vol.149 加藤洋ラン園様(千葉県)切花ファレノプシス

♪菜の花畠に入り日薄れ~

・・・という歌のようには陽は傾いていませんが、この満開の菜の花畑の情景を前にすると、『朧月夜』のイントロが思わず頭をめぐります。

 

 

 

ここは千葉県南房総市。

今回の品目はナノハナ!

 

 

・・・ではなく、切花ファレノプシス(コチョウラン)!

 

いまや、日本の花き産業の重要な構成要素の一つである切花ファレノプシス。

ファレノプシス=コチョウランのことです。ここでは、学名のファレノプシス(Phalaenopsis)、もしくは略してファレノと呼ばせていただきたいと思います。呼称に馴染みのない方、すみません。

「ファレノ」って響きも“ふぁ~ふぁ~♪てふてふ”って感じで、なんとなく語感が見た目と結びついて、いいでしょう!??

なにとぞ“ファレノ”にてお付き合いくださいませ。

 

切花ファレノといえば、白が全体の4分の3(75%くらい)で、白品種の多くは台湾を中心とした輸入品。

2022年度は白色が79%を占めていたのですが、少しずつではありますが、毎年白色以外の品種の量が伸びてきています。

グラフにするとこの通り。切花ファレノ全体でも取扱数量が伸びてきています。(2025年度は3月16日時点まで)

 

そのような台湾からの白系大輪が主流の中、徐々にミディ系色物が増えているのにはある人の存在があります。

その人こそ千葉県南房総市の加藤洋ラン園加藤英世(かとう・ひでよ)さんです。

 

★加藤洋ラン園様 基本情報★

■生産場所

千葉県南房総市(館山市との境くらいのところで、自動車で所要時間片道2時間くらい)

 

■主な生産品目と生産面積

・ファレノプシス(主にミディ系) 約1,550坪

・カトレア 約900坪

・ホワイトレース 1,800坪

合計4,250坪、約14,025㎡(サッカー場2面分くらい)

 

■主な労働力

ご家族(加藤さんご夫妻とご両親)、社員6名、パートさん5名の合計15名、及びネズミを捕る精鋭のネコ(“ランちゃん”ほか、実際には複数形)

“害チュウ”管理用の大切なネコちゃんです。

加藤さんにとっては、彼らも重要な労働力。天敵を利用する生物的防除の手段としてネコちゃんたちを管理しているのですから、IPM*と言っていいのでしょうか。

*IPM(総合的病害虫・雑草管理:Integrated Pest Management)は、物理的、耕種的、生物的、化学的防除を組み合わせ、環境負荷と人への健康リスクを減らしつつ、病害虫や雑草を経済的に許容できるレベル以下に管理する技術

 

国産の切花ファレノの生産を担う加藤さんは、泣く子も黙る切花洋ラン生産の重鎮です。←ほんまやで。

確かに、近年花束やアレンジメントの中でミディ系*のファレノの切り花をよく見るようになりました。

*ファレノのミディ系=鉢物のコチョウランで見るような一般的な大輪種より花や株が小さい品種群。白や色が付いているものを含みます。

 

そのファレノの出荷は下のグラフが示すように、およそ7割が輸入、3割が国産。

 

さらに、国別県別に分解すれば、千葉県は台湾に次ぐ堂々第2位の生産を誇ります。

さらに加藤さんは、その千葉県の中でも重要なポジションを占める重鎮。つまり国産ファレノ生産の牽引役なのです。

 

2026年の母の日ギフトにも、青山フラワーマーケットさんや日比谷花壇さんの提案を拝見すると、ラインアップの中でも高価格帯にはファレノが使われています。

一例ですがこちらの通り(ご参考)

(例)日比谷花壇さん

(例)青山フラワーマーケットさん

 

何しろ、大田花きのフラワーメッセージの表紙(2025年6月発行)を飾った(品種:ベビーフェイス)と思ったら、その年のフラワーオブザイヤーOTAをご受賞(品種:サーフソング)。

表彰式の様子はこちら。

と思ったら、今度は2026年1月に開催された第46回千葉県フラワーフェスティバルにて農林水産大臣賞をご受賞(品種:アンティーク)という飛ぶ鳥を落とす勢いで数々の賞を受賞され、注目されているのです。
加藤さんのご受賞を伝える房日新聞のインスタグラム⇓

