社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年01月23日

去年とは価値観の違った時代の始まり


 先週の20日、日本では通常国会が開催され、アメリカではトランプ大統領が就任した。日本農業新聞でも報じられているとおり、農業改革関連の法案が8本提出されたが、そのうち、卸売市場を対象にした箇所が見送られた。これは「差別的取扱いの禁止」、「受託拒否禁止」について、まだ議論が十分に煮詰まっていないからだと思われる。

 私が代表幹事をしている「市場流通ビジョンを考える会」では、原則として、「受託拒否の禁止」を一部修正するよう訴えている。「受託拒否の禁止」は確かに重要な規制だが、卸売市場は捨て場ではないので、余ったものだけを出荷されては相場が崩れ、秩序を乱すことになる。例えば、昨年のXmasを過ぎてから、見込み違いで売れなくなった中国産の菊やカーネーションの出荷があった。同業者に聞くと、予約相対を組んでいてもう間に合っているのに突然出荷があった為、相場を崩したという。具体的にどのような条件のもとにおいて受託拒否が出来るかは検討しなければならないが、一部修正し、受託拒否を出来るようにしてもらわないと、継続して出荷してくれている国内外の生産者にしっかりとお返しすることが出来ない。まだいくつかあるが、一年で卸売市場の抜本的改革のメドを立てたいと考えている。

 トランプ大統領が就任したことは、市場原理主義による、経済のグローバル化の行きすぎとインターネットによって、アメリカの社会が壊れたこと、また、同様に各国の社会が壊れたこと、これによる大きな揺り戻しの過程ではないかと私は判断している。少し分かりやすく言うと、組織には目的をもった「ゲゼルシャフト」と、構成員の幸せを願う「ゲマインシャフト」がある。株式会社は利益の追求が目的であり、安い人件費の国で物をつくり、自国の人に販売する。自国ではサービス業が主な仕事となるが、サービス業は能力により貧富の差を生む。さらに、インターネットやAI等、高度な知識集約、情報産業型に社会が変化し、世界規模で貧富の格差が著しくなる。構成員の幸せはどこへ行ったのか。地球規模でそれは考えられるのか。国防がそうである通り、まず、国家単位で行き過ぎた資本原理主義といえるものを是正することだ。また、組織であれば、ゲゼルシャフト万能主義から、構成員の幸せを一義に考えるゲマインシャフト化をすることだ。これが、ブリクジットが起きたこと、また、トランプ大統領が就任したこと、あるいは、プーチン大統領やトルコのエルドワン大統領が、自国民から高い支持率を得ていることに繋がっているのではないか。これが今の歴史的な潮流なのである。

 私が日本人として、まだ幸せボケして危機感が足りないのか、これらの新しい動きは少し行きすぎではないかと思ってしまう。構成員の幸せを願うばかりに、エゴのぶつかり合い、行政地区、民族地区のぶつかり合いが起きていくのではないかと危惧する。しかし、時代はその価値感の変化の中で判断せよといっているように思う。

 このような価値観の変化の中で、社会のインフラである卸売市場、特に、地域の文化的需要を背景に存続する花き卸売市場は、どのような形で生産者と消費者へ届ける小売店の方々の役に立てるか。また、数の調整を行って行けるか。これが、これからの一年で重要なポイントになる。


投稿者 磯村信夫 : 16:07