酷暑時代のイノベーション

花き業界
 昨年は「本当に梅雨があったのか?」と思うほど短い梅雨でしたが、本年はしっかり梅雨らしい天候が続き、「早く明けてくれ!」と祈っておりました。ところが、いざ明けると40℃を超える酷暑です。早くも梅雨時期が恋しくなり、人間とはなんとも身勝手なものだと反省しているところです。

 最近では日傘も女性だけのものではなくなりました。化粧をする男性が増えている時代ですから、男性の日傘利用が広がるのも自然な流れでしょう。一般的な日傘でも体感温度は3~5℃下がり、高性能な遮熱仕様なら5~10℃低下すると言われています。しかし、路面温度は50~60℃にも達し、遮熱効果だけでは防ぎきれません。地面に近いお子さんは大変でしょうね。徐々に冷房機能付きのベビーカーが開発されるようになり始めているのも必然と感じます。

 切花や鉢物は農産物であり、40℃を超える環境下で流通させる難しさを改めて感じる一方で、環境の変化とともに、生活者の価値観や購買マインドは急速に変化しています。冠婚葬祭で花の使われ方が変化し始め、同時にホームユースの需要が高まり始めています。我々花き業界は、その変化に十分対応できているでしょうか。変化に合わせ先回りするのか、それとも従来のやり方に固執するのか。その違いが大きな結果の差を生むことは想像に難くありません。

 その自戒の念を持って、社内ではマーケティングとイノベーションについて話す機会を意識的に増やしています。マーケティングとは、自然に売れる状態をつくることだと考えています。

花き業界は長年、プロダクトアウト、つまり生産者主導で発展してきました。生産者都合、物流都合、生産性都合、さらには生産者の奥様が好きな花都合(笑)など。地域性や生産性が優先され、必ずしも消費者ニーズと一致していない場合もあると認識しています。

では、どうすれば安定して流通し、もっと売れるのか。その答えは「生活者のニーズに合ったサービスの提供」にあるのではないでしょうか。

花き業界は「花を売る」のではなく、「花のある生活習慣を売る」仕事だと思います。「仏花を売る」のではなく「ご先祖様を想う時間を売る」こと。「観葉植物を売る」のではなく「心を整え、リラックスする空間を売る」こと。この感覚が必要ではないでしょうか。単なる物販から脱却し、花のある暮らしそのものに価値を見出すことこそがイノベーションだと考えています。

 昔の日傘は布製でした。私の幼少期の記憶にも、母が持っていた淡い紫色の上品な日傘が残っています。その後、生地は進化し、酷暑下の現代では扇風機を取り付けるアタッチメントや、ランドセルのように背負う日傘まで登場しました。

花き業界でも、種苗会社の皆様による高温耐性品種の開発が進み、大田花きもコールドチェーン維持のための定温設備や作業環境改善への投資を進めています。

花き業界それぞれの立場で、日持ち性を高める努力を続けると同時に、生活者が花を必要と感じ、日常的に利用したくなるマーケティングとイノベーションに、これまで以上に取り組む必要があるだろうと強く感じます。容易な道ではありません。しかし、一歩目がなければ百歩目もありません。花のある生活習慣を届けるために、現状に満足することなく、未来を切り拓いてまいります。

Canon EOS 6D MarkⅡ/24-70mm F2.8 DG OS HSM|Art017/ISO100/70mm/-1ev/f5.6/1/640s

萩原 正臣 9:00