アナログとデジタル

その他
 本日はクリスマス・イブ♪信仰心の薄い筆者ではありますが、お祭りやイベントは良いものですね。街がイルミネーションに彩られ、世間の熱気に身を委ねるのも大切なことだと感じます。群集心理というほど大げさな話ではありませんが、同じ思いを共有したくなる気持ちはよく分かります。テクノロジーの発達により、幼少期のイルミネーションと比べても、今の美しさは段違いです。Tokyo Walkerを片手に出かけていた学生時代が、懐かしく思い出されます。

 進化することは本当に素晴らしいことです。AIなどはその最たるもので、かつては長時間を要した作業や思考の整理が、今では比較的短時間で誰もが行えるようになりました。ChatGPTやCopilotのように、無料で利用できるAIサービスも少なくありません。また、情報漏洩リスクを考慮しながらも、企業が蓄積してきたビッグデータを内部利用し、将来予測や単純作業の定型化を進められるBI(Business Intelligence)ツールも、業務効率化に大きく寄与しています。

 一方で、特にフリーで使える便利ツールには情報漏洩などのリスクも伴います。また、実際には進化させる事に多額のコストが発生しており、企業は先見性を見据えて顧客を囲い込み、信頼度を高めたうえで、さらなる付加価値をもったサービスを提供し、持続的に回収し続けるビジネスモデルが多いのが現実です。もちろん、利用者はサービスの恩恵を感じながら利用するため、年々高まる利用料に止む無しな面もあるでしょう。利用コストと得られるメリットを冷静に比較し、「経費対効果が最適か?」を自問しながら歩みを進める姿勢が重要だと思います。

 筆者が若い頃は、ブラウン管が大きくせり出した白黒テレビを見ていました。チャンネルはダイヤル式で、調子が悪くなると紙を挟んで調整したものです。電話も黒電話であったし、スマホや携帯電話、さらにポケベルの前には、改札口の掲示板で友達へ連絡を伝える手法を使っておりました。更に交通系ICカードは存在せず、改札口で腱鞘炎が心配な駅員さんが紙の切符を華麗な指さばきで入鋏してくれていました。今振り返ると実に懐かしく、温かい気持ちに包まれます。

 アナログにはアナログの良さがありますが、処理量について今と昔では桁違いです。現在の若手は、生まれた時からスマートフォンのある環境で育ってきました。また、AI(人工知能)も産業として右肩上がりに発展しており、適切な投資が伴えば劇的な効率化につながることは間違いありません。

 ただし、ここで考えなければならない弊害もあります。例えば、入社間もない社員に「今解決すべき課題は何だと思う?」と問いかけた場合、AI世代は自然とAIに答えを求めるかもしれません。理路整然とまとめられたレポートは一見素晴らしく映りますが、経験の浅い社員が、手元に生成された結果を自身の思考としても充分理解浸透させる事が出来るのか?改善するために示された業界の改善策を実行する行程をイメージ出来るのか?エッセンスとして気づきを与えてくれた事柄をベースに、自身の言葉や思考として整理し、実現可能なプランにまで整え直す事が出来るのか?といったところの心配が募ります。

 便利で効果的なツールも、使い方を誤れば空洞化を招く——筆者はその点に強い危機感を覚えています。どちらかと言えば、進化を続けるツールの利用に対し筆者は肯定派でありますが、諸刃の剣であるとも認識しております。具体的には、中間管理職や経営層の労力拡大・過重労働・求められるクォリティーが飛躍的に高まっていくのではないでしょうか。前述の通り、経験する事が重要であり、経験をもとに人は判断が行えるようになると個人的には理解しております。ロジックがどれほど優れていても、行動や結果が伴わなければ、実現に向けた伴走支援を上司が担うことになります。サービスを提供し、利益を頂戴して、実行した従業員に対価を分配する。机上の空論でのロジックは素晴らしいが、実行する事が出来ず、軌道修正も出来ず、報連相も出来ず、お取引先から託される事が出来ない状態ではあるが、AIで素晴らしい回答を導き出す事が出来る社員のみが増殖してしまっては本末転倒です。そうならぬように、恐らく今後とも中間管理職の業務負荷は高まり続けてしまう事が充分想定できると、筆者は考えております。変に昭和気質を正当化するつもりもありませんが、現場が大切である見解をお伝えしたいと思います。

 もう一つ重要なことは、AI活用において重要なことは「プロンプト」、すなわち問いの質だということです。適切な問いをAIと共有できれば、合理的な回答を引き出すことも可能でしょう。しかし考える力(その大元は経験)を下積み時代に鍛えることが不可欠であり、経験値が低下しない運用ルールを整えつつ合理的ツールを活用することが重要であると筆者は考えています。

 世間では、AI導入によって中間管理職の課題がむしろ増大したと言われています。運用ルールを整えれば回避できる場合もありますが、共生がうまくいかなければ、経験値の量や質が将来にかけて低下します。AI環境で育ったメンバーが“真実の瞬間”を共有できずに中枢へ進んだ場合、生産者や実需者、生活者の気持ちに寄り添った的確な軌道修正が困難になる時代が訪れるかもしれません。

 思いもよらない素晴らしいアイディアが示されたとき、想像すら出来ない我々が、最良のオペレーションを図れるでしょうか。理解浸透や具体的施策を伴わせながら、AIとの最適な共生を目指すべきだと思います。

 現物主義。生の花や緑に触れ、アナログの良さを今後も広めるために、デジタルとアナログの融合を進めて参ります。

Canon EOS 6D MarkⅡ/24-70mm F2.8 DG OS HSM|Art017/ISO12800/30mm/0ev/f5/1/60s

萩原 正臣 9:00