需要創出

花き業界
 先週末、JA愛知みなみ・輪菊部会 Team STAR の全体会議に出席した。弊社と同産地とは古くからの取引関係があり、重要な産地の一つと認識している。こう書くと「大田花きは共選主体で個選を軽視している」との批判を受けることがあるが、そうした指摘は全く的外れである。共選か個選かを議論すること自体が本質ではない。重要なことは、生産者が再生産に見合った価格を確保でき、翌年以降も安定して生産を続けられる環境が整っているかどうか、そして消費者が変化する生活様式の中でも花のある豊かな暮らしを楽しめるかどうかだ。この“ジグソーパズル”を完成させるには、国内外の多様な生産者と、単なる売買関係を超えて取り組みのレベルまで昇華させ、コミュニケーションと目標の共有化を図ることである。もちろん、種苗会社や輸送業者など関係各所との連携も欠かせない。

 生産者には大規模な法人もあれば、共選で高品質を追求する者もいる。また、共選だけでなく個選によって特色を打ち出す産地も存在する。産地や生産規模の違いにかかわらず、生産現場と消費現場の実態を誠実に把握し、双方にとって必要な取り組みを建設的に推進していくことが肝要である。

 さて、話を戻すと、JA愛知みなみは花き生産で年間売上 200 億円を超えるが、そのような産地は他に類を見ない。良い時も悪い時も真っ先に名前が挙がり、批判や比較の的となることは想像に難くない。弊社もまた花き卸売会社として似た立場にある。「言われているうちが華」であると受け止めつつ、むしろ業界を先導し、感謝される存在を志したいと考えている。高難度の仕事に誇りとやりがい持って歩み続ける所存である。

 筆者は平成8年に大田花きへ入社し、カーネーション・トルコギキョウをはじめとする花きに携わってきた。その後、管理職となり九州大田花き出向となるなど、JA愛知みなみとの直接的な接点が限られていた期間も長い。しかし、磯村・小杉らをはじめとする歴代の担当者、そして現在は田中率いる商品ユニット(産地営業部隊)が中心となって、集荷・販売のコーディネートを推進している。私自身も今年より頻繁にJA愛知みなみを往訪し、担当者が対応できない役割を補完することで、バックアップ体制を強化していきたいと考えている。

 今回の全体会議は白輪菊の団体主催のもので、活発な意見交換が交わされた。高齢のベテラン生産者もおられるが、他県・他産地と比しても若手が多く、勢いを感じさせる部会であると真っ先に実感した。冒頭、JA からは葬儀形態の変化により菊の使用本数が減少しているとのコメントがあった。自らに都合のいい情報だけを扱うのではなく、現実を直視し、抱える課題を抽出し、改善に向けた前向きな議論が行われた。

 年間需要量に対して供給量が不足しているという話も聞いている。特に不足時期には高コスト(加温期)となり、経費と流通単価のバランスが崩れやすい。筆者が入社した当時、重油価格は約 35 円/L 程度であったが、現在は約 115 円/L にまで上昇している。仮に流通単価もコストに比例して 3.2 倍となっていれば問題ないが、食料品とは異なり花きは高くなってもまだまだ1~2割程度にとどまっている。

 不足する時期があれば、一方で需要が乏しい時に供給量が増加するタイミングもある。このような時に、ピンポイントで需要創出が出来ないか。この課題への取組みの一環として、大田花きではYouTubeにて情報発信をスタートさせた。第一弾は「Z世代と考える!白菊の新しい使い方」と題し、白菊と秋の花々との親和性をテーマに発信。まずまずの反響を得ている。四季それぞれに新たな、とりわけ白菊に焦点を当てた需要創出活動を推進したいと考えている。

 消費の中心は、団塊ジュニア世代からミレニアル世代(1980~90年代前半生まれ)、さらには Z 世代(1995~2010 年代生まれ)へと移行しつつある。彼らには「白菊=葬儀・仏事」の既成概念が薄い場合が多く、純白で誠実な印象を受ける。さらには環境への配慮に関心のある方が多いことから、日持ちの良い白菊をPR 方法を精査して展開すれば、新しい需要の形を定着させることが出来るのではないか。このようにイメージして取り組みを始めたところである。全体会議、並びに会議後の懇親会では、夜遅くまで多くの関係者と意見交換を重ね、多くのヒントを得た。今後も協議検討を重ね、明確な通過点目標を共有し、一歩一歩達成していきたい。

 会議の翌日には、菊・SP 菊・グロリオサ・アルストロメリア・トルコギキョウ・スイトピー・ピンポン菊の圃場を巡り、部会のこだわりや育種の難しさ、夏場の冷房設備に伴う消費電力の増大など、多くの課題を実感した。話せば話すほど課題が重なっていたが、解決すべき点も確認できた濃密な一泊二日であった。

 国民の豊かな生活を支えるところに、業界の原点があると筆者は考えている。需要者が求めるものを提供することが最短距離であると同時に、プッシュ型による需要提案も不可欠である。また、持続可能な花き生産の実現と所得確保は両立させるべき課題であり、それらを共有化した “ワンチーム” で歩みを進めたい。

 腕力があることが強さではない。進化し続けることこそが真の強さである。生産者とご一緒に、進化・成長を続けていきたいと思う。

Canon EOS 6D MarkⅡ/SP AF 28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A09)/ISO100/47mm/1.7ev/f2.8/1/200s(撮影:福岡県 舞能ノ浜にて)

萩原 正臣 9:00