かつては入学式に満開だった桜が、今や卒業式に満開を迎えるようになりました。前述の通り積算気温に反応する桜は、地球温暖化が進んでいる事実を静かに告げているように感じます。開花がこれ以上早まらぬよう、引き続き意識をもって営みを続けていきたいと思います。
さて、今回が本年度最後のコラムとなります。1年間お付き合いいただき、心より御礼申し上げます。ベテランの生産者でさえ「毎年一年生」と仰います。それだけ気象条件等が目まぐるしく変化する環境の中で、丹精込めて生産・出荷を続けてくださる皆さま、また生活者へ花を届けてくださる皆さまのおかげで、当社の事業は支えられております。筆者自身も、この一年で多くの学びと気づきを得ることができました。
この一年を振り返りますと、実に多くの出来事がありました。大阪万博が盛会のうちに閉幕し、日本を大いに盛り上げてくれました。次は2027年3月19日から始まるGREEN × EXPO 2027が控えています。花き業界の一員として、花や緑との共生、そして潤いや癒しをお届けできるよう、引き続き総力を挙げて取り組んでまいります。さらに、ドジャースのワールドシリーズ連覇と山本投手のMVP、ノーベル賞で坂口教授(生理学・医学賞)と北川教授(化学賞)のご受賞など、日本中が沸き立つ朗報がありました。また、AIは試験運用から“運用の基盤”へ移行した年と言っても良いかもしれません。
一方で、本年度は環境変化の厳しさを改めて実感する一年でもありました。世界ではイスラエル・ハマス停戦合意の行方やウクライナ情勢、中東緊張による原油高騰など、不透明感が続きました。各地で山火事や地震、洪水など自然災害も多発しました。国内でも、コメ価格の高騰やクマ被害の増加が取り上げられ、記録的猛暑や少雨、線状降水帯による豪雨など極端な気象も相次ぎました。ダム貯水率の低下など水資源への懸念も続き、従来の前提が揺らいだ一年であったと感じております。
花き業界においても、3月以降長期間にわたり市況の低迷が続きました。食品や生活必需品の価格上昇に加え、高温による需要減退など、厳しい環境にさらされました。一方で、輸入品の市場外流通が加速するなど、生産コストが高止まりする中、極めて変化の激しい一年であったと認識しております。
こうした一年の歩みを俯瞰いたしますと、外的要因によって計画どおりに物事が進まないことが“当たり前”になりつつあると感じております。不測の事態に直面するたびに、我々の想定がいかに限定的であったかを思い知らされる場面も少なくありません。重点産地が需要期に欠品を生じさせないため、「前倒し・適期・後ろ倒し」の3つの出荷ピークを準備する責任産地も有りますが、大きく前進開花したり、大きく開花遅延したり、その3つすべてが外れてしまう状況が現実に起きています。もはや従来の延長線上の対応だけでは不十分であり、異なる角度からの備えが求められていると認識しております。
では、こうした突発的な状況に対応し得る体制とはいかなるものか。現時点での一つの解としては、従前の業務運営を着実に推進しつつ、同時に多面的な仮説を構築し、それぞれに対する対応策を事前に準備しておくことが現実的ではないかと考えております。革新的なゲームチェンジ理論が突然降りてくることは少なく、高温・低温、物流寸断、生産量減少、需要減退、さらには少子高齢化による担い手不足など、想定し得る事象を広く捉え、各事案に応じた対策を検討する程度にとどまっています。また、小さくても具体的な着手を行い、対応を進められた事例はまだまだ数少ない状況です。
例えば天候異変による出荷の乱れを抑え、生活者にジャストインタイムで花や緑をお届けするための「貯蔵技術」の検討と実装は、重要な対策の一つであると認識しております。環境整備は着実に進みつつあり、今後は実運用を通じて課題を抽出し、改善を重ねながら定着を図っていく段階に入ってきたと捉えております。実際に稼働させて初めて見えてくる課題も多いと心得ておりますので、近視眼的な判断にとどまらず、中長期的視点も持ちながら引き続きチャレンジしてまいります。
また、ホルムズ海峡封鎖が継続した場合は原油価格がさらに上昇し、ガソリン価格が300円を超える可能性も示唆されています。こうした状況下で従業員と取引関係者を守り、生活者に花のある暮らしを届け続けるために、どのような備えをして、どこを目指し、何を優先すべきなのか――これらを取りまとめ、発信していくことが求められていると考えております。混迷を極める今こそ、逆に最大のチャンス到来タイミングかもしれぬと感じております。
まもなく新年度が始まります。本年度の経験を糧に、難局を乗り越える心の余裕と計画、そして何より強い信念をもって環境の良化を実現できるよう、全社一丸となって取り組んでまいります。引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
Canon EOS 6D MarkⅡ/24-70mm F2.8 DG OS HSM|Art017/ISO125/70mm/1ev/f5.6/1/160s
萩原 正臣 9:00
