先日、花き関連メーカーの方との意見交換を行った。製品の堅実な供給姿勢に安心する一方で、次の成長のためには視点の転換も必要だと再認識した。若手社員の発想が生かされる職場づくりは、新たなビジネスの突破口にもなり得る。 また、彼岸の本来の意味を大切にしつつも、「感謝やつながりを見つめ直す一週間」として花を提案することは、今の暮らしに合った訴求になるのではないか。販促資材の表現についても、仏事に寄りすぎず、多様な価値観に寄り添った内容への刷新していくことも1つの策だろう。全国の生花店や関係者がご努力して、フラワーバレンタインを一定の定番イベントに昇華されたように、花の文化で1年を繋げ、イベントの連鎖を実現していきたい。
さて、先日、非常に興味深い記事を読んだので紹介したい。それは、当社の社外取締役による連載記事であり、「渋滞学」の創始者である東京大学・西成活裕教授との対談内容である。社外取締役は物流業界に精通しており、まさに我々の業務とも親和性の高い内容であった。
なぜアリは渋滞しないのか?
西成教授は、渋滞や物流の根本的課題を「全体最適」の視点から読み解くことが重要であると語っている。中でも印象的だったのは、「アリは渋滞しない」という研究成果であった。教授によれば、アリは約体長1匹分の「アリ間距離」を保って行進するため、どれだけ長い行列でも渋滞が発生しないという。この発見は世界的な反響を呼び、自然科学のトップジャーナルにも掲載された。
一方で、人間は車間距離を詰めすぎる傾向にあるため、「メタ安定」と呼ばれる、不安定ではないのだが、条件次第ですぐ崩れてしまう状態で高速道路を走行している。この状態では、前方車両がわずかに減速しただけでも後続が次々にブレーキを踏み、最終的に長い渋滞が発生する。教授はこれを「メタ安定型」渋滞と呼んでいる。
実験によると、車間距離を詰めた状態では先頭車の軽いブレーキ操作が最後尾に伝播し、長い渋滞が発生することが確認された。一方、途中に「吸収車」として車間距離にゆとりを持たせた車を1台挟むと、同じ状況でも渋滞は発生しなかった。これが「科学的ゆとり」の有効性であり、教授はこれを物流や経営にも応用すべきだと提言している。
筆者も日常的に車を運転するが、高速道路を走っていると事故でもないのに突然渋滞が始まり、一定距離をノロノロ運転していたかと思うと、ある地点から途端に流れ始める事をよく経験する。いつも不思議で仕方なかったが、実は内的要因から「メタ安定型」渋滞が発生しているという事であったのだ。例えば海老名サービスエリア付近や小仏トンネルなど渋滞の名所でも、全ドライバーが車間距離を適切に保ち不要なブレーキを減らし、最適な加速を行えば、ストレスのない快適な走行が実現できるかもしれない。
この記事を読みながら、市場内での荷受けから搬出までの一連の作業に思いを巡らせた。いくつかの作業ステージがあるのだが、これまではボトルネックのみに着目していた。限られたスペースで効率を追求するあまり、各セクションでは部分最適で業務を考えていたのではないか。「ボトルネック渋滞」ではなく「メタ安定型渋滞」を考えた場合、「科学的ゆとり」がないとかえって全体の遅延を招くことがあるのではないだろうかという気付きである。とは言え、荷物の到着から搬出までの時間的余裕はあまりにも少ない。2024年の物流問題から、荷待ち荷下ろしはスピーディに行いたい。荷受けから後ろの工程を同スピードで処理していける環境構築と、多少渋滞しても吸収できるゆとりの設計が必要である。この俯瞰的に全体最適を考える必要性を強く感じた。この考え方は営業活動や人材採用、計画立案にも応用可能である。
営業活動においても、短期での売り上げ目標があるが、それに関わる業務比率はたとえば80%とし、20%は別のことを考えるなどはどうだろうか。ゆとりがなければ、気候変動や不安定な状況化で目標は即未達となるが、ゆとりの20%に商機が出てくるかもしれない。このような「科学的ゆとり」を持つ計画設計が、不確実性の高い現代における現実的な対応ではないだろうか。

Canon EOS 6D MarkⅡ/EF75-300mm f4-5.6 USM/ISO3200/300mm/0.3ev/f5.6/1/125s
萩原 正臣 9:02