厳しい環境下でも、花のある暮らしを未来へつなぐために

経済
 何だかソワソワが止まりません。春の陽気が一晩で一変し、東京でもちらついていた雪が本降りとなって、東京23区も日曜の朝には屋根や路地裏、花壇や街路樹が綿帽子をかぶりました。交通にも若干の混乱が生じ、雪に対する弱さがまた露呈いたしました。激しい気温の変動に、心も体も順応するのが一苦労です。記録的な降雪で家屋の倒壊に苦しむ地域がある一方、雨が降らずダムの湖底が見えるほどの水不足地域もあり、2026年の気象は今年も正に大荒れです。

 先週5日には、「カーネーション生産者交流会」に参加いたしました。国や県、共選・個選、年齢や性別、役職の違いに関係なく、誰もが自由に意見交換できるフランクな場で、生産現場が抱える悩みや思いを率直に共有し、「皆で良くなろう」という前向きな意見が多く交わされました。
 筆者からは、花市場の立場から見えている現状と、あるべき姿についてお伝えするとともに、自身が課題と捉えている点や、今後注力していくべき方向性についても率直にお話ししました。そのうえで、持続可能なカーネーション生産を続けていくためには皆さまのお力添えが不可欠であること、そして生活者に花のある潤い豊かな暮らしを楽しんでいただくという共通の目的に向け、共に進んでいきたいという思いをお伝えしました。懇親会まで含め、非常に密度の濃い実りある時間を共有できたと感じています。

 会で申し上げた内容は、これまでの発言と変わりません。 まずは既存マーケットの花好き生活者に引き続き支持をいただくこと。そのうえで、気候変動下においても、求められるタイミングで、求められる品質・価格・バラエティを確保し、安定した流通を維持していくことが重要です。また、既存顧客のニーズを丁寧に把握し、無駄を省きながら生産者の損益を健全に保つことも欠かせません。他の花や他業界に需要を奪われないよう、ワンチームで行動変容を進めていく重要性についても触れました。
 加えて、これまであまり花を購入されていない層へのアプローチについていくつかの仮説を共有し、柔軟な発想で挑戦していくことをお願いしました。自らの経営を守りつつも、生活者・生花店・市場に選ばれる存在であり続けるためには、主語を「相手の価値観」に置く、すなわち相手の基準で発想する姿勢が重要であるとご説明いたしました。

 しかし、足元の厳しい環境だけにフォーカスすると、どうしても“できない理由”が前面に出てしまいます。もちろん、足元の課題解消は欠かせませんが、心の置き所として「生活者に花のある暮らしを楽しんでいただく」という視点で、その実現のために「今日、何をやり切るのか」という具体的な行動まで思考を引き下げることが大切ではないでしょうか。会を通じて厳しい現実を多く伺いましたが、何かを否定する意図は一切ありません。むしろ、一つでもより良くする努力を続けたいと、あらためて強く感じました。

 ここで改めて考えたいのは、【花き業界】が、【カーネーション】が、特別に厳しい状況にあるのか、という点です。決してそうではない実情があると筆者は考えております。多くの業界が共通して抱える最大の課題は「人材不足」です。とりわけ顕著なのが再開発や建設分野で、駅ビルの再開発や物流倉庫建設が延期・中止になる例が増えています。資材費の高騰、円安による輸入コスト増、人材の取り合いによる人件費上昇などが重なり、工期は長期化し、見積もりが時間とともに膨れ上がる事態があちこちで発生しています。見積有効期限切れの再計算で、当初の倍額になるケースも少なくありません。

 大田花きも開場から35年が経過し、各所で老朽化更新の時期を迎えています。同業他社の中には、建て替えを検討したものの建設費の上昇で断念した例もあります。再整備すれば市場使用料が大きく上がる場合もあり、生産量の減少・物流の混乱・人手不足・賃金上昇・利用者の利便性向上に資するシステム投資の必要性を考えると、積極経営を諦め事業縮小を選ぶ企業も少なくないようです。

 外的要因により大きな岐路に立たされる場面は今後さらに増えることでしょう。可処分所得に起因する消費マインド、為替・資材高、気象変動などさまざまな要素がありますが、我々は人に提供する商品・サービスに携わっており、その中心には常に「人」がいます。そして今、多くの企業にとって最大の課題となっているのが“人材の確保”であり、これは事業の存続を左右する深刻な問題となっています。事業は順調で黒字化が図れている企業でも、働き手を確保できず倒産に至るケースが年々増加している実態があります。

 冒頭記載した会議で、継続生産するために「もっと高く無いと続けられない!」といったコメントを数多く伺いました。その思いを改善するのが我々花市場の仕事であると捉えておりますが、そもそも作った商品を集荷する場がなかったら、換金する市場がなかったら、販売する花屋がなかったら、そもそも生産がなされなかったら──業界のどこか一つが欠けても成り立ちません。そんな身も蓋も無い事態に陥る前に、業界全体がゆったりと持続できる姿へ進化出来るよう、皆さまと共に実り多き努力を続けたいと強く考えております。

 先ずは市場が頑張らないと始まりません。各社前を向き、連携しながら、生産者や生花店の負託に応え、業界活性化の実現に向け注力して参りましょう。

Canon EOS 6D MarkⅡ/24-70mm F2.8 DG OS HSM|Art017/ISO800/48mm/0.3ev/f5/1/160s

萩原 正臣 9:00