産地ウンチク探検隊 生産者が語る花に対する熱き思いをご紹介します。

2019年11月21日

vol.129 JAえひめ中央温泉地域花木部会様:愛媛県 ユーカリ・枝物


産地ウンチク探検隊発足15年の歴史の中で、今回2回目に上陸したのは柑橘の王国愛媛県
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花き生産全体がダウンサイジングな傾向にある中、愛媛のある部会では毎年売上を伸ばしているというではないか!
しかも、その部会はいつぞや大田市場花き部中央通路の展示の時に、その商品があまりにも美しく、魅了されたウンチク探検隊は思わず足を止め、心をときめかせたことがあるあの生産地だったのです!

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(↑写真は今年の展示です)

その生産地こそJAえひめ中央温泉地域花木部会さま。ということで11月晴天の某日、愛媛県を訪れました。

JAえひめ中央温泉地域花木部会さまといえば、松山市や東温(とうおん)市、伊予市、伊予郡砥部(とべ)町などに広がる枝物生産専門の部会です。

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    ◆JAえひめ中央温泉地域花木部会さま基本情報

部会員数:123名
栽培面積:約2,316a
主な生産品目:ユーカリ、スモークツリー、ビバーナム・ティナスを3本柱にして、コットンツリー、メラリューカ、アカシア、フェイジョア、ギンコウバイ、スノーボールなど合計45品目

標高:50メートル未満から200メートルくらいまでに点在

平成元年 「丸温花木部会」(今の部会の前身)発足

平成14年 現在の「温泉地域花木部会」発足
平成25年 部会発足史上初「販売金額1億円」を達成!
気候:典型的な瀬戸内式気候で、年間を通して温暖で降水量が少ないのが特徴

水先案内人はJAえひめ中央の高須賀聖泰(たかすか・まさひろ)さん

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今回は部会長光宗忍(みつむね・しのぶ)さん、副部会長の丹生谷美雄(にゅうのや・はるお)さんの圃場を伺いました。


    ★副部会長丹生谷(にゅうのや)さんに伺うユーカリ生産誕生物語

東温市でグニユーカリを中心に生産されている丹生谷美雄さん。市議会議員さんもお務めでいらっしゃいます。

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もともと消防にお勤めされていた丹生谷さん。
隔日勤務の傍ら、最初は電照ギクやポット苗を栽培していましたが、ある日愛媛県の普及員さんが丹生谷さんを訪問。しかもその方は丹生谷さんの学生時代のボート部の先輩だった方です。
ボート部の先輩は、丹生谷さんに言いました。


「ユーカリがいいぜ!」


という口調ではなかったかもしれませんが、とにかくユーカリを勧められたといいます。なんてったって、超体育会系のボート部の先輩ですから、もうここは有無を言わせません。丹生谷さんの選択肢はほかになく、ユーカリを作り始めました。とはいえ、決していやだったわけではありません。

「この辺りの地域は水はけがあまり良くない。
となると、麦生産には向いていない。だからといって米だけでは採算性が悪い。だから花木をやってみようと思ったんだよ」

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その後、消防の仕事も徐々に忙しくなり、生産品目を花木に集中させていきました。

<ここでウン探の素朴な疑問>
う~ん、でも水はけがイマイチな圃場の条件でユーカリには大丈夫なのですか?

こちらがユーカリの圃場。
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「ユーカリも田を選びます。水はけが良い方がいい。
だけどこの辺りは粘土質だし、とりわけ田んぼで作る場合は、排水が悪くなる。

だから畝を高く立てるんだよ。周辺に水が流れるように堀を作るというノウハウを活用するんだ」

なるほど、水はけが良いように高いところに圃場を確保し、更に畝高にしてそこに株を定植しています。

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株がよく揃っています。

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中には、規格外に大きい株がありますが、それは実生(みしょう ※種から育てること)の20年選手。

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「実生で育てると、株は長持ちするが品質、できばえにばらつきがあり規格が揃わない。バラバラの収穫物のなかから良いものを選んで出荷するから、その分ロスもあるし、選別する作業時間もかかる」

