Vol.143-② JAにじ様:福岡県【後編】枝物・草花

JAにじ様前編からの続きです。

みなさま、ご存知でしたでしょうか。農林水産省発表の国内切花生産データによると、国内の切花生産量は、キク・カーネーション・バラが三大切花と呼ばれ、久しくその不動の三冠を譲ることはありませんでした。

しかーし!最新のデータを拝見すると、なんと切花生産量の順位は、キク・枝物・カーネーション・バラと、枝物が第2位に躍り出ているではありませんかΣ(OωO ):!

【2022度全国の切花出荷量】(データ元:農林水産省)
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※品目表記は発表まま

参考までに2002年度産はこんな感じだったわけ。
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いつのまにやら枝物が大きく躍進。いつのまにやらって、だいたいいつ頃かわかっているのですが、2020(令和2)年度産がカーネーションと枝物の出荷量がほぼ同じで、翌年の2021(令和3)年度産から枝物がカーネーションを追い越しましてね。20年前の2002年度産は上記の表からわかる通り、枝物はカーネーションの56%。バラの60%にすぎなかったにもかかわらず、もはや逆転現象が起きているわけですよ。これは日本人口の高齢化や働き方改革など、大きな社会現象の反映と言えるかもしれません。

ま、一口に「枝物」と言いましても、あらゆる品目が含まれますから、単品目でいけばキク・カーネーション・バラの順位に違いはないのですが、いずれにしても「枝物」という品目カテゴリーの生産が上位に上がっていることは確かです。厳密には、伸びているというよりも横這いくらいなのですが、カーネーションやバラの生産減少が著しいので、枝物がその分上位にランクインして伸びているように見えるというわけです。

とはいえ、データはデータ。生産現場では何が起きているのでしょうか。なんとその答えがこのJAにじ様にあったのです!
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その秘密を探りにこの度もJAにじ営農部園芸指導販売課の上村享(うえむら・すすむ)さんのご案内で、枝物の生産者さん2軒(しかも2軒とも「柳」さん!)をお邪魔致しました。

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★1軒目、柳和男(やなぎ・かずお)さん
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・栽培面積約600坪
・生産品目:グレビリア(ロブスタ、アイバンホー、ピーチアンドクリームなど)、ウーリーブッシュ、メラレウカ、ピットスポラム、クルクマ、パープルファウンテン、アルテルナンテラ、オリーブなど
・合計ご出荷ベースで8品目(試作を含めると数えきれない)
・枝物と草花の専業で、品目は複合的ですが、枝物草花のみ
・カーネーション専業から、5年ほど前に枝物専業に華麗なる生産品目転換をされました。

のちほど「別の柳さん」がご登場されるので、ここでは和男さんと呼ばせていただきます(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
さて、和男さんもJAにじ様前編の永松さんや権藤さんたちと同様、カーネーションを40年以上生産してきました。永松さんは47年目にして“今年こそ今までで一番いいカーネーションをつくっちゃる!”と意気込む一方で、全面的に枝もの生産に切り替えた和男さん。つい最近まではカーネーションの生産一筋で一生懸命やっていらしたと思いますが、全面的に切り替えた理由は何でしょうか。
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「もう70になってね」

え、和男さん、55歳くらいに見えますけど?

「なは~に、もう70歳になってひとりでできる方がいいから切枝生産に切り替えたんだよ」

このひとことに和男さんのお考えのすべてが詰まっているように思います。
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「カーネーションは大変ちゃ!
毎日毎日、朝早く起きて、ずっと花を収穫して、出荷して、一番忙しいときには寝ずに働かにゃいけん。もうどんどん咲くけんさ。
子供を育て上げるまでは稼がにゃいけんから一生懸命頑張るけど、夫婦二人になったら最低限稼げればいいっちゃん。年をとったらそんなに仕事できん。
今日咲いちゃうから、すぐ花を切らなくちゃいけん!のようなプレッシャーから解放されるでしょ。

枝物なら1週間くらい用事があれば休めるけど、切花は休めない。カーネーションは“ずーーーーと忙しい”。ひとりじゃできないからパートさんも雇ってやるでしょ。
でももう夫婦2人で暮らすだけなら、ひとりでできる分だけ生産する。もう細々とでええでしょ」

そこでいま生産しているのが、グレビリアや、
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メラレウカ、
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ウーリーブッシュなどの枝物と草花というわけです。
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カーネーションから一転、枝物生産はいかがですか?