 

そう、加藤英世さんといえば、一躍時の人なんです。

その理由は、トレンドに即した品種の導入のみならず、ミディ系や色付きの切花コチョウランを無傷で完璧なまでの品質で、またバイヤーさんたちが必要な時に必要な量を確実に手に入れられるよう、生産量を考えながら取り組まれているということにあります。お客様の細かい注文にも、一つ一つ丁寧に答えてくれることでも、その名が知れ渡っています。

 

んー、加藤さんはPJKって感じかな。

PJK=ファレノの重鎮、加藤さん

そんなイニシャルトークはさておき、加藤さんにファレノの生産についてお伺いしてまいりましょう。

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★生育~開花条件 ポイントは温度管理!

ファレノの原産地は、東南アジアを中心とした温暖湿潤な熱帯・亜熱帯地域です。

高温多湿な熱帯雨林の樹木の幹や岩肌に根を這わせて生息する着生するランです。

じゃあやっぱり、ハウスも自生地に近い状態にするんですよね。

「そうだね。冬は暖かく感じるし、夏は涼しく感じると思うよ」

と最初にお邪魔したハウスは、湿度も高めであったか~い( ´ ▽ ` )♡

 

ん?でも花がない??花がありませんが、あのきれいな花、ドコですか??

 

「このハウスには開花株はないよ。

ハウスは基本2つの温度設定に分けているんだ。

一つは、株を養成する比較的温度高めの養成室(以下、「ハウス①」)と、もう一つは温度を一段下げて開花させるための開花室(以下、「ハウス②」)があるんだよ。このハウスは①の養成室」

 

なるほど、だから花がないんですね。株の成長を促進するときは温かいハウスで栽培(栄養成長)。暖房のダクトが張り巡らされています。


「夜間でも28度以下にはならないようにしているよ。日中でも30度くらい。このハウス①で新葉が出るようにして開花に備えるんだ」

ご覧ください↓例えばこの右側の若くてキラキラの葉を、いかにこのハウスで成長させるかが勝負です。

 

 

このハウス①で元気に要請されたものは、ハウス②(開花室)に移動します。

こちらが開花室。先ほどのハウス①とは打って変わって、満開のファレノに満たされています。

 

 

どういうタイミングで移動するのですか?

ハウス②に移動してから4.5か月から6か月で開花するので、母の日とかウェディングシーズンなど、マーケットがこのタイミングでほしいだろうからと需要を予想して、そこから逆算してハウス②に移動するんだよ」

 

②に移動して1か月でこんな感じ。上がってきた花芽にご注目いただければと思います。

 

 

なんとハウス②は、日中でも高くて26度くらい、夜間は最低でも15度キープ。最低温度28度設定だったハウス①に比べて意外にも低温です。

これはファレノの性質を生かして、花芽を芽生えさせるためにあえて低温に当てているのです

というのも、ファレノは低温を感じると、

「ん?寒ッ?

やんば。このまま寒いと生きていけないかもしれないから、子孫を残そう!」

と花芽を付けようとするのです。これが生殖成長。そのようなファレノの性質を使って、株を養成する温かいハウス①と、寒さを感じさせて開花させるハウス②とを行き来させて生産しているのです。

加藤さんがウン探だけに教えてくれたノウハウですから、ほかの人には言っちゃだめですよ。

 

「それからね、葉っぱの下に花芽は1本!

こういう感じ↓

だから花を切ったら、次の葉を養成しないと花は咲かないんだ。

だからこそ葉の数を増やすための養成が重要なんだよ」

 

養成して葉が増えれば、またそこに花が咲く!というわけですね。

こういうびっかびかの元気な葉が出てきたら順調な証◎

こういう感じ↓「養成重要」

この葉が大きくなると生命力みなぎる感じが伝わってくるほどです。そうなれば、もう花芽を出す準備万端。

ハウス②へ移動します。

ハウス②で花を収穫し、仕事を全うしたら今度はまたハウス①へ移動というわけです。

 

「このハウス①⇔②の移動のこの繰り返しだよ。

ファレノの生産で最も時間を費やしているのが、この温度管理とハウス①と②の株の移動かな」

 

ファレノの基本は養成→開花→養成→開花。つまり、ハウス①→②→①→②の移動作業の繰り返しということなのですね。

「そ。うちのファレノの中で、年間の注文数が最も多い白のアマビリスは、毎週200株を①と②のハウスで入れ替えるんだよ」

 

 

え。アマビリスだけで200株??