実生は株は長持ちしますが株によって品質の個体差が出てしまいます。現在は組織培養で作った株が9割以上。実生株はすでに全体の5%未満といいます。おかげでシルバーグリーンの小葉が揃って大変美しいのが特長です。

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「JAが挿し木や組織培養によって株を供給してくれるんだ。品質はかなり統一できるし、選別する時間も節約できるようになったよ」

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なるほど、このようにして仕事にかかる時間も軽減していらっしゃるわけですね。農業生産の現場も日進月歩、働き方改革に繋がっているのですね。

土壌を触ってみるとねっとりしているのがわかります。

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あら?こちらのリュウノヒゲは何のためのものですか?このように植えられているのを初めて拝見したように思いますが・・・

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「雑草を抑えるために植えたものだよ。
そのほかにこれを植えることで根が張ると畔が落ちなくなるというメリットもある。
最初はいろいろな雑草が生えていたけど、リュウノヒゲを植えることで雑草が抑制できた。リュウノヒゲは背が高くならないので作業の邪魔にならず、ちょうどいい◎」

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一石何鳥もゲットできるアイデアなんですね。

「そう。
でも実はこちらのセンチピートに注目しているんだ」

こちらがそのセンチピートグラスというイネ科の植物。

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アレロパシー(※)の作用があり雑草抑制対策の芝草として農業生産の現場で使われています。
※アレロパシー:ある植物がほかの植物の生長を抑える物質を出すこと、あるいはその効果のことをいいます。

「これを植えると雑草に勝つから、草取りの手間も省ける。なんてったって、草刈りは通常年に6回行うんだよ。ところがこれを植えれば、年に1-2回で済んでしまう」

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なるほど、このリュウノヒゲやセンチピートで生産者さまの働き方改革に繋がるわけですね。
除草剤もまかなくていいわけですから、これはSDGsにも繋がりますね。

このようなアイデアは丹生谷さんが他県に研修に行って得た見識をご自身で試してみて、良かったら地域の生産者の皆さんに広めているというものです。

「センチピートをこの地域で50ヘクタール近く、畔全般にこれを導入するところなんだよ」


あら?こちらの緑のボックスはナンデスカ?ユーカリ畑の真ん中にある緑のバケツのようなモノ・・・

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「虫の誘引剤が入っているんだよ」

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どんな虫が入っているのですか?

「コガネムシ。コガネムシはカミキリムシなどと同様に葉に穴を開けてしまうんだ」

ユーカリでガッツリ稼げるようにするわけですから、コガネは不要です。退治、退治!

「ここにね、いっぱいコガネムシが入っているんだ」
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振ってみると、虫がごろごろ入っている音がします。

(ヨイショ、ヨイショとボックスを開けようとされる丹生谷さん)

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「あれ、開かんな」

うぁわ~((>ω<o))、いいです、いいです。丹生谷さん、開けなくて結構です!コガネムシうようよの死骸、見ません。

葉を見れば虫食い、穴あきなど一切なく本当にきれいです。

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それもこの誘引ボックスのお陰というものです。


★台刈り

実は、ウン探は勝手ながらコアラがユーカリの木に登るように、ユーカリはもっと何メートルも高くなるイメージがありまして・・・

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梯子をかけて切るのかなと思っていましたら、それほど高くならないのですね。

↓ちょうど丹生谷さんの身長と同じくらいの高さです。
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「これは作業上、低く仕立てているんだよ。台刈り(だいがり)をするんだ」

ダイガリ?(゚ペ)?

「3-4月のうちに、株の枝をほぼ全て刈り込むこと。つまり、春に株をリセットするんだ。
そうすると株から新しいエネルギーを蓄えた枝が出てくる。つまり、とても美しくて元気のある枝が出てくる。枝物は多くの品目でそうしているんじゃないかな。

そのときのコツは、ユーカリの場合、力枝(ちからえだ)を2-3本残しておくとういこと。全てを刈りこまず、光合成を促して栄養を株に取り込める部分を“ちょっとだけ”生かしておくということだよ」

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その台刈りを足元40cmで行うということですね。
放っておけばどんどん樹高が高くなるところ、台刈りをして作業効率が良いように株を作っていらっしゃるのです。


★うーーーん、でもなんで枝物?