「そらおもろいわ。そして奥がふか~い!
ハウスでできる品種とできん品種があるとよ。露地がでらんときにハウスのものが出るしさ。
オージープランツ系(グレビリアやウーリーブッシュ、バーゼリアなどオーストラリア原産の植物)は霜がイカン(霜に弱い)。でもその時期、ハウスのものが出るとよ」

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グレビリアの中でもジョンエバンスやロブスタ、アーバンホーテなど品種によって葉の形や生育状況が異なるので複数栽培。
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ウンチク探検隊でグレビリアの枝物の圃場を紹介したのは史上初。こんな風に作るのですね。
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オージー系のこれらの植物は、乾燥に強いイメージがありますが、やはり相当水や肥料を切るのですか?

「カーネーションを40余年作るでしょ、ほげね(=そうするとね)、連作障害で土壌はめちゃくちゃよね。ほげね、肥料バランスが悪くなって普通はめちゃくちゃよね。
でもこのグレビリアのロブスタはよく太るんよ(よく育つ)。ほげね、結局は植えてみないとわからん」

どうやら植えてみて長年の花生産の経験と直感を生かして水やりをしていらっしゃるみたいです。
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この畝はカーネーション生産の時に使ったまま。隔離ベンチ栽培で、高さ20cmのベンチの中で肥料バランスや水分量を整えています。この高さ20cmのベンチはその下の地面と繋がっていないので、根が下ではなく横に張るようになります。すると、株がダメになったときや生産を中止した時に、株を引っこ抜きやすいというメリットがあるようで、和男さんはカーネーションの隔離ベンチ栽培の再利用をいたくお気に入り( •◡-)♡
カーネーション生産で使ったフラワーネットもウーリーブッシュなどの草花生産に再利用します。
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「カーネーションの時に使ったまンま、なんッッもしとらん。肥料もなんも入れとらん。オージー系はむしろ肥料を切らんといかん」

まさに環境保全型の枝物栽培.゚+.(´∀`*).+゚.。そこに、新しい植物を植えてみて育つかどうか。和男さんの判断はシンプル、かつ迅速です。

品種はどうやって導入判断されるのですか?

和男さん
「どれがきれいかな、うちの生産環境に合うかな、出してみたら売れるかなくらいの感覚で定植するよ」

市場に既に流通しているものかどうか、単価はいくらで売れるのかも確認するのですよね??

「いやいや、出してみて売れるか。植えてみて育つか、それしか見ないよ。カンタンよ。
バーと出して売れたらOKだし、植えてみて枯れたらもうダメだねと即撤収。売れるか売れんかよ」

まるで博打的な感覚で新しいものにトライされているのですね。

「バクチ、バクチwww」

と和男さんは否定しません(*´艸`)‪(*´艸`)!‪

中でも稼ぎ頭はグレビリアです。
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「グレビリアは完全に思った以上の収穫やったな。大成功よ(´。✪ω✪。`)✧*。」

博打で大当たりした感じですね?!
どのような経緯があってグレビリアに目を付けたのですか?

と伺ったところでもう一人の柳さんご登場。
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柳寿幸(やなぎ・ひさゆき)さんで、和男さんの圃場から100メートルくらいのところで枝物やオリエンタルユリを生産しています。ここでは寿幸さんと呼ばせていただきたいと思います。

寿幸さん「(グレビリアに目を付けた理由は)日本農業新聞に、“これからは枝物がよくなる。特にお花屋さんではグレビリアが注目の的!”っていう記事があって、最初は私がグレビリアを買ってきて植えたんだよ」

和男さん「これは大当たりだったね。ハウスでも露地でもなんぼでもいける」

日本農業新聞は読んでおくものですね~!
もちろん日本農業新聞以外からあらゆる情報網にアンテナを張って新品種にトライします。

「インターネットで購入することもあるし、この辺は昔から観葉植物の生産が盛んで苗も売っているので、観葉植物を卸からよさそうだなと思ったものを買ってきて、定植することもある。基本的には売れそうやっていうのを買ってきて、作ってみて出すだけ」

試作圃場にアルテルナンテラまでありますが、よくニッチなところに目を付けられましたね。

和男さん「それがよ、女房が友達からもらってきて、飾っていたら芽が出てきたのよ。
お~、コレ面白いじゃないか!ってことになって、それを畑に挿して増やしているってわけ」

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その増殖パターンも。和男さんは枝物や草花の生産をとても楽しんでいらっしゃる様子が窺えます。

