産地ウンチク探検隊 生産者が語る花に対する熱き思いをご紹介します。

2017年03月31日

vol.118 富山環境整備様&スマートフォレスト様:富山県 トルコギキョウ


ウンチク探検隊もついに乗りました!初めての北陸新幹線\(≧▽≦)/!
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しかもなんと偶然にも乗車当日(3月14日)は、ちょうど2周年記念日だったのです。
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地元のメディアが大集結!
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可愛い地元の園児たちの「線路は続くよ~どこまでもぉ~♪」の歌声に迎えられ降り立ったのは・・・
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富山駅!
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富山でこの時季の花といえばチューリップ。今回は富山のチューリップ・・・
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ではありません!そうは問屋が卸しませんよーーー。(うち、問屋ですから^ ^;)

どうやら、雪国富山という立地でトルコギキョウを生産しているところがあるというではありませんか。しかも、大雪が降り積もる真冬もお構いなしで、まさかの周年出荷を実現。どうやって~~~??(._.?)

寒いところでトルコギキョウを作って、はるばる東京の大田花きまで運んで・・・なんていったら、生産コストが販売価格に見合わないのではないかと余計なお世話ながら心配してしまいますが、次世代型農業として全国的に注目され、効率的にトルコギキョウの生産出荷をされている生産地があるというから驚きです。

その生産者さまこそ・・・

「株式会社富山環境整備」様!!
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全部漢字!
しかも「花」とか「園芸」とかいう文字がどこにも見当たらない!?(; ̄ー ̄)…ン?
何か秘密がありそうです。

いざ!

訪れたのは、富山駅からおよそ17km南西に移動した富山市婦中(ふちゅう)町。 株式会社富山環境整備様という廃棄物処理事業を主軸に、街並みの環境整備やインフラ整備など幅広く事業展開される地元でも大変有名な企業さまです。
ここで何と花を作っているというのだから驚きです。エッ、ホント(゚ー゚ヾ)^?

こちらは富山環境整備アグリ事業部の部長室田治彦(むろた・はるひこ)さん。
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富山環境整備の農業部門を担う事業部長さんです。

富山環境整備さまのような企業が農業生産されるというのは、珍しいケースのように思いますが、どのような経緯があったのでしょうか。

「当社は農林水産省が推進する“次世代施設園芸導入加速化支援事業※”が実施された拠点の一つなんだ。

北は北海道から南は宮崎県まで、全国で10拠点に次世代施設園芸のモデルが導入されたけど、その中でも花の生産は当社のみ。しかも当社のような廃棄物焼却の排熱を使った農業生産モデルというもの全国で唯一なんだよ。」

※「次世代施設園芸導入加速化支援事業」 農業モデルを実践する事業として国が支援。強い農業のモデル創出のため、それぞれの拠点で得たノウハウを全国に普及させていくこと、また地域の雇用創出を目的として、次世代型大型園芸施設の整備、構築を行っている。

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廃棄物焼却の熱を使った農業生産モデルって・・(゚ー゚*?)??

「当社は廃棄物処理をする際、リサイクルするものとできないものとに分ける。
リサイクル可能なものはもちろんリサイクルするけど、できないものは“サーマルリサイクル”(焼却)する。その際の排熱を電力エネルギーに変換し、園芸施設の電源として利用するんだよ」

エ~~~、スゴイΣ(゚д゚;)
確か東京でも渋谷や江東区にも廃棄物処理の排熱を使った熱帯植物園がありますが電力を変換し花きの営利生産に使うケースは初。廃棄物由来のエネルギーで雪国から花の周年出荷が可能になってしまうのですね。

「そう。施設園芸では生産コストの中で光熱費が占める割合はかなり高い。花を咲かせるためには燃料を買ってきて暖房を点ける。通常の農家さんではこの費用の負担がとても大きいんだ。
だから、当社では排熱を電力に変換することで十分なエネルギーを確保できる。省エネ園芸生産をしているんだよ。エネルギーの確保という点においては優位性がある。当社はそのエネルギーをいかに効率良く利用するかということがポイントなんだ」

