靴はどうでしょうか。小中学生の頃を振り返ると、上履きを家に持ち帰ってタワシでゴシゴシ洗っていましたが、成長するにつれ、プライベートで履くスニーカーなどを洗った記憶がほとんどありません。小学校低学年の頃はスニーカーも洗っていたかもしれませんが、いつしか穴があくまで履き続け、履き潰したら買い替えるような生活習慣に。高校からは通学で革靴、私服ではスエードのブーツやスニーカー、バスケットシューズを履くようになり、なお一層、洗う習慣からは遠のいたように思います。若い頃のズボラさを振り返ると、今となっては少し恥ずかしい思い出です。
そんな筆者の転機は、たまたまYouTubeで見かけた靴磨き動画でした。上品なスーツに知的な眼鏡の職人が、心地よい笑顔をまとい、汚れた革靴をドンドン磨き上げて新品同様に生まれ変わらせていきます。そんな動画に魅了され、「よし!僕も革靴を磨いてみよう」と決心し、レジ横にあるクリーナーと靴墨を手に、自分の部屋でせっせと磨き始める趣味が始まりました。まだ若葉マークのビギナーですので、正直なところ作業工程が合っているのか半信半疑ではあります。それでも、ひと通り手入れを終えたあとには靴がしっかりと輝きを取り戻しており、その様子に毎回確かな満足感を得ています。靴磨きに挑戦しているうちに、磨いた靴の輝きがつい気になるようになり、気づけば周囲の方々の足元にも自然と目が向くようになりました。
恥ずかしついでに、スーツや靴と同様なことが、愛車についても言えます。昔の私は年に一度洗うかどうか。同僚から「萩原さん、車が可哀そう」とか「ホイール、何色でしたっけ?」と言われるほどでした。この点が解消されたのは、ひょんなことから巡り合ったディーラーで車を購入した時からです。そこでは手洗い洗車を何度でも無料で対応してくれるという太っ腹なサービスを展開しており、今では概ね月に一度お願いしています。
自動車販売は値引きが難しくなり、利益率も下がっていると聞きます。花や食品ほど頻繁に購入する商品でない事から同店はこのサービスを開始し、洗車だけのお願いでも嫌な顔をすることも無く、いつも「お飲み物はいかがですか」と気持ちよく迎えてくださり、30分後には愛車が見違えるほど綺麗になります。そのおかげで、気分よく運転する事が出来ております。
もちろん、狙いは顧客の囲い込みにあるのでしょう。しかし、採算が合っているのか?疑問でなりません。とはいえ、当然オイル交換をカー用品店で行うことも無く、こちらのディーラーにお願いします。何か追加で取り付ける際にもこちらのディーラーを利用します。次の車を考える時も恐らく同じディーラーで、同じ担当者を指名する事でしょう(同じ店・同じ店舗で2台お世話になりました)。
改めて思うのは、満足のかたちは一つではないということです。多様性の時代ゆえ、断定はできませんが、DXやAIが進展する今も、義理や人情が勝る瞬間は確かにあります。合理性を追求することも勿論あれば、人の温かみ、多少の不自由や遠回りがあっても、結果として心地よく、誠実に生きられる方を選択する場面もあると思います。合理性や利益率を上回るポイントは、「どれだけ相手を察し、寄り添えるか」。これこそが、これからますます重要になると強く感じています。
この多様性の時代に、顧客ロイヤリティを高めるために必要なのは、お客様の幸せと満足を中心に据えながら、仮説の精度を磨き、丁寧なコミュニケーションを多く積み重ねること。その積み重ねこそが、信頼を育て、選ばれ続ける理由になるのではないでしょうか。
革靴磨き、お勧めです!
萩原 正臣 9:00 
