コロナ禍を経験して我々の生活は一変しました。「リモートワーク」の普及は物理的距離をデジタルで解消し、今回も庄内の会場と羽田空港を結んでいただきました。流石にリモートでの賞状授与は諦め、60分の講演に臨みましたが、参加者の表情が見えず、盛り上がっているのか、分かりやすいのか、楽しんでいただけているのか、講演者として手応えを感じられないまま講演を終えました。改めてリアクションやコミュニケーションの大切さを痛感しました。
その後、事務局に再チャレンジを相談し、快諾いただいたので再搭乗。講演はリモートで終えましたが、どうしても皆さんと直接お話ししたく、懇親会だけでもご一緒できるよう庄内へ向かいました。今回は2回目のトライで着陸することに成功し、同じ境遇の方々と機内で拍手喝采と歓声が上がったことは言うまでもありません。達成感に包まれながら、ようやく庄内に到着し、懇親会で皆さんと顔を合わせることができました。やはり、文書やメールではなく、リアルタイムで意見を交わし、思いを共有することが何より大切だと実感しました。伺えて本当に良かったです。事務局の方には二度もお迎えいただき、心より御礼申し上げます。
さて、講演では3つの柱でお話ししました。
1つ目は需要拡大について。需要の見える化が進めば計画生産で安定流通が可能になります。減少する生産量に歯止めをかけるには消費拡大が不可欠。人生のライフステージに応じて花の消費ニーズは変わります。20代は自分の欲求に対して消費し、30代は子育てで節約志向が強まりますが、機能や効能といった価値を訴求できれば花を取り入れていただけます。40代になると家族イベントで花の需要が増えるなど、年代ごとの変化を踏まえたPRが重要です。 また、花好きのヘビーユーザーには期待に応える商品構成を維持すれば一定の消費が見込めます。一方、購入頻度の低い方には、花の機能的側面をエビデンスとともに伝える工夫が必要です。例えば、花を飾ることでストレスが減り、副交感神経が優位になるといった研究があります。こうした情報をわかりやすく伝えることで、花の力でより豊かな生活を提案できると考えています。
2つ目は「目標設定と実行」について。現状を改善し、より良い未来を手に入れたいと誰もが考えますが、実際には個人だけで解決できない課題が多くあります。弊社は生花市場で、生産者と生花店の間に位置していますが、流通単価が上がれば生産者は収入が増え満足される一方、生花店は仕入れ原価が上がり経営を圧迫します。このように、業界には常にトレードオフの関係が想定され、さらに、生産コストが高止まりする中、単価を上げなければ継続生産が難しいという声が強まっています。しかし、店頭の売れ行きは鈍化しがちで、単価を出すことが難しい。結果として「継続生産は難しい」という短絡的な発想に陥りやすいのが現状です。
そこで講演では、大田花きが掲げる企業の存在理由「世界を花で笑顔にする」を紹介しました。究極の目標(長期目標)は『国民に幸せな暮らしを提供する』こと。そのために『消費拡大と生産拡大』を全体目標(中期目標)とし、さらに短期目標として【消費を拡大する】【生産を拡大する】【能力の高い従業員を育成する】という具体的なプロジェクトを実行しています。
近視眼的な足元の現実から将来の大きな目標を考えようとすると、出来ない理由や ネガティブな課題が次々と噴き出すのが常です。一方で、「そうなったら良いよね」と誰もが前向きになれる大きな到達点を、まず強く意識することが重要です。そのうえで、その実現に何が不可欠なのかを一つずつブレークダウンしていくと、意外にも突破口が見えてくるものです。
この点については、遅れて訪れた庄内での懇親会でも「確かにそうだよな!」という声が上がり、明るい未来を意識して取り組もうという前向きな意見交換が出来ました。
最後に、生活者は花そのものを買いたいのではなく、その商品を通じて「なりたい未来」を手に入れたいということをお伝えしました。例えば、生活者は優60cmの八重フリンジ40本入りのトルコ白系品種を購入したい、満足したいというわけではなく、その商品やサービスを利用して理想の状態を実現したいと考え、売買が成立していくのです。
壁紙に合うゴージャスなお花で映える写真をSNSにアップして肯定欲求を満たしたい、ということもあるでしょうし、値段の分かりにくい贈答用の花束でお世話になっている方へプレゼントし、喜ぶ笑顔が見たいということもあるでしょう。使い方や捉え方はユーザーそれぞれですが、「こうなりたい」という状態を実現するために、花き業界や生花店としてB2Cサービスで何ができるのかを感じ取っていくことが何より大切だと考えております。
生鮮食料品花きを扱う我々は、作るにも天候・売るにも天候という難しさがあります。工業製品とは異なる課題がありますが、各業界はマーケティングを徹底し、売れる商品づくりを進めています。花き業界は心を癒す業界であり、唯一無二の「これでなければならない」という限定的なアイテムは少ないため、逆に提案力次第で市場をもっと広げることができると考えております。
こうした話を講演でお伝えした後、懇親会では地元ならではの話題で盛り上がりました。気象変動で山形のサクランボ代表品種「佐藤錦」が高温の影響で生産しづらくなっていることや、熊谷園芸様がリンドウで農林水産大臣賞を受賞した快挙(なんと4度目!)など、話題は尽きず、山形の夜は熱気に包まれていました。
Canon EOS 6D MarkⅡ/24-70mm F2.8 DG OS HSM|Art017/ISO12800/27mm/3ev/f5.6/1/30s
萩原 正臣 11:28
