さて、今回はPRとプロモーションについて触れたいと思います。昭和生まれの筆者は、先輩から仕事をマニュアル化して頂き、丁寧に教わった記憶はほとんどありません。「俺の背中を見て盗め」といった指導が当たり前で、質問しても「自分で考えろ!」。間違えれば叱られ、どうすれば良いのか悩む日々でした。厳しさが続きながら、時折ふわっと人間味あふれる温かい指導を頂くとジーンとしたりしますよね。それらの経験のおかげで“考える習慣”が身に付いたように思います。
当時は実績を出さなければ次の仕事が来ない時代でした。実績と同じくらい、「自分は何ができるのか」をPRする力も求められていました。能力開発の必要に迫られた結果、Excelなどの扱いは自画自賛ですがまずまずだったと思いますし、その分仕事も山のように回ってきました。もっとも、AI全盛の今となっては、そのアドバンテージも薄れていくことでしょうが。
周りを眺めていると、反復して徐々にコツをつかむ者、機転が利かず怒られ続ける者、求められている事が見えて先回りし、PR技術が発達し始める者など様々な人生模様を目の当たりにしてきました。人には器用・不器用、社交的・内向的といった様々な特性があります。何が良くて悪いかも、その時々で変化します。相手の気持ちを察する力が高く、上手に立ち回る人はいつの時代もいますし、逆に相手を逆撫でしてしまう人もいます。
先輩から「人は組織の一員であると同時に、個人商店でもある」と教わりました。配慮が利く、力持ち、花の知識が豊富、緻密な作業が得意など、まずは自分の能力を周囲に理解してもらうことがスタートラインであり、それがPRだと思います。産地も良い商品をPRし、生花店も自らの強みをPRして条件良く仕入れ、販売していました。
似た言葉にプロモーションがありますが、これはPRとは異なります。日本語では混在しがちですが、PRは広報、プロモーションは販促と表現できます。本来のPRはメディア対応やブランド、社会との関係づくりを指しますが、「自分を理解してもらう行為」という意味では日常の使われ方とも通じます。
一方プロモーションは、商品やサービスを販促する活動で、短期的に動かすことが目的です。筆者は以前、商品の機能や良さを生活者に具体的に伝える行為がプロモーションだと考えていました。しかし最近では、必ずしも機能説明だけがプロモーションの中心ではないと感じています。たとえば、某ハウスメーカーが一流俳優を起用し、怪獣から家を守るCMを展開しています。家の良さや価格帯はCMから想像つきませんが、シリーズCMが印象に残り、どうやら業績も急拡大しているようです。幼少期に怪獣と戦うヒーローを見て育った世代が、持ち家を検討する年代に重なることも狙いなのでしょう。インパクトが必要だった後発メーカーにとって、記憶に残るCMは大きな武器になったはずです。また、スローバラードの国民的ソングを使用したハウスメーカーのCMも、耳に残る心地よさがブランド選択に影響していると言えます。
このように、機能だけを伝えることがプロモーションではなく、“記憶に残ること”こそがプロモーションの中心ではないかと考えるようになりました。商品や産地や市場をPRする際、どのようなプロモーションを行い、マーケティングを行うべきなのか。マーケティングを調べると、印象に残すことは中心ファクターの一つですが、目指すべき手法はそれ以外にも複数あることが分かりました。
・想起性
思い浮かべた瞬間に最初に出てくるブランドになる。
・好意度向上
思い出されるだけでなく「好かれる」状態をつくる。
・差別化
商品自体を擬人化するなど、世界観やストーリーを持たせ、他社との違いを明確にする。
・象徴化
総選挙などで“象徴”をつくり、注目を集める。(チョコのお菓子等)
・文脈ずらし
本業以外の取り組みで新しい視点を持たせる。(高級車ディーラーがカフェを運営)
・参加型
SNS投票など、生活者が参加できる仕掛けをつくる。
・接触頻度アップ
SNSなどで触れる回数を増やし、認知を定着させる。
・用途理解の向上
印象勝負のCMでも商品価値や利便性・選ぶ理由も伝える
・長期資産化
キャラクターやシリーズ化、ナラティブで、長く蓄積するブランド価値を育てる。
先日、動画と字幕・歌がセットになったお花屋さんのプロモーションビデオを拝見しましたが、何と!AIが作ったというではないですか。大変驚きました。また、ラジオも非常に効果的だと利用している生産者から聞きました。SNSばかりに目が行きがちですが、マルチチャネルでの発信が求められる時代です。
良い商品をつくり、良い流通を整えることは原理原則として最も重要です。そのうえで、各社それぞれがどのように認知を高めていくか。特にB2Cは一層重要であり、こうした対策も今後一緒に強化していければ良いと思っております。
Canon EOS 6D MarkⅡ/24-70mm F2.8 DG OS HSM|Art017/ISO100/49mm/-1.7ev/f2.8/1/20s
萩原 正臣 9:00
