基本に忠実であれ

花き業界
 先週、宮崎県園芸生産者大会に出席させていただきました。日本全国から青果市場24社、花き市場2社に加え、産地の関係者含め総勢250名の活気あふれる大会でした。

 産地主導の会ともあって、天候不順や、生産資材・農薬・肥料・流通資材・被覆資材・人件費などの上昇に対する懸念、再生産に向けたリスクの増大が発表されました。一方で、市場・実需者・生活者に喜ばれる高品質で鮮度の高い生産物を安定供給し、再生産可能な適正価格を維持・形成してほしいとのメッセージも発せられました。運命共同体である我々は、共に話し合い、出来ること・出来ないことを共有しながら、花のある暮らしを生活者に楽しんでもらうために実行を進めていかなければなりません。

 特に印象的だったのが、宮崎県総合農業試験場の先生による「手残りを最大化する農業生産~物価上昇に勝ち抜く基礎技術~」という基調講演です。

 今、リン酸が世界的に高騰しているのをご存じでしょうか。農業に欠かせない肥料の三要素は「窒素・リン酸・カリ」ですが、リン酸が特に高騰しているとのことでした。多くを海外に依存しており、国際情勢や為替、物流などの影響を受けやすいためです。また、リン酸需要の大半は農業分野の肥料用途ですが、工業分野でも利用が広がり、畜電池向けや半導体の研磨する材料としても需要が拡大しています。

 窒素は植物の葉や茎を作り、リン酸は生育全般・開花や結実を促し、カリは糖や養分の運搬を主目的に機能します。その中で、阿蘇や桜島に挟まれた宮崎県に多い火山灰由来の土壌では、土中にアルミニウムや鉄などが多く存在し、リン酸が結びつき易く、必要量を植物が吸収しにくくなる場合があるとのお話がありました。そのため、堆肥から生じる腐植(有機物)がアルミや鉄を抱え込む性質を持っており、そういった堆肥なども活用して土壌環境を整え、リン酸を植物が利用しやすい状態にすることも重要とのことでした。価格が高騰している肥料だからこそ、ただ与えるのではなく、しっかり植物に吸収させ、無駄なく生かす。そのためにも、まず「基本に忠実に」土壌診断を行ったうえで適切に施肥する。筆者は生産については素人ですが、しっかり内容を把握しなければ、効果的で合理的な生産は難しいのだと大変分かりやすく理解することができました。土を知り、植物を知り、取り巻く栽培環境を知る。そして消費ニーズまで見据えながら適地適作を目指す。そのためにも、まずは基本に忠実であることが何よりも大切なのだとご説明いただきました。

 これは、市場でも同じことが言えると感じました。生産地と消費地の距離に応じて輸送コストが生じ、その負担も上昇しています。こうしたコストを吸収しながら流通を維持する工夫が、これまで以上に重要です。また、小売・婚礼・葬儀・量販など、業態によって必要とする商品や等階級、購入希望単価が異なります。一方で、産地にも継続生産に必要な価格があります。高過ぎれば実需者が減り、安過ぎれば産地が減る。双方のミスマッチが大きくなれば流通そのものが細り、需給バランスに応じた価格形成や代金決済機能を持つ市場も淘汰されてしまうでしょう。

 今回の生産者大会に出席し、生産者と生花店がこれまで以上に接点を持ち、それぞれの認識や考え方、出来ること・出来ないことを関係者間で共有しながら、現実的な落としどころを模索していく必要性を強く感じました。

 また、花のある暮らしが国民に与える潤いや安らぎ、その社会的価値を生活者や企業へしっかり届ける仕組みの確立が重要であり、喫緊の課題であると感じた次第です。 コスト高や気候変動に翻弄される時代ではありますが、こうした環境下だからこそ、私たちは基本に忠実であり続けなければなりません。生産者・市場・実需者が知恵を出し合い、業界一丸となってこの難局を乗り切ってまいりたいと思います。

Canon EOS 6D MarkⅡ/24-70mm F2.8 DG OS HSM|Art017/ISO100/70mm/0ev/f2.8/1/800s

萩原 正臣 9:00