったんだ」

なるほど~!
露地栽培のきっかけは改良された新しいカスミソウの品種と温暖化にあったわけですね。

「カスミソウは気温が高すぎると茎は伸びないし、柔らかくふにゃふにゃになってしまうし、花は咲かないし・・・
カスミソウ栽培にとって暑さというのは大きな問題なんだよ。

最近の気温の高さに対応するのは、ヒートポンプなどで物理的に解決することはできるんだけど、それだと生産コストが高くなりすぎちゃうでしょ。
1. できるだけ低コストであること
2. ほかの生産地にすぐにはまねできない飯舘村ならではの生産方法の確立
3. 安定生産できること
主にこの3点に重点を置いて、この業界に入ってから30年間ずーーーっとカスミソウの露地栽培について考えてきたんだ。
現在の品種なら満を持して露地が一番いいのかなって思ったんだよ。

露地の方がハウスより夜温が下がりやすい。すると植物がゆっくり体を休めることができる。夏場でも夜涼しければ体がゆっくり休まるのは人間と同じ。
休むことができれば日中、光合成で得た養分が夜間に根に行きわたり、それがまた花の先の先まで養分が供給されるから、植物体も花も丈夫に育つんだよ。
もともとはカスミソウだって露地に咲いている花でしょ。だから露地で栽培した方が本来のパワーを得ることができる」

露地栽培したカスミソウの特長は・・・


特長その1◆茎が固い!
あ、ほんとだ!うわッ、すんごい。 茎が固い!!相当固いですよ、コレ。
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主茎もしっかりしていますし、花茎も相当固く締まっていて、まるでフローリストワイヤーのようです。
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いや、同じ細さならフローリストワイヤーより固くてしっかりしています。
驚異の固さ。これは一度みなさまに手にしていただきたい!
恐らく目をつむって触ったら、ワイヤーかカスミソウか区別がつかないでしょう。まさに鋼(はがね)の茎!

特長その2◆節間が短い!
植物体が丈夫な証拠!株も丈夫!
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特長その3◆花が密に付く!
ブロッコリーのように、花と花が密ついてクラスター(塊)になって付いています。
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特長その4◆ぶつかっても花が落ちにくい!
花に当たるとプリプリと花が揺れ動き、これがまたえらくカワイイ(o’∀`o)!
しかもちょっとやそっとぶつかっても花が落ちない!

など、いいこと尽くめです。

筋肉質の・・・そうですね、いわば“細マッチョ”で可憐なカスミソウというイメージでしょうか。

そのほか、特長その5◆カスミソウ独特の臭いが少ない!

どれどれ~
IMG_7419( ̄(oo) ̄)クンクン

あ、ホントだ。
臭いゼロと言ったら言い過ぎかもしれませんが、こうしてカスミソウが集まる集荷場や圃場にいても、10本束に顔を近づけても、臭いは分からないくらいです。
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そうですね~、臭いの程度でいけば通常のカスミソウの5分の1以下は確実。それならヘッドドレスや結婚式のテーブル装荷に使っても気になりませんね。

でもどうしてですか?シルベスターさん(。´・ω・)ん?

それはナイショ!」(●´艸`●)ウヒヒ♪

そこをなんとか!(*・人・*) オ・ネ・ガ・イ♪

ちょっとだけでもウン探に教えていただけませんか??ウン探を読んでくださる方以外には口外しませんから!(←ホントの約束!ウン探を読んでくださる方のみに教えちゃいまーす!)

「んじゃあ、ちょっとだけだよ」
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土に秘密があるんだよ。
福島でしか採れない土があってね、それはある地層の一部から採取してくるんだけど、それを混ぜると某成分の働きで臭いが薄くなるんだ」

tis(地層のイメージ)

わお!そんなことってあるんですね。Σ ゚Д゚≡( /)/エェッ!
福島だけでしか採れない地層から採取した土に秘密があるなんて、まさに地の利を生かした生産ですね。この土を土壌に混ぜるとフザリウム(カビの一種)の蔓延や立ち枯れも未然に防ぐ効果があるのだそうで、まさに一石二鳥も三鳥もといったところですね。