はい、みなさん、ここで基本的な知識について。
世界的にオイルが高くなったり、あるいは円安がそれに重なったりすると、通常生産者さんたちは燃料代だけに1か月何十万円と費やすことになります。施設栽培の生産者さんにとって、この燃料代がかさむことこそ頭痛のタネ。(そして、頭痛のタネからはなかなか花は咲かない(´ε`;)ゝ)

燃料代が高いときは、生産者のみなさまが“諭吉に羽が生えて飛んでいくようだ”と表現されるのをよく聞きます。
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燃料代が高い一方で、物日(花のイベント需要、例えば年末年始、お彼岸やフラワーバレンタインなど)がある場合、なんとか燃料を焚かないと花は咲いてくれません。売れるときに出荷できないと売りはぐれてしまうけど、燃料は高い・・・厳冬期にはこのような生産者さんのジレンマが起こることもあるのです。

一方で、富山環境整備さまの生産は、熱源の効率的な再利用によって寒い冬も暑い夏も花にとって最も適切な環境を整えることができるのです。

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「廃棄物由来のエネルギーから電力を供給するんだよ。
これらのエネルギーをヒートポンプ(ざっくりいうと生産施設用のエアコンのようなもの)などに使う。
冬は暖かく、夏は涼しく環境を整えることができる。だから当社は品質も周年安定しているんだよ。」

すばらしい―――\(◎o◎)/!

しかし、排熱利用を目的としたものであったら、他にも選択肢はあったでしょうに、なぜ農業生産を選ばれたのでしょうか。

「中山間地であるこのような場所では、富山のみならず、全国どこでも働く場がないということが問題であったこと。だから雇用を促進できる農業生産を選んだというのがひとつの理由だよ」


◆ここで富山環境整備アグリ事業様の基本情報!!◆
設立:2015年6月
設立の目的:高品質な農作物の安定供給、県内の農業振興、雇用創出
栽培面積:花き 1.2ha+青果2.8ha 
富山環境整備様全体の敷地面積は、なんと東京ドーム16個分相当(なんとも広大!)∑o(*’o’*)o ウオオォォォォ!!
主な生産品目:トルコギキョウ、少しラナンキュラス、そのほかトマト、イチゴなど
トルコギキョウの品種数: 40品種程度(早生~中生品種中心)
花き施設は全10棟、うち1棟は試作用、1棟はラナンキュラス、残る8棟でトルコギキョウを栽培
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従業員様数:すべての雇用体系を合わせおよそ70名、うち花き事業は正規雇用8名、パートタイム12名
販売者:株式会社スマートフォレスト様 販売はグループ会社のスマートフォレストが担う。富山環境整備アグリ事業部は生産まで。つまり大田花きからは「スマートフォレスト」様のお名前で販売されます。
特殊な農業生産方法:廃棄物焼却施設で作られた電力を使用する☆☆☆

そしてこの施設です。ダダーン!!w(゚o゚*)w IMG_5872

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この天井が高く広々としたハウスをご覧ください。

天井、高!

ハウスに入ってすぐに思わず下より上を見てしまったのは初めてです!花より天井を見上げてしまいます。ʅ(´◔౪◔)ʃ
これほど高い天井も国内の施設では珍しいですね。8メートル近くあるでしょうか。
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「それだけ空気の体積を確保できることになるから、気温の変化に対するキャパシティが大きいということなんだ。
小さいハウスだと、すぐに温まってしまったり、すぐに湿度が高くなってしまったりするでしょ。ハウスの体積が大きい分、外気温が急に急に上がったとしても、ハウス内もそれにつられることなく、環境を保つことができるんだ」

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通常のハウスより全体的に30%ほど大きなこのハウスは空気の緩衝力があり、環境が安定するのです。また、冬場1日で50cmくらい雪が積もるのは日常茶飯事の富山では、単棟ハウスが基本です。傾斜がきいたトンガリお屋根のこの形なら雪は積もらず、滑り落ちてくれます。
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ずっと上を見上げていて、そろそろ首も痛くなったことですしトルコギキョウに視線を落とすことにいたしましょう。
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このトルコギキョウの葉をご覧ください。 IMG_5869 
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軸はしっかりと太く、葉の間隔は均等に詰まっていてキレイに揃い、まるで幾何学模様のようにすべて同じように生育しているではありませんか。
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そしてかなり肉厚!多肉植物かと思うくらい・・・といったら大袈裟かもしれませんが、観賞価値はこの葉にあるのではないかというほどしっかりしています。
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なんだか細部に室田さんのお仕事の緻密さを見て取ることができます。
これほどキレイにトルコギキョウの葉が揃っているなんて、土にも何か秘密があるのでしょうか。
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土はどうされたのですか?~創設当初の裏話~
もともとこの場所には地下水がないので給水タンクで運んきたり、大きな重機を入れたりして農業施設の基盤は会社が作る中で、室田さんもディレクター役のお一人として主導されました。例えば圃場の土壌について。

