今回はカーネーション生産者組織の反省会で講演を依頼され、1時間の講演と質疑応答を通じて、現在の実態と今後の取り組みについてディスカッションを行いました。また、反省会前には生産者圃場を訪れ、園主とともに定植直後の生育を赤色LEDライトの下で確認しながら、近年の状況について意見交換も実施しました。近年の高温推移を受け、定植時期を遅らせて8月盆・9月彼岸に備えておられましたが、前進開花対策を施しても、本年は春先から慢性的に高温が続き、暑熱対策も奏功せず、結果として1カ月半も開花が前進して需要期を外した出荷になってしまったと、肩を落としておられました。本州同様に燃油は115円/L程度、苗代も筆者が担当していた時代から比べて1.5倍以上に高騰。春先からの軟調市況も重なり、吸収しきれぬコストに前進すべきか?後退を選択するか?栽培管理しながら思い悩む日々を送っているとのことでした。
それでも園主は、悩みながらも「前進」を選択。「緩くないけれど、このハウスと同じ簡易ハウスを新たに3棟建てることにした。この形状は風の抜けが良く、普通は外気温より高くなるハウス内が、左下から風が入り、右上から熱せられた空気が抜けていく構造で、理論上は露地と同じ温度で栽培できるんだ」と、熱意と理論、そして投資判断をお伺いいたしました。
攻めると決めても、思いだけでは乗り越えられないコスト増があるのは周知の事実です。だからこそ「どこを目指し、何を供給するべきか」を、ご一緒に、入念に議論させていただきました。生産者・市場・生花店がワンチームとなり、持続可能な花き業界を築き、生活者へ花のある暮らしを提供していくことが何より重要であると、私自身も改めて再認識した次第です。
講演では、花き業界を取り巻く環境や生活者の実態を説明しつつ、品種や販売手法などの条件はありながらも、あらためて原点回帰をお願いしました。すなわち「品質・日持ち・ボリューム感」を確保し、生花店にも生活者にも喜ばれる生産・出荷を中心に据えていただきたいということです。
こうした現場での取り組みと並行して、流通側である私どもも情報発信の在り方を見直す必要があります。その一環として、近々、大田花きでもSNS研修をしっかり実施し、業界内で止まりがちだった情報発信から脱却していきたいと考えています。花が生活空間に彩りを与え、癒しや従業員の生産性向上に寄与するストーリーを生活者や企業に向けて伝えていくこと——これは花き業界に携わる全てのメンバーが取り組むべきことです。エッセンスを提供できる段階になりましたら改めてご報告し、ご協力をお願いしたいと思います。
今回の反省会・講演会で強く感じたのは、「机上の空論では何も始まらない」ということです。仮説・分析・検証を繰り返し、挽回策を講じていくことはもちろん大切ですが、個人で悩んでいても限界があります。仲間や取引先、関係者や生活者との対話を通じて見えてくるものが沢山あります。今回の会議前と、双方向の対話を実施した会議後とでは、表情も、方策も、解決すべき課題もピントが合い、実感を伴ったものになった——それを今回強く感じました(筆者自身も、より具体性をもって帰社後に担当へ説明できると実感できました)。
さて、翌朝は外気温が氷点下となり、路面はあちこち凍結(革靴ツルツル)状態。不運は予告なく訪れるものです。何度も函館へ来ているのに五稜郭へ足を運んだことがなく、ホテルから10分ほどでしたので、雪化粧の街並みをコラム用に撮影しつつ散策しました。文末の写真「錦木」がアントシアニンのおかげで真っ赤に色づき、北海道らしい素晴らしい朝を迎えた——はずでした。
五稜郭のお濠に着くと白鳥が優雅に浮かんでいるではありませんか。これは絶好のシャッターチャンス!と望遠レンズに付け替えた瞬間、「な、な、なんとっ!」手を滑らせてレンズをお濠に落下させてしまいました……。何たる不手際、何たる不運。悔やみきれぬ失態です。しかしそれを社員に話すと「レンズが社長の身代わりになって、災難を引き受けてくれたんですよ」と声をかけられ、何と慈愛に満ちた視点だろうかと、うろたえた自分を恥ずかしく思った一瞬でありました。
健康第一、細部に気を配り、誠実に生きるべし。因果応報と自らに言い聞かせ、きっとこれから良いことがあると前向きに受け止めた出来事でした。
これから師(僧侶)が走り回るほど忙しい「師走」を迎えます。筆者のようなケアレスミスでガッカリしないためにも、「段取り八分、仕事二分」。どうか心に余裕をもって年の瀬をお迎えくださいませ。
Canon EOS 6D MarkⅡ/SP AF 28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A09)/ISO640/67mm/0ev/f2.8/1/160s
萩原 正臣 9:00