他にも飯舘の地の利というのはありますか?
「あるね~、これは大きいポイントがある。
飯舘村は“やませ”っていう風が吹くんだ」

やませ!あー、その昔、社会科の教科書に載ってたーヾ(*・ω・)!!・・・そんな程度の認識ですみませんm(_ _)m
6-8月頃太平洋側の北東から吹き付ける冷たく湿った風のことです。東北地方でも東側の地域ならではの風ですね。

「夏場の露地は無風で高温になりやすいけど、やませのおかげで涼しかったり、適度な曇りの中でも晴れ間が見えると日照量もばっちり確保できたりね。やませが露地の乾燥の害からも守ってくれる。
やませが吹くことでカスミソウの露地栽培を可能にしていると言っても過言ではないかもしれないね」

そう、なんといっても取材したこの日、東京では37-38℃との警報が出ていたのに、ここ飯舘村は26-27℃。この快適な環境がカスミソウの露地栽培を可能にしているのです。
学校の授業では東北の稲作にやませは大敵と習ったようにうっすらと記憶していますが、草花を育てるにはむしろこれが好条件に働くようです。だからこそ、草花の牧草も良く育ち、畜産業が盛んになるということにもつながっていくのです。
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一般的には不利といわれる気象条件を逆手にとって産業を発展させる飯舘村ならではの、すばらしい戦略ですね。

いいたての花さまも出荷ピークは、7-8月と10-11月との年2回
取材させていただいた高橋さんの圃場の標高が450mほど。飯舘村全体で200-600mくらい。高すぎないので霧も少なく、秋口でも日照量を確保できるため、11月くらいまで出荷が見込めるのです。

シルベスターさん、生産1年目、飯舘のカスミソウのデキはいかがですか?
「デキはいいですよ!(←太鼓判)茎が固くてしっかりしている。花もよく咲くし、落ちない。オススメだよ」

それでは、これらの条件を生かして今年から高品質なカスミソウ栽培を始めたいいたての花の4人をご紹介いたします!


◆高橋日出夫さん
カスミソウ生産面積 約7アール(700平方メートル)、そのほか、トルコギキョウ10アール、アルストロメリア5アールなど

冒頭でもご紹介しました高橋さんは、避難前からこの地でトルコギキョウなどの切花を生産されていました。
カスミソウの栽培を始めたのは、避難解除後から。
どうしてカスミソウを栽培しようと?
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「全てシルベスターさんのアドバイス!」

高橋さんは出荷ピークで相当お忙しいのにもかかわらず、ちーともイライラもされずに明るくお優しい口調でお話くださったのが印象的です。
高橋さんからのコメントでシルベスターさんへの信頼の厚さがわかります。
以前からトルコギキョウをハウス栽培されている高橋さんにとって、露地栽培も抵抗はありませんでしたか??

「いや~、最初は不安だよ。でも挑戦はしてみたいよね。
シルベスターさんが“大丈夫だよ”っていうから、言うとおりにやったらよくできちゃったーっという具合かな。

最初は苗も全く生長の気配がなく心配したけど、途中でグィ~ンと伸びてね。
なんてったって苗を作っている営業マンがうちの圃場に来てね、“こんなに良くできている産地ってほかにあまりないよ”っていうワケ。私たちはシルベスターさんの言うとおりにやって“これがフツー”って思っていたけど、そう言われればもっと自信持ってやろうって思うでしょ。最後にはきちんとイメージ通りの花が咲いたよ。何でも挑戦の時はうまくいくイメージを描くことだね」

挑戦して不安が確信に変わったわけですね。 IMG_7425
「そう、ビックリ。
これからは、仲間を増やしていけるといいなって思うよ」

見込みはいかがですか?
「既に、何人か来年から作りたいっていう人がいるよ。これまで花生産をしていない人もいるから、彼らがうまくいけばもっとほかにもやりたいっていう人が増えるんじゃないかと期待しているんだ」

