新年度が始まり、まもなく一か月。今回は、暮らしに潤いを感じていただけるよう、5月の花き業界のイベントについて触れたいと思います。5月は、1日「スズランの日」、5日「端午の節句」、10日「母の日」と、花のある暮らしに寄り添うイベントが続きます。
5月1日「スズランの日(別名:ミュゲの日)」は、16世紀フランスで国王シャルル9世が「幸運をもたらす花」としてスズランを贈ったことに由来します。「幸福の再来」「純粋」「謙遜」「希望」といった花言葉の通り、春の終わりにひっそりと咲くその慎ましい姿は、控えめながらも幸福の象徴とされ、大切な人への花贈りとして定着し、日本でも少しずつ親しまれるようになってきました。
5月5日「端午の節句」は、中国由来の行事で、邪気を祓うため菖蒲やよもぎを用いた風習が起源です。日本では「菖蒲=尚武・勝負」に通じることから、男児の健やかな成長を願う行事として定着しました。兜や鎧は身を守り、鯉のぼりは逆境を越えて出世する。柏餅は、柏の葉は新芽が出るまで落ちない事から、家系が絶えないとの言い伝えにより、今も私たちの暮らしの中で大切に受け継がれています。
スズランを贈り、菖蒲を飾り、菖蒲湯に浸かる。そんな何気ない季節の営みが、心にゆとりをもたらしてくれるように思います。菖蒲湯には血行促進や鎮静効果、湿疹やかゆみを抑える作用もあり、理にかなった先人の知恵でもあります。お風呂上りにモチモチの柏餅を味わい、伝統的なしきたりとともに心と体を満たす。こうした安らぎとゆとりを後世に伝えていくことこそ、AI全盛時代における温かみのある体験型アクティビティーではないでしょうか。
さて、話は変わりますが先日、芍薬日本一の産地であるJA中野市の皆様が来訪されました。芍薬は幾重にも重なる花弁と、満開時の圧倒的な存在感が魅力のお花です。JA中野市は4月下旬から6月まで、高品質で安定した出荷を支えてくださる重要な産地です。冬場の低温や昼夜の寒暖差を利用することで、芍薬にとって適した栽培環境を整え、ボリューム感あふれるゴージャスな商品を消費地に向けて供給いただいております。芍薬は非常に季節性の高い花で、短期間に最盛期を迎え幕を閉じます。九州から桜前線のように産地を北上し、やがて北海道へと到達します。産地ごとの出荷期間は決して長くはありませんが、産地をリレーすることで長く楽しめるお花でもあります。
今回のJA中野市様との意見交換の中でも、中東情勢に伴うエネルギー供給不安が話題となりました。燃油不足は生産現場にとって極めて切実な問題です。幸いにも夏へ向かう時期であることから、当面は最悪の事態を免れそうではありますが、万が一この状況が冬季まで長期化した場合には、生産計画や品目の見直しを迫られる可能性も否定できません。厳寒期の1月・2月は日照時間も短く、気温も低いため、より厳しい栽培管理が求められます。暖房を使用する頻度も高くなり、燃油を安定して確保できるのかという不安が付きまといます。さらに、卒業や送別など花の需要が高まる3月は、厳寒期の1月・2月を順調に乗り越えてこそ迎えられる大切な時期です。その分、現時点では懸念を拭い切れない状況と言えるでしょう。
生花店では、季節ごとに軸となる花を取り扱い、季節感を生活者へ届けていただいておりますが、その組み立て自体を再考する必要に迫られる場面も出てくるかもしれません。「正直、不安でなりません」と、組合長をはじめ関係者から率直な声が聞かれました。
原油元売り会社や石油精製会社が影響の中心にあることは言うまでもありませんが、その直接的余波は火力発電、暖房用燃料、輸送燃料として使用する物流業界やプラスチック製品製造会社他、社会の根幹に影響を及ぼします。二次的な影響はそれら資源や製品を利用する多くの産業に及び、影響を受けない分野はほとんどないと言っても過言ではありません。もし長期化すれば、私たちの生活に確実に影を落とすことが想定されます。
だからこそ我々は、英知を結集して早めに対策を練る必要があります。最悪のシナリオも想定しながら、無駄を省き、代替案など継続し続けられる取組みを考え、ユーザーに求められる最低限の流通体制を改めて見直していくことが重要です。「どの業界も大変だから仕方がない」とは申せません。生産者から生花店まで、それぞれが事前準備を進め、物流を担っていただく運送会社とも連携しながら、継続できるシンプルな仕組みを整える必要があると考えます。そのためにも、生産者の皆様には苗の手配を含め、早急に冬場~春先の計画を検討して準備を進めていただかなければ間に合わなくなる懸念もございます。複数の仮説を立て、リスク分散を意識しつつ、環境が好転した際には柔軟に軌道修正するシミュレーションについても検討すべきではないか?と考え協議を進めてまいりたいと思います。
Canon EOS 6D MarkⅡ/TAMRON SP 70-300mm f4-5.6 Di VC USD A030/ISO100/300mm/-0.7ev/f5.6/1/400s
萩原 正臣 9:00