「ばってん、なんもわからんとですよ。
枝物、草花生産は手探りよ。やってみたらダメで捨てたのもだいぶあるよ。
例えばドドナエア(Dodonaea、ムクロジ科)。低温に当たるときれいな紫色になるっちゃん。ばってん、うちは基本全部ハウス栽培で、ハウスでは(温かすぎて)色が出ないからダメと、全部捨てちゃったよ」

さすがご判断が早い!
こちらはウーリーブッシュにナルコラン、
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そしてこちらはメラレウカのレボリューションゴールドとマウンテンファイア(山が燃えているように見えるからこのような命名なのでしょうか)など。

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「露地でも作れるけどハウスで作ったらよく伸びる。お花屋さんはスーッと穂先が伸びた感じのハウス栽培仕様がいいんじゃないかなと思ってね。仕立てがいいでしょ」

おっと!珍しいものを発見!メラレウカの花、ご覧になったことありますか?
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こちらがメラレウカの花です。圃場ではこんな貴重な光景に出合うこともできます。

★メラレウカこぼれ話
アロマセラピーにお詳しい方ならティーツリーという定番の精油をご存知のことと思います。何を隠そうティーツリーの精油が採れる木こそメラレウカ。キャプテン・クックと呼ばれた英国海軍ジェームズ・クックがこの葉をお茶として飲んだことから、TEA TREE(ティーツリー)と呼ばれるようになったのだとか。庭木用に使われていましたが、現在は切枝としても人気があります。

脱線しましたが、和男さんはそのほか斑入りのピットスポラムやバーゼリアも試作中、

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細葉ユーカリのブラックテール(別名黒ユーカリ)もそろそろ出荷開始、
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さらには、オリーブも本年から初出荷を目指します。

いや~、それにしても圃場を拝見しながら和男さんと寿幸さんと農協の上村さんとウン探と4人いるのですが、常に2人から3人はワントピックで同時に発言しているわけ

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ウン探検はほぼほぼ質問とリアクションのみですから、3人が常に被せ気味に発言されているのです。
ウン探にはもはや内容を聞き取れぬぁ~い!

お互いの発言を聞き取れているのかと心配になりますが、聞き取れているのでしょうな。まるで同時通訳を福岡弁同士で行っているかのようですが、この闊達な意見交換ぶりには恐れ入りました。
そして「●×▽◆~やったら伸びるんじゃか」
「いやのばん」(いや、伸びない)
「のばん・・・」

と同時に発言しているのです。↑やっとの思いで聞き取れたやりとり(;゚∀゚)
つまり、新規で始めた枝物と草花生産は、毎度新品種を入れる度に手探りではありますが、こうして「ダブル柳さん」がうまくいっているのも、長年培われた植物生産に対する直感と、お互いのアドバイスの賜物であることがよくわかりました(。’-‘)(。,_,)ウンウン

このように、カッコイイオージー系のアイテムに挑戦する傍ら・・・

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あれま、これまたこの扉、昭和ムード満載で素敵じゃないですか。
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植物柄入りのすりガラス。趣ありすぎで素敵。
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「これは家のよ。再利用」

開けたらサザエさんが出てきそうな雰囲気です。
ベンチ栽培もフラワーネットも、土壌に残る肥料も、はたまた扉もすべて再利用ですね。
和男さん、枝物生産に変えてよかった思うことは?

「忙しくないことやん。急かされないこと。
どっか行こってなったらいつでも行ける。以前はそれどころじゃなかった」

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うきは市は花でも古い産地ですし、生産者さま全体でそろそろ無理がきかない年齢に差し掛かっていて、何を作ればいいか模索中なのだそうです。カーネーションから全面枝物・草花に切り替えた和男さんに、ほかの生産者さんから注目されているようです。

そして和男さんの圃場を見学に来た生産者さんからは・・・

“はあ~たひとりでこなにしとるちょねヽ(◎Д◎)ノ??”
(=あなた、ひとりでこんなにしているの?=こんなに広い面積を一人で生産管理しているのですか?)て言わルルの。
ばってん、そんないそがしねーちゅうだ。草取りが大変なくらいだちゅうの」
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なによりハウスでできるもの、そして周年作れるものに出合えたのがよかったと言います。

「そしていいのは経費がかからないこと。カーネーションは光熱費に人件費にもう経費が高いでしょ。売上があっても経費を引いたらいくら残るかや。パートさんが一人休めば、自分で寝る暇なくずーっと仕事せにゃいかんし。カーネーションに比べたら、労働力と経費が全く違う」

そしてこの笑顔です(再)❀(*´▽`*)❀
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「これでよかったどうかわからんけど、年を取ったら(枝物生産は)いいと思います」