「土は、2015年6月の竣工をめざし、2014年に設立準備をしていたとき、栽培土壌の土を近隣の水田からかき集めたんだ」

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(↑灌水チューブとマルチングシートの間に見える土壌。)

か、かき集めたって、つまり??

「この周辺の水田一つ一つに足を運んで、その土壌が花生産に適しているか判断をしていったんだ。
同じ地域にあったとしても水田の土壌はそれぞれに違うからね。使えるかどうかを見極めて、OKを出した水田の作土(さくど)をバックホーという重機(ショベルカーのようなイメージ)で“かいて”運び込んだんだよ。
作土っていうのはおよそ表土15cm程度。だから、水田の表面の土を“かいて”集めたんだ。」
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ババババ、バックホーで表土15cmを・・・?

なんと驚きの客土(きゃくど:他所から土を持ってくること)!
室田さんが選定した水田の表土15cm程度をバックホーでそおぉぉぉぉーーーーと“かいて”持ってきた。まさに「かき集めた」という表現の通りに持っていらしたのですね。

花きの栽培面積1.2haに深さ30cm分を運び込むので、その量たるやなんと10トンダンプカー700台分にもなるのです。想像を絶する・・・..・ヾ(。 ̄□ ̄)ツ!!
創設当初のご苦労が偲ばれますね。

室田さんは、どのように農業生産のノウハウを身に付けられたのでしょうか。
「私は富山環境整備に入る前は独立してトルコギキョウの生産をしていたんだよ。」

なーるほど、これで得心が付きました。
おひとりで生産から出荷まで全てやっていらしたからこそ、アグリ事業部を任されていらっしゃるわけですね。

「ここなら資本力がある分、ひとりではできなかったことができる。」

おひとりで生産されていたときと現在の生産との大きな違いはなんでしょうか。

「ハウスを離れられるようになったってことが大きいよ。
良いトルコギキョウを作るのはいかに生育の最適環境に近づけるかということがポイント。

今はすべて自動化して、機械がその環境を作り出すようになっているから、ハウスを離れても安心。
独立していたときは結局頼るものは自分の“肌”だからね。肌で環境を感じる。つまり、ハウスを離れられないということ。
ちょっと太陽が出たり、曇ったりするだけでハウス内の環境は大きく変わってしまう。油断してハウスを離れた瞬間に環境が変わって、花の品質に大きなダメージが出てしまうなんてこともあるからね。

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人のストレスが減ったばかりでなく、花へのストレスも軽減できるようになったんだ。
毎年振り回される極端な天候変化による品質の大きなブレはほとんどなくなったよ。」

人も花もストレスが少なくなったなんて、さすが国が推進するモデルだけありますね!

「最も大きく変わったのは湿度管理をしやすくなったということ」

湿度管理??トルコギキョウの生産にも重要なのですか?

「湿度が高いと灰カビ(ボトリチス)が出て花シミになってしまう。
季節を問わず、湿度管理がトルコギキョウの生産の中でもっとも重要であり、大変な業務の一つと言える。

開花して、あともうちょっとで出荷!という瞬間が最も重要で、この期間に湿度管理を誤ると、ダメージが大きいわけだよね。
この大切な期間もヒートポンプでコントロールすれば、もう花シミはないに等しくなるんだ。」

なるほど、気象条件の年間平均と東京と比べてみると、富山は若干湿度が高いことがわかります。
<比較表>データ元:気象庁
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さらに花の生長が活発である分、葉が呼吸しているために、ハウス内の湿度はすぐに上がってしまいます。

「放っておけばあっという間に湿度は95%以上になってしまう。ハウス内が結露しちゃうくらいだよ。」

植物が元気に育っている分、葉からの蒸散も大きく、湿度が上がりやすい。だからこそ湿度管理を徹底されるわけですね。

「今の施設で湿度管理を徹底できるようになってから、もう花シミなんていう悩みとはおさらばだよ。」

花シミバイバイ~~~ヽ(゚▽゚*)

自動化による湿度管理で、富山環境整備様のトルコギキョウは花シミ知らずなのです!