収穫をされる高橋さんの奥様。
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いいたての花さまの構成メンバーは現在4名。これからさらに大きな生産グループになることが見込まれています。また、高橋さんはカスミソウのほかにも避難前から生産してたトルコギキョウや、新たに始めたアスルトロメリアも出荷を開始しています!
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◆菅野徳子(かんの・とくこ)さん 生産面積およそ4アール(400平方メートル)

避難前はブロッコリーや葉タバコを生産されていました。花生産は全くの新規。
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仮設避難所から帰ってきたあと、村から「カスミソウの生産どう??」と声をかけられ、何もしないよりはいいでしょうと始められました。その決断のあと押しされたのは徳子さんのご長男。

「お母さん、ボク手伝うからさ!」

花を作ることに迷いや不安はありませんでしたか?
「役場の人やシルベスターさん、グループのみなさんに教えていただきながらだから何とかなってるかな。
でもさっぱりなにがなんだかわからないわよ(笑)
夢中になってやっているだけ。
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花がちゃんと咲いてくれるかな~とか、他の人と同じくらいのペースでちゃんと育ってくれるかな~とか、余計な心配で気苦労ばかりよー」

やはり1年目ですし不安ですよね。きちんと花は咲いていますか?
「一応ちゃんと咲きましたよ。初めて出荷したときはひとまずほっと安心。」

徳子さんは毎朝4時半起き。身支度をして5時には仕事スタートです。
圃場でカスミソウを切って、作業場に持って帰ってきて規格を揃えて、葉茎の整理をして、ハサミでパチパチ足元を切って・・・すべてのカスミソウ1本1本の姿を整える。

「出荷準備完了までそりゃ~もう大変!今は最盛期だから量も多いし、いつになっても終わらない。ホント寝不足よ~(笑)」
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とても明るく美しく、きっと良いムードメーカーとしても慕われていらっしゃるに違いありません。


◆菅野益夫(かんの・ますお)さん 栽培面積 およそ8アール(800平方メートル)
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昭和50年ころから長年にわたり花生産をされていらっしゃる益夫さん。
この40年間、生産された花は数知れず。品目も多岐に渡ります。しかし実は、益夫さんが人生で最初に作った花はカスミソウなのです。

「だけどねー、当時、地元の市場に出荷したら目いっぱい咲かせてねと言われてそうしていたんだけど、目いっぱい咲かせると先に咲いた花が茶色くなっちゃってね、それを取り除いて出荷していたら、その手間がかかりすぎて大変だったの。それで別の花に変更したんだ」

なるほど、シルベスターさんがおっしゃっていた以前の品種の特徴ですね。そんなに大変だったわけですね(・д・;) 今カスミソウが人気再燃の背景には、品種改良で作りやすくなったことや手間が幾分減って作り手を確保しやすくなったということがあるのですね。

「避難解除になって戻ってきてね、みんな花作るっていうから、そんなら私も作ろうと思って“いきがい”でやってるんだよ」
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するとそれを聞いていた徳子さんが・・・ 「な~に言ってんのよ~!忙しくて目いっぱいな私の2倍作っている益夫さんが、なんで“いきがい”なのよ~!!(笑)」

飯舘村では、“いきがい”としてご本人の楽しみとして農業を始める人も、“なりわい”といって仕事として本格的に営農を始める人も、ともに「農」に携わる取り組みとして支援しています(後述)。花生産一筋40年、栽培面積が徳子さんの2倍の益夫さんに、“いきがい”じゃないでしょ!とツッコミを入れていらっしゃるわけです。

取材日は出荷最盛期でお会いできませんでしたが、もう一人佐藤和生(さとう・かずお)さんを含め現在は4人の生産者グループがいいたての花さまです。


4人勢ぞろいの写真(飯舘村提供)
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左から高橋さん、徳子さん、佐藤さん、益夫さん

来年には何人か増えていらっしゃるかもしれませんので、大きくなったいいたての花さまも楽しみです♪


◆福島県飯舘村 復興対策課農政係の藤井慎悟(ふじい・しんご)さん
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飯館村の復興対策の一環として農業を再開を支援していくミッションを遂行中の藤井さん。
先ほどの「なりわい」と「いきがい」について教えていただけますか?