和男さん、今日の午後のご予定は?
「ありません( •̤ᴗ•̤ )」

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枝物生産に転向してから、午後は毎日フリーなのだそうです。素晴らしすぎます、和男さん!花き生産において働き方改革、及びQOLの向上を実現されました。40余年、盆も正月もなく毎日仕事し続けてきましたから、お体が動くうちに人生を楽しみたいということでした✧(*´꒳`*ノノ゙✧パチパチ「ありません」と即答される和男さんの笑顔が印象的なのでした。

 

★2軒目、柳寿幸(やなぎ・ひさゆき)さん
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栽培面積:ハウス約400坪、露地400坪
品種数:グレビリア、ユーカリ、アカシア、メラレウカ、フェイジョアなど諸々併せて15品種ほど
グレビリアだけで8種類ほどあります。

きっかけは、「ユリ生産の閑散期に何か作りたいなと思ってね、日本農業新聞とかを読んでいたら枝物がよさそうだって思って作り始めたんだよ」

経営バランスとしてはオリエンタルユリ8:枝物1:クルクマ1(クルクマは、ユリが終わった後の夏場の仕事として)。

寿幸さんは、現在でもオリエンタルユリがメインですが、
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5年ほど前、部会に先駆け枝物生産を始めました。早かったのは寿幸さんですが、それを見て全面展開に切り替えたのが和男さんというわけです。

オリエンタルユリは主に地元の市場にご出荷、アカシアやグレビリア、ユーカリなどの枝物を大田花きにご出荷くださっています。

寿幸さんのところも、昨年7月の豪雨ですべて水没。メラレウカ、ピットスポラム、ウーリーブッシュ、グレビリアなど作付けいたものはほぼすべてダメになってしまったといいます。

くじけず植え直して現在こんな感じです。
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今秋から出荷可能なものありますので是非ご利用ください。
アカシアのフェニックスゴールド(露地)
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グレビリアのガウディチャウデイ(通称:ガウチャウ)
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グレビリアのアイバンホー
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グリーンが淡く、葉も細く、透明感があります。ハウス内でも外から横風が入り、ゆっくり涼しそうに風に揺られています。

グレビリアのピーチアンドクリーム
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生産圃場を拝見すると、和男さんと一見同じように見えますが、違うのは寿幸さんのところは地植えであるということ。
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和男さんのところでは、カーネーションの隔離ベンチ栽培をそのまま活用したスタイルでしたが、寿幸さんのメイン品目はオリエンタルユリなので、オリエンタルユリの圃場をそのまま活用しています。
いずれにしても、それぞれにこれまでの生産のバックグランドを生かして枝物生産に取り組んでいらっしゃるところがポイントです。

寿幸さんのところは露地でも栽培しています。
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春色の緑の中でひときわ生える赤はギョリュウバイ。
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こちらはマイクロワックス。ワックスフラワーの一種です。花よりも枝葉を出荷。
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アカシアのプルプレア
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「こういうのもだいたい生産者さんのところに行って買ってきたり、苗屋さんで買ってきたりね。この株で5年」

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っていうか、さきほどから株元にひしめく、大きめの焦げたマカロニのようなものが気になって仕方ないのですが、まさかマカロニではありませんよね??
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寿幸さん
「あ、これね、ユリよ。ユリ自体が吸収した肥料が土壌に還元されるように、細かくして置いておくんだよ」

ユリが吸収した分の肥料を再利用。枝物にはあえて肥料を与えることはないといいます。

「ちょっと肥料切れを起こしよるなと思ったけん、こうやってユリを裁断した破片を置いておく。これくらいで充分ちゃろって」

ほんとだ、まだ焦げていないマカロニ・・・じゃなくてフレッシュのユリのまま残っているがありました。
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ある意味ユリ街道Σ(・∀・;)

分解を待ってゴミになるところを有効活用。余計な肥料を使わなくて済みますし、ゴミも減ります。持続可能な農業生産への取り組みなのでした。

JAにじさんで枝物を生産出荷されているのは13名。うち、ハウスで作っているのは寿幸さんと和男さんのみ。さらに枝物・草花専業は和男さんのみ。専業を和男さん型、兼業を寿幸さん型とさせていただきましょう。にじさんの枝物生産者さんは今はほとんどが寿幸さん型です。

「兼業でやっているとメインの出荷があるけん、どうしても花が咲く枝物はきつい。(例えば)ミモザなどは、開花時期は手が付かないから、咲いていても出荷作業ができん」

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このようにメイン品目重視の場合、品目の選考基準も変わってきます。
試作品種はたくさんあるものの、寿幸さんが“おもしろそうだとアンテナが立つポイント”はなんですか。

「なんちょね?(=なんだろうね)
1.これ売れそやねちょか花に合わせやすいねちょか、おもしろそうって思うかどうか(ご自身の好みや直感)
2.花が付かない枝物で、メイン品種と繁忙期が重ならないこと(作業効率)
3.本数が切れるかどうか(生産性)
4.ドライになるかどうかも見るよ。お花屋さんはドライになったほうがよかったりするよね(2次的鑑賞性)
5.成長が早いもの!