となると、温度管理は?
「温度管理も重要だよ。とりわけ夏場の地温
夏場はこの富山は北陸独特のフェーン現象で稀に37度以上の日があるし、35度くらいなら夏場日常的に頻発する。」

そんなに!?
「気温の上昇に伴い地温が高くなると、“チップバーン(tip burn)”が起こってしまう」

チチチ、チップバーンて?(‥ )ン?

「生長点や葉先が焼けてしまう現象が起こり、最終的には枯れてしまう現象だよ。
土壌の栄養素のうち窒素肥料が多過ぎたりすると起こりやすくなるんだけど、地温が高くなると根が窒素肥料を吸い過ぎてしまうんだ。 この対策としてヒートポンプがあれば、夏場でもハウス内が冷えて、必然的に地温をコントロールできる。チップバーンを防ぐことができるんだ。」

こちらが地温計。
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取材の時は18℃くらい。残雪のある富山ですが圃場内の地温18℃は春の地温で理想的。
「それもこの次世代型の農業モデルがあるからこそ。富山で一人で生産していたら、トルコギキョウの周年出荷は決してできることではない。」

廃棄物処理の排熱を使用したエネルギー利用で、冬は暖かく、夏は涼しく、湿度管理も徹底して、周年品質の高いトルコギキョウの出荷が実現されるわけですね。

◆次世代型 最新花き栽培施設  その1:LEDライト

あれれ~、室田さん、この照明はなんでしょうか?
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ふとウン探の目に留まった数々の照明器具・・・LEDライトのように見えます。
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「オレンジ色に見えるこのLEDライトは、630ナノメーターをピークとする波長で、植物が光合成を促進するのに最も効率が良い光なんだよ。
冬場、曇天が続くと北陸は昼でも真っ暗になるんだ。太陽が出ないと光合成ができないから、その代わりにLEDを使うんだよ。太平洋側の日照量ならLEDも必要ないのかもしれないけどね・・・」

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なるほど、日照量が比較的少ない富山(上記「比較表」参照)ならではの電照なのですね。
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昨年の9-10月頃は日照量が少なくて、太平洋側の花の生産者さんもご苦労された方が多かったし、野菜も随分小売価格が高騰しました。
「そのような悩みはこのLEDがあれば、太陽光には敵わないといえども、日照不足はクリアできるよ。」

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その2:電照トルコギキョウ

室田さん、LEDのほかにもまた電球があるようですが、これは何のためのものですか。
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「これはFR光といって、いわゆる一般的な農家さんの白熱電球の役割をするものだよ。」

もしかしてトルコギキョウも電照栽培ってことですか?
「そうだよ。早朝電照しているんだ。」
なぜ??(・_・;?

「日の出前に3時間ほど電照することで生殖生長(開花に向けた生長)が促進できるんだ。」
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トルコギキョウは長日植物(日が長くなると花芽分化する)。
秋から冬にかけて日が短くなるときは、電照して日を長く感じさせないと、環境を整えてもなかなか花は咲かないんだ。」

なるほどー!!まさに電照トルコギキョウ!
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これが周年トルコギキョウを出荷できる秘密のひとつだったのですネ。

「この照明もLEDなんだけどね!」Σ【*゚д゚*】

施設の中にはそのほか自動化された装備がいっぱい!
「この1棟の中にヒートポンプだけでも10台、
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LED照明、
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ファン、二酸化炭素発生装置↓、
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自動換気装置、灌水の自動制御装置などがあり、
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それらすべてに電力がかかる。排熱利用のビジネスモデルでなければ、なかなか採算の合うことではない。特に北陸のこの地ではね。
個人で花生産をしていたときはもちろんこのような施設もできないし、周年栽培できるものではない。それを可能にしたのが、この次世代型施設園芸というわけなんだ」

寒くて日照量の少ない北陸であるにもかかわらず、こんなに立派なトルコギキョウができるのです。
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◆仕立てと芽整理