枝物の専門部会として生産農家さんが120軒もいらっしゃるJAえひめ中央さま。ご存知のように柑橘の大産地であり、ほかにも米や野菜という選択肢もあるでしょうに、どうして枝物生産がこれほど広まって、年々部会員様を増やしていらっしゃるのでしょうか。

    ◆理由その1◆労働分配ができる!
例えばユーカリは9-3月が出荷期となりますが、生産する側にとって花ものや野菜にはない好条件があります。
花ものは開花に合わせてタイミングを「的確に」計って出荷しないといけない。「今日が採花のベストタイミング!」だとすれば、今日収穫しないといけないし、明日になったらそれはロスになってしまうわけです。

一方、枝物はその商品性質からそこまでタイミングを計る必要はなく、生産者さんが切れるときに切ればいい。兼業の人にはちょうどいい品目なのです。つまり、自分たちの都合に合わせ「できるときにやる」という労働分配ができる。

=労働が集中しない
=年配者にも優しい農業
=SDGsに繋がる農業

    ◆理由その2◆始めやすくやめやすい!

「米や麦を作ろうと思ったら、田植え機やトラクター、コンバインなど1農家当たり1,000万円くらい必要なわけよ。もしかしたら、今の時代だったら1,000万円でもきかないかもしれない。
定年退職者であと10年、15年ほどの農業をやろうという人に、この投資は大きすぎる」
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ユーカリ、枝物全般なら消毒の機械とハサミさえあれば大きな農業器具は不要なのです。
しかも、大面積に作付けするわけではないので、事情によってやめようと思ったらすぐにやめられる。また投資が少ない分、やめようと思ったらすぐに引き返せるのも良い点です。
身軽で気軽!どなたでもスタートできる魅力的な生産品目と言えるのです。

「こうして無理なく耕作放棄地を減らし、魅力的な農業生産をだれかが実現できれば、他の人も追随してくれるかもしれない」


    ◆理由その3◆軽量であること!

「60歳で定年、65歳年金支給までの間の働き口を探している人が多いので、年齢を考えるとあまり重い品目では仕事を続けられない。だから枝物がちょうどいいんだよ」

枝物も重いのは確かですが、柑橘などの果物に比べたら軽いことには間違いありません。定年退職者や高齢者でも身体的な負担が少ないのも枝物のいいところ。

に身で始められる量商品!= “三軽”
3Kというと「キツイ・汚い・危険」のイニシャルレターを意味しますが、えひめ中央さんの3Kは良い3Kなのです!
更には消毒も少ないし、作る人の体にもストレスが少ない。非常にSDGsな品目と言えます。そして優しくて易しい
いや、作るのは大変ですよ。それでも尚、作業は多いし、もちろん楽しては作れません。しかし、上記のような点において、「優しくて易しい」生産品目として注目されているのではないでしょうか。


★「ユーカリとはいい出会いだったと思えるよ」by丹生谷さん

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丹生谷さんご自身が良い品目だと思ったからこそ、周りのみなさんに勧めることができ部会が発足しました。すると、花木の組織(部会)が順調に形成されていって徐々に拡大。量の力で知名度が上がってきた。今は質の力も充実してブランド化に成功。

「例えば耕作放棄地の解消として花き、花木が注目されることあるかもしれないけど、作るだけでは企画がうまくいかないことがある。それは“産地化ができたかどうか”というところで明暗が分かれてくると思う。

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産地化して“量と品質を両立させる”ということがポイント。部会を作って一定量を出荷することで販売先が確保できる。
値段が付けば運賃もペイできる。もっと評価していただくために品質も上げようと努力するでしょ。生産モチベーションも上がる。このようにして産地が繁栄していくものだと思うよ」

