花の価値と、人とのつながり

その他
 先週は移動も多く、盛り沢山のスケジュールとなりましたが、仕事の充実度を強く感じる一週間となりました。

 まずは秋田県です。最強寒波の襲来により往復の行程が危ぶまれる中ではありましたが、各地でインフラ麻痺が報じられる中、豪雪地帯である秋田県は時折青空がのぞくほど安定した天候で迎えてくれました。生産者と行政をつなぐ秋田県連絡協議会の第55回総会に出席し、総会後には講演の機会も頂戴しました。

 秋田県は夏秋期の流通を支える重要な産地であり、重点市場からも秋田県産花きへの多くの期待が寄せられました。昨年は猛暑や豪雨といった気象変動の影響を受け、ベテラン生産者の方々でさえ苦慮されたと率直なお話がありました。それでも「今年こそは良い商品を作り、生花店や消費者に喜んでもらいたい」と前向きな意気込みを語られる姿に、産地の底力を感じました。

 講演では、花の消費を支えてくださっている花好きのヘビーユーザーの皆さま(主に50~80代)に、引き続き花のある暮らしを楽しんでいただくためにも、適期適質による商品供給の重要性をお願いしました。一方で、既存顧客が従来どおり消費を続けてくださったとしても、生産コストが高止まりする現状では、所得確保は容易ではありません。生活者が多様な花を選び、豊かさを実感できる環境維持~拡大には、なお課題が残っていると感じています。

 そこで「花で国民に幸せな暮らしを提供する」という大きな目標を掲げ、その実現に何が不可欠なのかを切り口にお話ししました。花を飾る習慣のない方々にも花の効能や価値を知っていただき、暮らしや職場のさまざまな場面で花を活用することにより、企業価値の向上や従業員の生産性向上といった副次的効果が得られる――その理解と関心を広げることが重要ではないか。業界が一丸となって、日常的に花と縁遠い生活者にアプローチしていくことが必要であるとお伝えしました。

 人は、モノそのものを手に入れるためではなく、その先にある体験や状態を得るためにお金を支出します。例えば「旅行に行く」とは、もちろん、移動そのものを楽しむこともあると思いますが、それだけでなく、訪問先の景色や食事、人との再会など、移動の先に目的があるからこそ支出が生まれます。同様に「パソコンを買う」場合も、機械そのものを所有したいのではなく、情報収集や資料作成、分析といった行為を通じて、やりたいことを実現するために購入します。「フランス料理を食べに行く」ことも、空腹を満たすだけでなく、雰囲気やサービスを含めた時間を共有し、記念日を祝ったり、商談を円滑に進めるなど、望む状態に近づく価値があると考えています。 つまり、「なりたい自分になるために、生活者はお金を支出する」ということです。

 年齢や家族構成、収入、趣味によってもニーズは異なります。一般論ではありますが、20代は興味関心への積極的支出、30代は機能や効能が合致した場合の選択的支出、40代以降は家族とのイベントやお子さんへの投資を重視する傾向が見られます。こうした違いを理解し、花を通じて「なりたい自分になれる」と感じていただければ、これまで花に縁のなかった方々にも、一輪を食卓に飾って頂ける場面が増えていくのではないでしょうか。

 花の価値を伝えるには、伝え方や利用シーン、世代ごとの嗜好などを具体的に想定しながら整理していく必要があります。裾野を広げること以上に、誰にどのように提案するかを明確にすることが重要だとお伝えしました。

 もう一つ重要な点として、足元の課題からではなく、最上段の目標から逆算して考えることの大切さをお伝えしました。まず「国民に幸せな暮らしを提供するには何が必要か」という問いから思考を始め、最終的に、コストが高止まりする中で持続的な生産や販売をどう実現するのかへと落とし込んでいく考え方です。一方、「コストが上がっている分価格をどう上げるか」といった足元の議論から始めてしまうと、出来ない理由ばかりが先に立ち、思考は行き詰まりがちになります。だからこそ、大きな目標を先に掲げ、そこから足元へ考えを降ろしていく姿勢が重要だとご説明させて頂きました。

Apple iPhone 16/メインカメラ26mm f1.6/ISO50/26mm/0ev/f1.6/1/1155s
秋田県にて

 続いて週末は、秋田から羽田を経由して香川へ移動しました。大田花きOBで就農された元社員がこのたび結婚され、前夜祭ならびに披露宴に出席し、僭越ながら祝辞を述べさせていただきました。今どきでは珍しい150名規模の盛大な披露宴で、終始和やかで温かな雰囲気に包まれた宴となりました。笑顔の大変似合う新郎は、素敵な新婦を射止め、多くの方々に祝福される姿が印象的でした。交友関係も非常に広く、香川県内や四国はもとより、日本全国から業界関係者が集まり、新婦のご友人も多数駆けつけるなど、長時間の披露宴もあっという間に感じられました。チャペルでの誓いの場では、新郎新婦が人生を共に歩む約束を結び、その様子を見守るご親族の安堵と笑顔が大変印象的でした。素晴らしい瞬間を共有させていただき、思わず目頭が熱くなりました。

 前夜祭から披露宴、二次会まで、新郎新婦を祝福するためだけに集まった人々が、昔話に花を咲かせ、笑顔と笑い声が絶えない時間となりました。本番を控えた前夜でありながら、高松の夜はいつまでも賑やかで、人の温もりに満ちていました。

 人のつながりの大切さ、そして日々のコミュニケーションの積み重ねが信頼や縁を育むことを、改めて実感しました。父上の世代から新郎の世代まで、老若男女が人を呼び、輪が広がっていく様子は、まさにコミュニティの力そのものです。相手の思いに寄り添い、誠実に向き合い続けることが、人との縁につながっていく――そんな大切な学びを得た時間でもありました。新郎新婦には、末永く幸せな家庭と人生を歩まれることを心より願っています。おめでとう!

Apple iPhone 16/超広角カメラ13mm f2.2/ISO320/20mm/0ev/f2.2/1/60s
香川の結婚式にて

萩原 正臣 9:00