いやいや、読者のみなさま、ここでくれぐれも誤解なきよう、念のためですがお願いしたいことがございます。

施設内の環境が自動化したからといって、放っておいては良いトルコギキョウはできません。ウン探読者のみなさまはもちろん、そんな風に思っていらっしゃらないとは思いますが、一応説明させてくださいませ。

他の生産者さまと同様、美しいトルコギキョウに仕立てるために、富山環境整備様でもかなりの手間をかけます。その一つが芽整理(めせいり)。
生産者様によって「芽かき」と呼ぶ方もいらっしゃいますが、作業内容は同じです。

富山環境整備様のトルコギキョウは1本に3-4輪大きな花が付いていて、どれもバランスの良い立ち姿ですが、どのように仕立てていくのでしょうか。
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「まず頂花(ちょうか:最初に上がる頂点の花)を摘心する」
こちらがその摘心の跡。
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「すると、周りから脇芽(わきめ)が出てくるので、スプレー状になる。だけどそのままにしておくと、花芽が多すぎてしまうのでおよそ高さの揃った大きな3輪を残して、そのほかの孫芽(まごめ)は速やかに取り除いてやるんだよ。

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それでも後から後から続々と脇芽が出てくるので、それもすぐに取り除く。
芽整理を早い段階でやれば、大きくなったツボミたちにエネルギーが集中するので、大輪で元気な花が咲くんだ。
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芽整理をしないとどうなるのでしょうか。
「栄養生長でどんどん上にばかり伸びてしまい、開花が遅くなる上に、1輪が小さくなってしまうよ」

例えばこの1本でいくと・・・?

「トップの3つを開花輪として残すでしょ。このツボミはあってもいいかなと思うので残す。
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そのほかの花芽は落とす。
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開花3輪+ツボミ1輪でバランスの良いトルコギキョウが完成するんだ。」

この芽整理が美しいトルコギキョウを仕立てる一つのポイントなのですね。トルコギキョウってもしかしてすごく手間のかかる植物??

「この手間をかけるかどうかで完成クオリティは全然違ってくる。
この芽整理を自分で判断してできるようになるには、多少時間をかけて修業がいるね・・・!」

環境制御は機械の自動運転としても、花芽の整理まではやってくれません。
どこまでも自動化できたとしても、手間をかけた分良い花ができるのは、どの生産現場でも同じことなのですね。

↓芽整理を速やかに行うと、植物体のエネルギーが集中して1輪が大きくなる。
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自動環境制御型といえども、花と向き合う気持ちが重要だということですね。

室田さんの部下の方たちはもう慣れたもので、かなりすばやく判断してパッパと取り除いてしまうそうです。

「私より速いくらいだよ~」

と謙虚におっしゃる室田さんなのでした。


◆選花と予冷

高品質のトルコギキョウを栽培したら、もちろん選別と予冷にも余念がありません。
収穫した花をこちらの調整室に持ち込み、選別、束ねて、出荷に備えます。
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ここでは選別担当のみなさんが、1本ずつ品質をチェックし、規格を合わせ10本束にまとめていきます。
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“10本束”でこのボリュームです!
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室田さんが持っても、こんなに大きな花束に!相当大きい!!

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↑これで10本です。大きなトルコギキョウが30輪とツボミが8-10輪付いているくらい。


それをこのような倒れても水が漏れないバケツが組み込まれた縦箱に入れ、
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冷蔵庫で予冷して出荷です。
こちらが冷蔵庫。
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除湿器も完備!
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下のタンクに空気中の水がすぐ溜まる。植物は呼吸しているので、空気中は湿度を帯びるのです。
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と説明してくださる室田さん。
こちらがそのタンク。
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どこまでもトルコギキョウの大敵である湿度に留意します。

販売はグループ会社のスマートフォレスト様が行います。
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従って、大田花きにはスマートフォレスト様のお名前で出荷されますので要チェックですよ!