ダウンサイジングな花業界にあって、ほとんどの県や地域で全体の出荷量を減らす中、こちらの部会では毎年右肩上がりに出荷量、売り上げともに伸ばしているのです。

【JAえひめ中央花木部会さまのユーカリ出荷グラフ】
※グニ、銀世界、ポポラスなどユーカリ全般。
※大田花きへの出荷に限ります。
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★<ご参考>JAえひめ中央さまグニユーカリと銀世界の月別出荷グラフ
※2018年実績(大田花きご出荷分)
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そしてついに、2018年グニユーカリが松山市の「農林水産物ブランド」として正式に認定されました。無題

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行政のバックアップを得て、今後もさらに生産が盛んになっていくことでしょう。


    ★(チョット脱線)そもそもグニユーカリってどういう意味?

グニユーカリと言われてもなんだか馴染がなくて、何のことかと思ってしまいますよね。 葉が丸くて小さいから、「グユーカリ」の間違いじゃないか?と思いを巡らせたことがある方もいらっしゃるのでは。

グニユーカリはその学名をEucalyptus gunniiといいます。学名を正確に読めば「グニーユーカリ」の方がいいかもしれません。

ユーカリのEucalyptusとは、 ギリシャ語のeu-(強く、良く)+ kalyptós(~で覆った)に由来していて、「強い蓋」を意味します。(学名なのでラテン語です) 恐らくは、ガクと花弁が合着して蓋状となることか、あるいは乾燥地でもよく育ち大地を緑で覆う強い植物である性質に由来して命名されたと推測されます。

gunniiとは 人の名前に由来しているようです。南アフリカ生まれのオーストラリア人植物学者(政治家でもあった)Ronald Campbell Gunn(ロナルド・キャンベル・ガン)氏がこの植物を見つけたか何か(1840年頃)で、彼のGunnという名前に因んでつけられたものと想像されます。-iiは小さいという意味があるでしょうか。(わかりません)

つまりグニーユーカリ(Eucalyptus gunnii)とは「ガンさんが見つけた小葉のユーカリ」くらいの意味かなと思っています。(推測です)

ですから、決してグミユーカリではありません(笑)大丈夫かと存じますが、念のため。


    ★・・・っていうか、「丹生谷(にゅうのや)」さんて珍しいお名前ですね

「丹生谷」さんて、勉強不足もありお読みできませんでした。

「神社仏閣の鳥居などに使われる朱色の塗料あるよね。

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あれは、元々水銀から採れた“丹”(=朱色)て言うらしいんだけど、それらが地中に埋まっていて、それを採掘する人たちの名前だったんじゃないかと聞いたことがあるよ」

へ~、興味深いですね。
実際に丹生鉱山(にうこうざん)といって三重県にあったようです。その鉱脈は大分、愛媛、徳島、和歌山、三重という西日本の太平洋側を帯状に広がっていたようです。

「実際にそのような場所では“丹生(にう)”とか”丹生谷(にゅうだに)“という地名が帯になって散らばっていたりするみたい」

ざっとネットサーフィンで調べてみますと、丹土(朱砂)が採取される土地のこととする説が有力という人もあれば、民俗学者の折口信夫さんは、神の降臨を迎える標山だという説を唱えていたようです。

なるほど、いずれにしても神がかり的なお名前なんですね。
えひめ中央様の「縁起物」ならぬ、「縁起者」といったところでしょうか。
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と思ったら!!!!


丹生谷さんがくるっと後ろを向いた瞬間のお姿。

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こ、このTシャツは?

「これはね、バドミントンのチームで作ったTシャツなんだよ」

農作業用ではなくバドミントンのユニフォームってことですか?