「秋の婚礼シーズン向けの商品は、4.5か月前に当たる4-5月にハウス②に入れるんだけど、その倍くらい移動するよ」

って、つまり400株くらいってことですか。どうやって?

「軽トラで」

ひとつひとつトレーに載せて、軽トラまで運ぶのですか。

「そうだよ。軽トラに載せているうちに、夏の暑いシーズンは昼間だと葉焼けしちゃうんだ。だから夏場は昼を避けて朝晩の太陽光が弱いタイミングで移動するんだよ」

ぐへ~・・・ファレノの株を積載している時間だけで太陽光にやられてしまう危険があるなんて、なんて気を遣う品目なんだ~。

そのようなファレノの性質も考えながら、加藤さんは注意深く生産管理されていらっしゃるのですね。

しかも、30ー50品種もあるファレノのううち品種ごとに必要とされるタイミングを見計らいながら、常に需要が高まるシーズンから4.5か月逆算して、入れ替えるのです。

あるいは、常に需要のあるアマビリスのような定番品は、株全量の4分の1ずつハウス②へ移動させ、年間を通じて出荷できる体制を整えています。

この緻密できめ細やかな加藤さんのお仕事ぶり、どうですか・・・!完璧を求める姿勢と、それを実やり切る実行力には驚かされるばかりです。

こうした管理の積み重ねがあってこそ、数々のご受賞とファレノ需要の高まりに繋がっていたのですね!

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★莫大な冷暖房費

その繊細な温度管理をしているだけに、冷暖房費は莫大な金額に。

「今は寒いから暖房だけど、夏になれば暑すぎるから冷房を使うんだよ」

 

放っておけば、夏場のハウス内は45度や50度近くにまで達してしまいますよね。いくら熱帯の植物でもそれでは暑すぎて、株がダメになってしまいます。冬は暖房、夏は冷房を使います。

では年間の冷暖房費は膨大??

「年間でウン千万、かかるよ」

どっぴゃー。

最近のお話の中で一番驚いた。びっくりしすぎて眼が飛び出そうで、思わず目を押さえました。

何千万の冷暖房費ってどんだけー

「先日のイラン情勢の影響で、(ウン探取材日に)燃料の値上げがあると告知があったよ」

今年はさらに上がるとの予測。ファレノの生産経営はツライヨ・・・

 

ここでウン探からの質問です。

Q:何輪つけるって生産段階でコントロールできるんですか?

A:「できます。夜間の温度を低くすると、花芽が伸びるので、その分花の輪数は増えるよ。でも、私の場合は多くても6-7輪で抑えようとコントロールしています。そんなに伸びてしまったら商品価値が逆に低くなってしまうからね」

 

確かに、切花商品として適切な茎の長さと輪数がありますね。

「それに、開花を待つ時間があるから、その分、株の回転率も悪くなるでしょ。

あまり輪数を付けない理由はもう一つあるよ。」

なんでしょ!?

「養成期間を長くしたり、夜間の温度設定を低くすれば、その分、株が充実してすごく大きくて太くて輪数が多いのができるけど、切花の場合ゴリゴリの1本ができても、使いづらいでしょ

 

ですよー、確かに!

加藤さんは、切花商品として最適な商品スペックに仕上げるように、絶妙な温度管理とハウス①②の移動で、作り上げているのです!

う~ん、やはり繊細!

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★謎のバーナー

圃場を拝見していると、ところどころに謎のガスバーナーが置かれています。

あっちにもこっちにも・・・

しかも、結構な数量・・・なんで?

アタシャ、ガスバーナーといえば、クレームブリュレしか思い浮かばぬよ。

 

ハサミを消毒するんだよ。ガスバーナーで。

しかも、ファレノを1本切る度に1回1回バーナーで消毒するんだよ」

1本切る度に毎回・・・?

