
「カツカレー指数」という、少し変わった経済指標が話題になっています。
カツカレー指数は、アメリカのBank of New Yorkのストラテジスト、ジェフ・ユー氏が考案したもので、日本発の大手カレーチェーンのカツカレーが世界各国の店舗でいくらで販売されているかを比較することで、円の購買力を考えてみようというものです。
2026年8月に公表された試算では、カツカレーの価格から導かれる米ドル・円の水準は、なんと1ドル=62円18銭でした。現在の市場レートと比べ非常に大きな開きがあります。
もちろん、「1ドル=62円が本来の為替レートだ」という意味ではありません。カツカレーという一つの商品を物差しにしてみると、それだけ日本の物価が海外に比べて安く見える、ということです。
実は、カツカレー指数には有名な先輩がいます。英国の経済誌『The Economist』が1986年に始めた「ビッグマック指数」です。
マクドナルドのビッグマックは世界各国で販売されています。そこで、「同じビッグマックなのだから、為替レートで換算すれば、どの国でもだいたい同じ価格になるはずだ」と考えます。
例えば、日本で600円、米国で6ドルなら、
600円 ÷ 6ドル = 1ドル100円
となります。この場合、「ビッグマックだけを基準に考えれば、1ドル=100円くらいなら日米の価格が同じになる」と考えるわけです。つまりビッグマック指数は、各国のビッグマックの価格から通貨の相対的な価値を考える指標です。
2026年7月の最新データでは、ビッグマック指数から計算される米ドル・円水準は1ドル=80円30銭とされました。こちらも現在の市場レートとかなり違います。
この「商品の値段から為替を考える」という発想の背景には、購買力平価という考え方があります。
購買力平価は、簡単に言うと「長期的には、同じ金額なら、どこの国でも同じくらいのモノが買えるようになる為替レートが決まるはず」という考え方です。
例えば、日本で1,000円の商品が米国では10ドルだったとします。同じ商品を買えるという意味では、
1,000円 ÷ 10ドル = 1ドル100円
が購買力から見た為替レートになります。
カツカレー指数もビッグマック指数も、この考え方を一つの商品に当てはめたものです。
ただし、ここには重要な注意点があります。実際の為替相場は、モノの値段だけで決まっているわけではありません。金利差、資本移動、金融政策、投資家の期待、政治・地政学リスクなど、さまざまな要因によって動きます。
また、カツカレーやビッグマックには、原材料費だけでなく、人件費、店舗賃料、物流費、税金、各国でのブランド戦略なども含まれています。
したがって、
「カツカレー指数=正しい為替レート」
ではありません。
むしろ、
「日本で生活している人が感じる円の購買力と、外国為替市場で評価されている円の価値には、これだけ大きな差がある」
ことを直感的に理解するための物差し、と考えたほうがよいでしょう。
では、この話を「花」に置き換えるとどうでしょう。
現在のような円安局面では、海外から花を輸入する場合、同じドル価格でも円換算した仕入額が上昇します。1ドル100円のとき10ドルの花の購入代金は1,000円ですが、1ドル150円なら1,500円支払わなければなりません。輸入花きには大きなコスト増となります。
一方、日本から花を輸出する場合は逆で、海外から見れば日本産の花が買いやすくなります。
カツカレー一皿が、「円の購買力」を考えるきっかけになり、さらには日本の花の国際競争力まで考えることができる「経済の物差し」になる、という話でした。
経営企画部 加藤