「そうだよ。バドミントンサークルの会長をしていてね、私の名前の美雄(はるお)をミユと呼んでサークル名にしているんだけど、メンバーがサークルのマークとして私の苗字から丹を採ってデザインして作ったんだよ」

なるほど、これだけで丹生谷さんの人望のほどを窺い知ることができます。


    ★光宗(みつむね)部会長の審美眼

こちらは部会長の光宗忍さん
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枝物生産歴20年の大ベテラン。当部会の副部会長を9年、部会長を10年お務めです。
枝物はグニユーカリ、ヒムロスギ、ピットスポラム、スノーボール、スモークツリー、キソケイ、サンザシ、ビバーナム・ティナス、彼岸桜、ヤマゴボウなどを生産されています。

こちらの圃場は竹藪に覆われていた山をユンボで開拓、整備して、こちらの枝物を定植しました。
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こちらは山の所有者で、光宗さんと一緒に花木を生産されている部会メンバーの渡部(わたなべ)さん。
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山を開いて枝物を植えたのが約5年前。ということはつまり、その頃から“枝物の需要はこれから伸びる”と思われたわけですよね、光宗さん。

「そうだよ。そしてまだまだ伸びるよ」

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この将来を見通す力、恐るべし。
えひめ中央様からは数々の枝物ヒット商品が輩出されていますが、どうやってヒットの元の情報を得るのですか?

「そら、もうこんな感じ↓↓↓
1.取引市場に行く→色々な人と話をする、仲卸通りを見る
2.販促活動を行う→反響を見る
3.小売店を回る→お話を聞く


ていうのを毎年やっているので、“枝物売れる!”ということには確信があるんだよ。
新品目・品種も、だいたい卸売市場で見つける。

グニユーカリもあと〇〇%くらい足りていないなとわかる。もう少し生産したいと思っているよ」

情報収集力とこの研ぎ澄まされた感覚がすばらしいですね。



「ところでウン探さん、あそこに植わっているのヒムロスギだけど、ヒムロスギって漢字で書ける?」

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と、唐突に?
うぐぐぅ~・・・(-“-;A

でも書けないと取材もさせていただけないかもしれないので、一応思った漢字表記を言ってみる。

えとー、「氷室杉」だと思うのですが。

「うんにゃ、違う」

えッ!(゜д゜;)ナント?ヤバ。

姫榁杉(あるいは檜榁杉)って書くんだよ」

「榁」とはネズミサシ(ヒノキ科の針葉樹)のことで、ネズミサシに似た小さい(=姫)葉を持つ過ぎなので姫榁杉と書くようです。う~ん、なるほど。ひとつお利口さんになったような“気がする!

「ヒムロスギの出荷期は11-12月上旬」

ん?(・_・?)
スギだから常緑ではないんですか?出荷期はそんなに限られるのでしょうか。

「葉は落ちないけど、夏場は赤くなるんだよ。今だからこそ、このグリーンが出るんだ」
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こちらは光宗さんのグニユーカリ。粉を吹いて銀葉が大変キレイです。
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添え木(竹)はユーカリの株がまだ若い時に台風、強風などに煽られ倒れないように補強として挿してあります。
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冒頭でご紹介したとおり、この辺りは瀬戸内式気候で、日照時間が多く降水量が少ないのが特徴です。これは柑橘ばかりでなくJAえひめ中央さまが生産しているような花木にもちょうど良い気候。


また、こちらの生産圃場は花崗岩土壌で水はけが良く、また適度に粘土質でもあります。


「砂の中に粘土質が少し混じっているイメージ。
見て。
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さらっとしているでしょう。

枝物だけでなく、根菜類でも何でも比較的うまくできる土壌なんだよ」

上からも下からも栽培条件ばっちりなのです。地の利を生かせるというのは農業にとって最も大きなメリットの一つですね。

実は光宗さん、花木以外にキウイフルーツや柑橘を生産されています。
キウイフルーツといえば、輸入品ならニュージーランド。そういえば、ニュージーランドの気候も日照時間が長く降水量が少ない。愛媛の気候と似ているのかもしれません。

今、キウイフルーツも人気で、結構売れるのではないでしょうか。
「よく売れるよ。愛媛県のキウイフルーツは国内生産量日本一だよ」

では、キウイ・柑橘・花木の中で生産していてもっとも面白いのはナンデスカ?やっぱりキウイフルーツ?!