「ファレノはウイルスとか病気にかかることが多くて、ガスバーナーで鋏を消毒したからって完全に防げるわけではないんだけど、ウイルス蔓延の予防手段の一つとしてバーナーを使っているんだ」

ハサミを持ちながら、ファレノを持ちながら、バーナーで消毒するってどんな感じかと思っていたら、おもむろにいつもやっているようにファレノを切ってくださいました。

文字だけではどんな風にやっているかなかなか想像できないでしょう・・・と思っておそらく本邦初公開の動画がこちら。

「バーナーを使ってハサミを消毒しながらファレノを切る様子 by 加藤洋ラン園様 南房総市」


どうですか、この神業。

バーナーは脇に抱えて肘でカチカチON-OFFを繰り返しながらハサミを右手、ファレノを左手に持つわけです。

もし、「バーナー・オブ・ザ・イヤー」なんて賞があったら、加藤さんは最優秀賞間違いなしですな。

いやしかし、こうして拝見するに、加藤さんて・・・やはり仕事が緻密で繊細なお方だ~。

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★出荷場は謎だらけ!?

こちらが加藤さんの出荷場。

Oh!なるほど、加藤さんのところでも従業員さんの福利厚生のために、休憩時間に卓球してリフレッシュできるようにしているのですね!

 

「作業台だよ」

 

ズコーーーっ

卓球をしているわけではなく、卓球台を作業台にしているのですね??

「すごく便利なんだよ。大きいし、高さもちょうどいい。しっかりしているし、何より折りたためて、移動も楽々」

 

この通り↓!!

 

折りたためて、移動が楽なので、作業スペースを効率的に使うことができますので、確かにいいところ尽くめ。掃除もしやすいですしね。

どうりで加藤さんの出荷場はきれいに整理整頓されています。

 

ん?これは何でしょうか。大きな“はちみつの瓶”のようなものに、石が入ってずらりと並んでいます。

 

” なぞの瓶石(びんいし)”とでも言いましょうか、加藤さん、これは?

 

「出荷前のファレノを入れておくんだよ。こうやって」

 

 

なっるほど~!

ファレノは比較的トップに重心が来る「トップヘビー型の花」で、花瓶に生けていても倒れやすいですよね。空の花瓶に入れたらなおさら倒れやすい。この石は花瓶の重石。

ファレノ自体は水が入ったキャップに挿してあるので、瓶に水を入れる必要はなく、瓶が倒れさえしなければ大丈夫なのです。

梱包前のファレノを管理する上での加藤さん考案のなるほどな工夫なのでした。

 

★クイズ:んじゃ、これは??

ボコボコ感が不思議。ハウス前の側溝をふさぐフタです。

 

なんでまたこの橋渡しはこのような妙なごつごつ模様をしているのでしょうか。

足裏マッサージ用かな~・・・ずっと歩いていると疲れますしね。

ま、確かにこの上を歩いたら青竹踏みのようで気持ちよさそうだ~

「キャタピラーのタイヤ(無限軌道)だよ。耐久性もあるんだ」

と思っていたら、そのキャタピラーが・・・・あった。

タイヤ部分を見ると確かに先ほどの側溝の渡しそのものではないか!

このタイヤがリサイクルされて渡しに使われていたのでした。

 

出荷場や生産圃場は生産者さんの工夫で溢れています。

生産者現場の創意工夫に、その方の哲学が現れていることもあり、これもまた生産者さんを訪問するウン探の醍醐味でもあるのでした。

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★品種選びで留意すること

市場で拝見していると、さまざまなファレノの品種に出合います。数あるファレノの品種をどのように選んでいらっしゃるのでしょうか。

「一番は“基本を押さえる+変わり種チョロチョロ”・・・かな。

ご注文いただく白のアマビリスを主軸に、赤、くすみピンク・ベージュ、オレンジ、イエローグリーンの5本の柱を必ず揃えて、そのほか変わり種を入れておくんだ

例えばこんな感じです↓

・アマビリス

 

・赤系

ウェディングのお色直しとかで、赤系のドレスを着る方が多いので、赤系もマスト!