「“なりわい”は仕事として農業をする人、“いきがい”は趣味や個人の楽しみのために農業をする人のことです。“なりわい”と“いきがい”という言葉を使って、目的は違ってもともに“村の農業復興を実現する取り組みなんですよ”と村民の方々にお伝えしてきているんです。

現在は農業を再開される方は170件ほど。(希望者を含む)
避難解除以降、村に戻られる方は現時点では1割未満といったところですが、農業再開170件というのは避難前の1割を超えています。

このうち、“なりわい”として花生産をされるのが予定も含め19件ほど」

そのうちの4件がいいたての花さまということですね。

「そのほかに“いきがい”で花を生産している人もいます。でも“いきがい”の人は将来“なりわい”としてステップアップする可能性もある。
“なりわい”の人もそれが“いきがい”として成り立っていたりするので(益夫さんのように!)、実は表裏一体のようなもので明確な線引きはないんですよ」

なるほど、あくまでも行政支援の観点から便宜的に使っている言葉なのですね。
それにしても“いきがい”と“なりわい”っていい組み分けですね。

将来の花き出荷拡大の目標などはあるのですか?
「飯舘村としては、少しでも多くの人たちがここでの農業再開をきっかけに、楽しくイキイキと生活してもらえるようにフィールド作りの支援をしていくことが役割と考えています。帰村をして農業をする人、村外から通いながら農業をする人、人それぞれの事情に合わせた形態があっていいと思います。

ここで楽しく生活できることのきっかけが農業だったり、そうでない場合もありますが、私はいま農政支援をしていますので農業の再開に向けて頑張る方のお手伝いをして、それが村の復興に繋がるといいなと願っています。

目標の数字を掲げてしまうと、その数字に縛られて村の主人公であるみなさんの幸せが後回しになってしまうと本末転倒ですから」

“村民の幸せファースト”ということですね!
みなさんのお姿を見ていると本当にイキイキとしていらして、お話を伺っているとこちらが元気をいただいてしまうくらい。例えば徳子さんのお肌ときたら、すべすべツヤツヤでなんとおキレイなこと!!!(←100%本当です)
—-徳子さんのお肌↓キリトル、キリトル——-
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あまりにもキレイで雑誌の表紙を飾れるほどですよ。
と思ったら、本当に表紙を飾ったのがいいたての花さまの4人。カスミソウ出荷スタートがきかっけで飯舘村の広報誌8月号の表紙に掲載されたのです。
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表紙だけでなく、もちろん本文で紹介もされました。是非こちらの写真↓をクリックして内容をご覧ください。 IMG_7399

「出荷再開などの農業再開の記事が続いたので、広報誌が明るい話題でいっぱいになりましたよ」と藤井さん。
なによりみなさまの笑顔と徳子さんのお肌が、日々大変な生活の中でも溌剌とお仕事をされていらっしゃる様子を物語っているように感じました。

高橋さん
「誰かのためにやらなくちゃいけないという考えではなく、自分が楽しく生きるためにどうしたらいいかって考えたら“好きな場所で好きなことをしていけたら、イキイキと暮らせるな”と思ったんだよ」
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つまり、“飯館村で自分らしく楽しく花生産をする”ということですね。

「このような生き方、考え方に共感した人たちが、“んじゃ、オラもやってみよっか”って自発的に花生産に参加してくれて、その人も幸せに生きていくことができたら有難いことだなって思うな。
そういう人を増やすために村が支援してくれているんだから」

藤井さん「高橋さんのように農業再開への強い意欲を持った農家さんがいてくれたからこそ、村では支援ができ、花の出荷再開に繋げることができたんですよ」

新規花き産地「いいたての花」さまのロゴマークは、飯舘村のオフィシャルロゴを採用しています。
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この「いいたて」の文字は飯舘村のロゴを使って産地名が印刷された出荷箱。
こちらがオフィシャルロゴです。藤井さんが乗っていらした村の車と同じデザイン。ちょっと見えにくいけど堪忍。
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藤井さん
「カスミソウは、イチゴ、サヤインゲン、和牛仔牛に続き、飯舘村では4番目の出荷再開。これらの作物については、食品ではない花(カスミソウ)を除いて、全て県による放射線のモニタリング検査を受けて安全性を確認した上で出荷しています」