「花木♪」
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即答の光宗さん。
なんだか意外ですが、どうしてですか?
「キウイフルーツもいいけど、花木は作業効率がいいし、軽いし、年間を通して色々なものを出荷できる。フルーツは実りのシーズンは年に1回しかない。花木であれば、出荷時期が異なるものをリレーしながら年間を通して生産することができる。
安定して枝物を出荷することで、回転資金としてキウイフルーツや柑橘など季節ものを生産するベースになるんだよ」

なるほど。“安定の花木生産”というわけですね。

「それに柑橘なら1キャリー20kg積んで運ばないといけないところ、枝物だったらせいぜい5-6kg。
定年退職した65歳以上の人の人でも運べるのが枝物のいいところ。うちの部会も8割は70歳以上だからね」

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光宗さんはこのようなところが枝物生産の良いところとみていらっしゃいます。

ところで光宗さん、あちこちに見られるこのような穴はナンデスカ?
こんな感じであちこちに穴が開いているのです。
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「イ・ノ・シ・シ!」

出ますか!

「出る、出る!これ爪の跡があるでしょ。これ全部イノシシよ」
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しかも比較的新しい!

「このサイズなら70-80kgサイズ
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このサイズなら40-50kgサイズのイノシシやね。
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こうやって地中のミミズを採るために斜面を崩していくんだよ」

うんわー、迷惑なやっちゃ!(ノω・`)!!

足跡のサイズを見ただけでイノシシのサイズまで分かってしまう光宗さん。長年にわたり農業生産の最前線を走ってきたプロの知見を垣間見たような気がいたしました。


この先見の明を持った光宗部会長・丹生谷副部会長のお二人にお会いしただけですが、お二人の人望と統率力、部会のみなさまの強力な団結力を以って、このダウンサイジングな花き業界にありながら、年間1千万ずつ売り上げを伸ばしているワケが分かったように思います。愛媛県の中でも就農者数が減少傾向な中、JAえひめ中央温泉花木部会様においては部会員数も4-5年で合計20人ほどプラスになっているように、えひめ中央さまが魅力的な農業生産を実現していることを数字が示しています。



    ★そのほかの品目の圃場をチラリ拝見
こちらはメラリューカやユーカリ(グニ、銀世界)などを生産している組合員様の圃場です。
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なんだか意外にもこのような平地にある住宅街の合間合間に生産圃場があるのですね。

「ここが元々は生産圃場で、後から家が建ったんだよ。だからこのような光景になっている。私が小さい頃はこの辺りは畑だった」

とJAの高須賀さん。
こちらをご覧ください。
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メラリューカのレッドジェム(赤・緑)とレボリューションゴールド(黄色)です。

・・・あれ?山口百恵さんのあの歌、何でしたっけ(・・∂) アレ?

あ「イミテーションゴールド」でした(^ー^; )古い?
こちらはイミテーション(模倣)ではありません。もちろんホンモノ。ホンモノどころか「レボリューション」です。「革命」です。「大革命」。
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実際、初めてJAえひめ中央さんのレボリューションゴールドを拝見したときには、その素晴らしさに衝撃を受け、革命が到来したと思いましたよ。太陽の光に当たってキラキラと輝く姿は尚キレイです。
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「もう少し気温が下がるようになると、穂先の赤い部分が増えてくるんですよ。そしたら出荷どきです」
と高須賀さん。

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ユーカリの銀世界はこのように生産されています。枝が暴れる(広がる)ので、グニユーカリよりは生産スペースが必要です。
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円盤状に規則的に連なった葉が、なんとまあ美しいこと!
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こちらは住宅地とは逆に山で作っている武智(たけち)さんという部会員さまの圃場。

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心臓破りの坂を自動車で上り(自転車だったら電動でも無理なんじゃないかと思わせるくらいの急斜面です!)、その先にあった圃場はこちら。一気に標高が上がりました。
圃場を背にして街を見渡すとこんな景色が広がります。
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「もともとはミカンを栽培していた畑です。
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標高が上がった分涼しいので、平地の圃場と時期をずらして出荷することができます」

