記録的な猛暑が続き、40℃を超える気温が連日報道されている。お盆向け需要に対応する花き業界では、高温による生育停止が各地・各品目で懸念され、出荷タイミングの遅れが問題となりつつある。気象庁が発表する全国の最高気温ランキングにおいても、上位20地点すべてが40℃超であり、1位は去る7月30日に兵庫県柏原で観測された41.2℃。20位でも40.4℃(三重県桑名ほか)と、数字を見るだけで喉が渇いてくるような暑さである。さらに注目すべきは、これら上位20地点のうち80%が直近10年間に記録されたものであり、地球の温暖化—いや、「沸騰化」とも言うべき現象が、加速度的に進行している実態を物語っている。
また、トカラ列島における火山性地震の発生に加え、カムチャツカ半島ではマグニチュード8.7の巨大地震が発生。日本全域に津波警報・注意報が発令され、北海道から本州にかけてインフラが混乱、一部の商品が配送不能に陥るなどの影響が出た。幸いにも人的被害は報告されていないが、自然環境の変調は世界的な規模でその振幅を拡大しており、中国北部や北京周辺では豪雨・洪水の被害も報告されている。 こうした日々を通じ、あらためて人間の非力さ、そして自然の圧倒的な力を痛感するばかりである。我々にできることは限られているが、その「できること」から速やかに、そして誠実に取り組む姿勢こそが、未来への責任だと信じている。
さて、少々話題を転じたい。
先述の猛暑は、花き業界における生産面だけでなく、消費面にも大きな影響を及ぼしている。現在、日本の総世帯数は約5,400万(2024年推計)であり、そのうち共働き世帯は約1,200万(2023年時点)を占める。こうした家庭において仮に切花を購入いただいたとしても、外出から帰宅するまでの時間で花瓶の水が「お湯」になる現実は、容易に想像できる。お湯での鑑賞を推奨できる植物は存在せず、エアコンをつけっぱなしでの外出を推奨することもまた、現実的ではない。
そこで、筆者特有の行き当たりばったりな発想ではあるが、「花瓶を冷やせば、花が長持ちするのではないか?」という仮説に至った。
市販されている卓上の保冷・保温プレート(マグカップを冷やす機器)を活用できないかと思い立ち、実験を開始。付属カップに水を注ぎ温度を測定したところ、13.5℃程度まで冷却できることが確認できた(類似製品は非常に多く、性能差は要調査である)。
現時点では仮説段階であるため断定は避けるが、今後はこの冷却器に対応するサイズの花瓶を用意し、常温水との比較実験を行う予定である。筆者の卓上ラボでの検証結果が得られ次第、あらためてご報告したい。
もしこの試みに手応えが得られたなら、生花店でも生活者に提案できる仕様を、メーカーと連携しながら具体化していきたい。日持ち性、水質悪化、腐敗、廃棄の手間など、家庭での切花利用に伴う障壁を少しでも下げることで、花のある暮らしの裾野を広げられるのではないかと考えている。
連日の酷暑、慌ただしく乾いた日常の中で、花は静かに、確かに、心に潤いを与えてくれる存在である。その存在感を一層際立たせるためにも、手に取りやすく、扱いやすい仕組みの整備が求められている。小さなチャレンジを進め、 一定の方向性が見えてくれば、サプライチェーン上の業界関係者と連携しながら業界環境の良化に向け進めていきたい。
筆者が在住する東京都大田区大森には、ものづくりに秀でた町工場が数多く存在する。下町ボブスレーでも知られるこの地に集積する企業群と連携し、弊社グループの「大田花き花の生活研究所」、営業本部内の「品質カイゼン室」、「開発ユニット」などと協働しながら、生活者の負託に応え、生産者・生花店双方の支援に資する事業を進めていきたい。
異常気象と花き業界のこれから最後に、自らにも言い聞かせたいことであるが、どれほど良いアイディアを思いついても、実行しなければ何も変わらない。できない理由はいくらでも思い浮かぶが、それでも一歩を踏み出す覚悟が何事も重要ではないだろうか。 口先だけの綺麗ごとでは、環境も社会も好転しない。小さな挑戦を積み重ね、立ち止まりながらも改善を続け、より良い未来へと歩みを進めていきたい。

Canon EOS 6D MarkⅡ/105mm f2.8/ISO640/105mm/0.3ev/f8/1/100s
萩原 正臣 9:00