いいたての花さまなどの成功例や笑顔が、村から離れバラバラになっている村民のみなさまを呼び戻すきっかけになって、飯舘の農業の活性に繋がるのですね。訪問当日は、この8月12日にオープンした「道の駅までい館」の正面にあるヒマワリが咲き誇り、まるでこれから帰ってくる村民のみなさまを「おかえり」と温かく迎え、活気を取り戻し始めた飯舘村を象徴しているかのようです。
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◆輸送箱の工夫

こちらが先ほどご覧いただいたいいたての花さまの輸送箱ですが・・・
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中身を拝見すると・・・
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このようなビニール袋に、
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それに栄養剤入りの水を入れて箱にセット。
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装着は簡単。ビニールの持ち手を輸送箱の耳にかけるだけ。

また、ビニール袋には“返し”が付いているので、輸送中も水がこぼれることはほぼありません。
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すごいアイデア商品ですね~!!しかも横にしても水がこぼれない!ォオ~!!(゚Д゚ノ)ノ
コレ、考えたの、どなたですか。

「シルベスターさん。こういうのはシルベスターさんなの」と高橋さん。

やはり頼りになる福島のシルベスター・スターローン!
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拝見したところ、作りがとてもシンプルで輪ゴムやテープなどの小道具を使っていません。つまりセッティングの工数が少ないので手間がかからないように思いますが・・・
「そう、簡単にできるの」
と高橋さん。
セットに手間がかからないということは、使う人がこれを解体するときも手間がかからないということです。

作業効率と商品品質の確保、両方の面から考え抜かれた輸送箱ですね!



◆最後に
いいたての花のみなさまとお話をさせていただくと、革新と挑戦に前向きでありながら穏やかで優しく、こちらが元気づけられてしまうくらいです。

飯舘村の菅野村長はおっしゃいます。
「人は人によって幸せになる」

売れないソバ屋が繁盛したのはソバ屋の心が変わったから。心の持ち方によって顔つきや表情、発言、行動が変わり、周りの見る目が変わり、その人の人生が変わるのだと説いていらっしゃいます。

飯館村の人たちは震災後の避難生活で大変な思いをされたことには違いありません。その困難を乗り越えても尚、今回お会いした人たちの笑顔からは、そのご苦労を微塵も感じさせず、イキイキハツラツとしていらっしゃいました。
そのように前向きな方たちが作った花だからこそ、飯舘村のカスミソウを手に取った人たちを幸せにできるのでしょう。そして、多くの人たちに飯舘村のカスミソウを使っていただくことで飯舘村の人たちが幸せになるということなのかもしれません。幸せのサイクルといったところでしょうか。
ぜひ、いいたての花さまのカスミソウから挑戦と明るさに満ちたスピリットを感じていただき、花を通して回り始めた幸せのサイクルをみなで大きくしていきたいと思います♪
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【いいたての花さまの格言!】nenga_mark16_koduchi

★カスミソウの改良品種が今の人気の秘訣!
以前とは違う「現代カスミソウ」を楽しむべし。

★地の利を生かして露地栽培にチャレンジ!
気象条件や土壌成分など、飯舘村ならではのユニークな条件を生かした露地栽培で品質アップ!
常識を打ち破り、ワイヤーのような茎とブロッコリーのような密に付くカスミソウは花落ちもしない絶品至極。

★花は“なりわい”であり“いきがい”なり!
前向きなスピリットを持った生産者さんの花で生活者も幸せになれる。出荷した花が人を幸せにしたことで、出荷者も幸せになる。幸せのサイクルを回していこう!



これらの格言をもってカスミソウを大田花きへのご出荷され、復興を遂げる飯舘村のみなさま。
しかも品質はピカイチ★★★
「いいたての花」さまのカスミソウ、その他の花にもぜひご注目ください!

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写真・文責:ikuko naito@大田花き花の生活研究所