ギンコウバイや、
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えひめ中央様の名品アカシア(パープレア)、
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ユーカリのポポラスなども生産しています。
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こちらは盛りッ盛りなビバーナム・ティナスの森。
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枝を切ってから葉を取り除いて出荷します。

こちらは何だと思われますか?
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パンパスです。
今期は出荷終了なので、穂は既にありません。

しかーし!皆様にパンパスの収穫のことで一つお伝えしたいことがあります!ここは素通りできません。
パンパス、簡単に出荷できるなーんて思っていらっしゃいませんか?
実はパンパスを切り出すのは「宇宙に行くのですか?」というくらい重装備をしてこのブッシュに入っていくという、かなり難儀な作業なのです。
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というのも、この葉は刃物と同じ。小さい鋸の歯のように、葉の側面がギザギザしていて、ちょっと皮膚に当たってスーとこすれるだけで柔らかいお肌(アタシのような堅いお肌も)すぐ切れて流血の惨事になってしまうのです!
ウギャーーーカタカタカタ(((;゚;Д;゚;)))カタカタカタ!

まさに刃物葉物

もちろん、こちらの葉は出荷しないのですが、刃物葉物の中に入って行かないとパンパスの穂を切り出せません。そのためには手も足も顔も頭も宇宙服のようなものを着て完全防備!まだ切り出すときは暑いシーズンですが、汗をかいてあせもができるより、皮膚が切れない方が大事です。

ってことで、パンパスを出荷するのも大変な作業が伴うのです。ぜひそのことだけでもご理解いただきたいと思います。


    ★最後にちょっとおまけ
こちらはコットンツリーを干しているところ。
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JAの高須賀さんのご実家の圃場です。コットンツリーってこんなふうにして干すのですね。初めて拝見しました!

「コットンの実が開く前に収穫して、乾燥させて実を開く。枝の下の方から徐々に開いていくんだけど、枝先まで開くには時間がかかるから、生産圃場に置いておくと、先に開いたコットンにゴミが付いて汚れてしまうんだ。またそのゴミを採るのも大変だし、取りきれない」

なるほど、綿が開く前にハウスに移動してハウスの中で開くから、えひめ中央さまのコットンツリーはきれいなのですね。


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このようにして手間をかけて大田市場にやってきたJAえひめ中央様の枝物。毎年、今の時季に大田花きにおいてセリ前に生産者さま自らマイクを持ってPRを行います。同時に展示・販売フェアも行っています。
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    ◆JAえひめ中央 温泉地域花木部会さまの格言!◆

・グニユーカリの増殖は、挿し木と組織培養で品質統一!
  ブランド化に成功したグニユーカリは松山市の農林水産ブランドに認定!

・JAえひめ中央温泉部会花木部会さまの花木生産は優しく易しい。
 時代に合ったサステイナブルでSDGsに繋がる農業生産そのものでした。
 生産者さまの働き方改革を実現しながら消費者に喜ばれる商品を、出荷し続けるのでした!

・出荷前は全量検品!
 専門員の厳しい眼を以ってチェックせよ。生産者さまは緊張するけど!
(記事が長すぎて割愛しましたが、JAえひめ中央様の枝物は専門検査員による全量検品です。検品中、生産者さんは帰宅せずその場で待機!)

・新しい作付け品目は卸売市場で見つけよ!
 定期的に取引市場に足を運び、目を凝らして将来性のある品目を探し当ててください!

・就農人口が高齢化した今、みんなで質量も作業も軽量化した三軽の枝物に取り組むべし!
 初期投資も少ないのが◎
 働き方改革やSDGsにも繋がるとてもサステイナブルな農業こそ愛媛の枝物生産なのです。

みんな愛媛に枝物を作りにおいで~!

JAえひめ中央さまの花卉・花木HPはこちら



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写真・文責:ないとういくこ@大田花き花の生活研究所