◆ラナンキュラスもちょっと拝見

こちらがラナンキュラスの圃場。営利圃場9棟のうちの1棟で栽培しています。
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う~ん、入った瞬間にわかる、トルコギキョウの圃場との気温の差。
こちらはなんだかサムイ((寒´∀`;))

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「じっくり育てるためにできるだけ気温は低く設定しているんだよ。
その方が茎が太くしっかり育つんだ」
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冬でも暖房はほとんどかけずゆっくりじっくり育てることがコツなのだそうです。
ラナンキュラスも春先には期間限定でスマートフォレスト様から出荷されますので、是非ご利用ください。

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◆ちょっと室田さんのコト

理解の悪いウン探にわかりやすく説明してくださり、真摯にご対応くださったお優しい室田さん。
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ひとつの企業のアグリ事業部をゼロから作り上げて、軌道に乗せてあっという間に計画通りに雪国富山から周年出荷を実現してしまう、敏腕ディレクターでありプロデューサーであり、アグリ事業部のマネージャーさん。お一人で何役もこなしてしまいます。話を伺っているだけでも只者ではない気配アリ。

富山環境整備アグリ事業部の設立は2015年・・・設立前は独立して農業生産をされていたということですが、何を生産されていらしたのですかσ(゚・゚*)

「昔からモノづくりが好きでね、トルコギキョウとラナンキュラスを作っていたんだ」
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富山といえば水稲が盛んですし、花ならなんといってもチューリップが有名なのに、あえてトルコギキョウを選ばれたのはなぜですか?

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「20年前に独立する前は農協で営農指導員をやっていたんだ。花マーケット全体を見ているうちに、トルコギキョウがこれから可能性があるなと感じたんだ。今ほど競合産地もなかったし、成長性が高い品目だなって思ってね。」

Oh~!室田さんが20年前に着目したトルコギキョウは、その時は今ほど生産も消費も盛んではありませんでしたが、今となっては花マーケットのメジャープレイヤーになりました。
作るならトルコギキョウ!と的確に目を付けて自ら生産をされるなんて、室田さんは先見の明があるのですね。

「花の美しさばかりでなく、必要な暖房費、種苗費、開花回転率、物日に合わせた収穫率、労働性などを総合的に鑑みて判断するんだよ。」
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まさに、鳥の目で花きマーケットを俯瞰し、虫の目で生産の細部にこだわり、見極め、魚の目で時代の流れや業務フローを見る。成功するための3つの目を持ち合わせた室田さんなのでした!

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室田さんが目指すビジネスの将来像は?
・地域振興
「このモデルが当社ばかりで終わるのではなく、富山の地域振興に繋がって欲しいと願う。このモデルが大きくなれば地元の雇用にも繋がるし、地域でこのモデルを使って生産してくれる人が増えてくれれば嬉しい。」

・人材育成
「いくら機械化したといっても、相手は生き物。
マニュアル通りに対応するばかりではなく、それぞれのケースに合わせて自分で考えて判断してできる柔軟な人材育成を進めているところです。」

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【富山環境整備様の格言】

・高品質のトルコギキョウの栽培は、自動化で施設内の環境を整え、生育最適環境を創出せよ!

・自動化で人件費削減、人にも花にもストレス減な農業モデルを創出せよ

・徹底した湿度管理で花シミバイバイ~~~ヽ(゚▽゚*)

・ハウスを建てただけではトルコギキョウの周年出荷は叶いません!
 電照トルコギキョウで秋冬の出荷を実現せよ!

・ハウスを建てただけではトルコギキョウの美しい立ち姿は叶いません!
 芽整理を素早く的確に行い、エネルギーを蓄えた大輪の花を作り上げよ。
 自動制御システムを使っているといえども、かなり人の手がかかっているのです~。

・10トンダンプ700台分の客土から始めた室田さんのパイオニア精神に続け!
 農業生産は独立でも雇用でも大変なもの。成功に導いた室田さんのパイオニア精神に敬礼!



これらの格言をもって北陸でトルコギキョウを作って、毎営業日に大田花きへの出荷を実現された富山環境整備様。
しかも周年品質が変わらずに出荷できるのは、現時点では全国でも富山環境整備様だけ。

廃棄物処理の排熱を使ったエネルギー源の活用 × 農地面積の確保 × 室田さんの栽培ノウハウと植物と向き合う心

これらが揃って初めて叶った次世代型施設園芸モデルなのです。
出荷は株式会社スマートフォレストさまのお名前です!

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写真・文責:ikuko naito@大田花き花の生活研究所