成長が早いもの?
「もうある程度、年やけん(年をとってから枝物生産を始めたから)、植えて5年も10年もしないと切れないような枝物やったら、いつ切れるかわからん。ともかく植えて、早く成長して収穫できるものをあえて選ぶっちゃん」

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例えば、メラレウカはハウスの中で優に3メートルには伸びてしまうのだそうです。ハウスの天井近くになると、日照も強くなるし、温度も高くなりますが、そういう成長の早い枝物をあえて選んでいるのだそうです。和男さんも生産に適不適もすぐに見極めるとおっしゃっていましたし、短期決戦ですね。

「そ。出荷まで時間がかかる枝物はパス。ほかの産地にお願いして、自分たちでは定植からどんなに遅くても翌年には出荷できるものじゃないとね
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それでたどり着いたのがグレビリアや、ユーカリやアカシアというわけです。生産ノウハウは誰に教えてもらうわけでもなく、うきは市のこの寿幸さんのハウスと露地でどう作るか、毎年試行錯誤だそうです。

ということで、カーネーションから全面的に枝物草花生産に切り替えた柳さんと、従来のメイン品種を据え置きしつつ、枝物生産を取り入れた柳さん。スタイルは異なりますが、70歳を過ぎて益々新しい生産品目に果敢にチャレンジされるダブル柳さんの複合経営スタイルについてご紹介いたしました。

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さて、話は脱線しますが、和男さんのハウスのすぐ隣に広がるこの景色、何を生産していると思われますか?
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柑橘の台木生産なんです。

この地域は、柑橘系の台木生産の大産地。
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これらはあらゆる品種の柑橘栽培の台木を栽培されているそうです。台木は一種ですが、多品種の柑橘がこの台木に継がれて、生産されます。

いやはや、うきは市、すご!日頃お世話になっている柑橘類の生産の原点がここにあったとは。古くからの接ぎ木産業、植木産業の集積地であり、生活者にとってオージープランツの伝道師も市内やその周辺にいらして、うきは市の秘めたる高い可能性を感じずにはいられません。水資源が豊かで農業生産にも適して、すばらしいところですね。
とはいえ、この地域の災害は毎年の頭痛のタネ。線状降水帯に伴う大雨と筑後川の氾濫に生産者さんはいつも悩まされています。個人の生産者としての対策の域を超えていて、もはや行政を頼るしかありません。
日本トップクラスのカーネーションのために、大変なこととは存じますが、生産者さんのためにも、また日本国民の豊かな食卓や花き観賞文化のためにも、何卒災害対策のほどよろしくお願い致します。ウン探懇願!✽(*>ω<人)オネ

JAにじの生産者さんたち。今回は虹だけに7人の諦めない大人たちをご紹介いたしました。精鋭セブンチャレンジャーズです。70歳を過ぎて新しいことを始めたり、災害で積み上げてきたものを壊されても尚、諦めないうきはの生産者さんたち。そんらもうただ者ではありませんて。

 

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【JAにじ様枝物生産 ダブル柳さんの格言】
・子育ても終わって、体をいたわりつつ、自分の時間を持ってゆったり農業生産をしようと思ったら、毎日容赦なく咲いてくる花物ではなく、枝物や草花生産がお薦め。

・枝物草花の複合生産には、全面切り替えの和男さん型とメイン据え置きの寿幸さん型があります。
型によって品目を選ぶ基準が変わってきます。周年収穫できるものか、閑散期の仕事を補うように出荷できるものか、栽培品目をよく見極めるべし。結果が出るのは早い品目がおすすめよ~(⑉>ᴗ<ノノ゙✩:+✧︎

・それまで作っていた品目の栽培環境を生かして生産できるものに取り組むべし。ハウスやフラワーネットなどもそのまま利用。施肥や潅水は最小限にて。

人にも優しく環境配慮型の持続可能な農業生産を実現しているJAにじの生産者さまなのでした。

 

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文責・写真:ないとういくこ@大田花き花の生活研究所