 

・くすみピンク系

 

・ベージュ系

トレンドのベージュ系も今や定番。写真は加藤さんイチオシのアンティーク。千葉県フラワーフェスティバルで農林水産大臣賞を受賞したのも、この品種です。

確かに、圃場に入った瞬間にとてもHAPPYムードに包まれます。

 

・オレンジ系

 

・イエローグリーン系

 

・変わり種はこの辺ですね(๑>◡<๑)♡ 柄入りなど。

 

 

 

いや~、もうこの“変わり種チョロチョロ”シリーズのインパクトが強くてですね、例えばこのようなぶちぶちの「ぶち模様」ってどのように使われるのかと思いますが・・・

 

個性的なぶっちーちゃんはこんな風に使われるらしい~。カッコヨシ。サイコー。

fête(フェテ)さん(東京都中央区日本橋兜町)のインスタグラムより↓クリックでインスタにリンク

 

どの品種も魅力的過ぎて、思わず吸い込まれそうなほどに見つめてしまいます。こんなに細かくファレノの多くの品種の生育管理ができるなんて、世界的に見ても加藤さんをおいてほかにはなかなかいらっしゃらないのではないでしょうか(ウン探妄想タイム)。

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★苗はどこから??

ファレノは同じ品質の苗を、短期間に大量に作るため、組織培養で増やしていくのが一般的。組織培養で増やすことで、ウイルスフリーの苗から育てることができるのです。

・・・ってことは、加藤さんがご自身で増やすのではなく、どこかから苗を買い付けるのですか?

「台湾から届くんだよ」

そう!台湾といえば、世界的にも有数のファレノ輸出国で、ファレノのシリコンバレーといっても過言ではない!

切花生産ばかりでなく、組織培養による苗の供給源として、日本を含む世界各国へ輸出されています。

ちょうど取材日には、まさにその台湾からファレノの苗が届きました。苗のお届けの瞬間に遭遇できるなんて、ラッキーですこと♡

加藤さんも一緒に荷下ろし~(「今回の苗はずいぶん重いな・・・」と言いながら荷下ろしに励む加藤さん)

この貴重な機会ですから、特別に開梱の様子と中身を拝見しちゃいましょー。

苗の開梱の瞬間・・・これまた本邦初公開じゃないのー?

どのような荷物でも注文したものが届いて開梱する瞬間てわくわくします!切花ファレノ用の苗がどんな感じで届くのでしょうか。

こんな感じで根はミズゴケに巻かれ、3寸ポットに入り、ぎっしりと箱に詰められて届くのです。

 

開梱の様子は動画でもどうぞ!


納品されたときのミズゴケごと、バークを使って鉢植えして定植完了。ハウス①で株を養成するというわけです。

ちなみに、加藤さんのところでは、米松(ベイマツ)という北米原産針葉樹=ダグラスファー(Douglas fir)のバークを使用しています。

米松自体の原産地は北アメリカの西部ですが、バークはニュージーランドから届きます。米松バークは粒が粗く隙間が多いため、ファレノの根に必要な酸素を効率よく供給しつつ、水分を程よく保ち根腐れを防ぐので良いとされています。

ファレノは管理用の燃料ばかりでなく、世界各地から取り寄せる資材が必要な生産品目なのですね。まったくもってコスモポリタンだー。

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★でもなんでファレノ??

「もともと親父がシンビジウムとホワイトレースフラワーを生産していて、平成の初め頃にはカトレアの切り花をメインに手がけていたんだよ。ところが、葬儀花のスタイルの変化に伴い、よく使われていたカトレアの需要も徐々に縮小していったでしょ。そこへコロナ禍が重なり、需要はさらに落ち込んでしまったんだ。

さらに追い打ちをかけたのが、令和元年の房総半島台風

電柱がハウスに倒れ込み、地域でも最大級と言われる被害を受けてね、それをきっかけにカトレアの栽培を少しずつ減らし、現在はファレノの生産に集中しているんだよ」

施設があるのでそれを生かせるようにラン科のなにか・・・と考え、需要が伸びているファレノを選びました。

ほかにないものを生産し、お客様のニーズに応え続けていることで、需要の歯車は徐々に高まり、加藤さんの圃場の中でもファレノのウェイトを大きくしているということです。

 

同時に現在でも引き続きホワイトレースを生産しています。

可憐な花姿からは想像もできなほど、意外にも草丈は大きくなるようです。放っておくと4メートルにもなるのだとか。

 

カトレアも。

 

房総半島台風の被害は、加藤さんのところでも大きかったのですか?

「電柱が倒れて、ハウスを直撃したよ」

その時の様子が資料になっていたものを撮影。電柱が倒れた先は加藤さんのハウス。まさに直撃だ。見るだけで心が痛みます。

 

こちらの場所も元々はハウスがありましたが、電柱の直撃を受けて、撤去した状態になっています。

道路脇の電信柱も半分くらい倒れたようで、暫く停電にも悩まされましたが、ハウス内の管理は自家発電で対応したそうです。

本当に農業生産は常に災害のリスクにさら晒されています。

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★加藤さんの哲学

加藤さんはどうしてここまできめ細やかなお仕事を究めていらっしゃるのでしょうか。

お客様に常に求められる花であり続けたいということが一番かな。

生産コストも高いから、需要の鈍いものはできるだけ回避して、売れるものに生産を集中していきたい。売れるものを売れる時期に出荷するというのが、わたしが目指していることだよ」

そんな風に考えるようになったのはどのような背景があったからなのでしょうか。

「親父から引き継いでからも尚、順風満帆に売れていたら、・・・そして大きな災害もなく、普通に売れていたらこんな風に考えて生産していなかったと思うよ。

売りにくい時代があったからこそ、品目を転換してみたり、導入品種を検討したり、どうやったら需要期に合わせて数量を出荷できるかなーと考えたり、色々と工夫するようになったのかもしれないな」

困難があったからこそ、現在のファレノにたどり着いたというわけですね。加藤さんの笑顔の裏にはご苦労の積み重ねがあったのです。

本田宗一郎氏の語録に「困れ。困らなきゃ何もできない」(困った時こそ何かを変えるチャンスだというポジティブな意味)とありますが、むしろ加藤さんのお言葉はこの名言と重なります。

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★加藤洋ラン園様の格言★

・ファレノのハウスは「養成室」と「開花室」の2段階で管理し、需要期に合わせて株を機動的に移動せよ!

・緻密な管理で、マーケットのニーズに応えるべし!

 

記事内では触れきれませんでしたが、加藤さんの真価はその観察力と洞察力にもあると感じました。

ファレノの生理だけでなく、市場の動きやお客様の志向、さらには取引先ごとの特性まで、実によく見ていらっしゃいます。その積み重ねが、あの緻密で無駄のない生産管理につながっているのでしょう。多品種を組み合わせ、周年で安定供給を実現する、この難易度の高い取り組みを可能にしている背景には、こうした観察力・洞察力があるのだと感じました。

そして何より印象的だったのは、「お客様の声に確実に応えたい」という強い意思です。数々のご苦労を乗り越えてきた歩みの中で、その思いが一貫して貫かれてきたのだと思います。

加藤さんのファレノが、日本の花き業界において欠かせない存在となっている理由は、まさにそのその一点にあるのではないでしょうか。ぜひ加藤さんの哲学が反映された絶品ファレノをご堪能ください。

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★おまけ:菜の花畑の情景

冒頭で菜の花畑をご紹介しましたが、菜の花摘みは食用の芽を摘んでいるそうです。

でも加藤さん、こんなに絵になるほど満開でいいのでしょうか?

「一番花はもう摘み終わって、いま咲いているのは二番花、三番花なんだよ」

なるほど、摘んでいるのは一番花の後に出てきた若い芽で、咲いている花を摘んでいるわけではないのですね。

しかも、この一面の菜の花は、加藤さんのお父様が管理されているとかで、大きな籠を背中に背負って葉の花摘みをしているのは、加藤さんのお父様の会社の従業員さんなのだそうです~。

この通り、出荷場は最盛期を迎えていました。

 

それではみなさま、ごきげんよう。

 

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文責:内藤育子@大田花き花の生活研究所