福岡出張から見えてきたこと

花き業界
 先週は、グループ会社・株式会社九州大田花き(以下、KOTA)の取締役会に出席するため福岡を訪問した。その前段として、しばらくご無沙汰していた長崎の取引先を訪問し、情報交換の機会を得た。同社は葬儀やブライダル、生花店向けの卸売に加え、小売部門や花束加工による量販店向け納品など、多角的に展開している企業である。豊富なアイデアと持ち前の機動力を活かし、リテール開発にも注力するマルチプレーヤー的存在だ。社員の笑顔と活気、成長を支える研修制度、そして仁義を重んじる温かな社風は、今も変わらず健在であった。猛暑や生活スタイルの変化による課題は尽きないが、現場は以前にも増して統率がとれており、慌ただしさの中にも整理整頓が行き届いており、メリハリと清々しさが感じられた。KOTAとの取引のあり方も、単なる「売る・買う」の関係から、提案型のビジネスへと進化している。コストリーダーシップ戦略と差別化戦略の両面から、より付加価値ある取り組みを提供することが求められており、KOTAの秋月社長と共に全力で対応することをお約束した。

 さて、KOTAの取締役会では、6月の振り返りと、7月~8月の展望について、マネジメントを含む広範なテーマで意見交換を行った。生活者にとって無理のない価格を実現できるよう、産地と情報を共有しながら、生花市場とも連携(市場から見ればKOTAは出荷者の立場)して、生花店へ安定的に商品を供給するという、非常に難易度の高いビジネスをKOTAは展開している。6月は大いに健闘し、前年を上回る実績を出してくれた(予算達成まではあと一歩)。最重要期となる7~9月に向けてしっかりと準備を整え、第1四半期1Qの未達分を巻き返し、関係者の期待に応えていきたい。

 生育状況について先週のブログでは「概ね順調」と記したが、早くも高温の影響による遅延が一部の品目や産地で出始めている。高冷地からの直送仕入(KOTAは複数の県連と直接契約を結んでいる)で地域市場へ安定供給するKOTAにとっても、雲行きが怪しくなってきた。特に8月盆に焦点を当てる市場や生花店は、現在の取引よりも8月仕入の見極めに注力しており、KOTAにはすでに例年以上の受注が集まっているという。いかに産地の出荷動向を掴み、注文品以外の商品を九州へ誘致できるか——KOTAの「熱い夏の甲子園」が開幕したといったところだろうか。

 本年3月の春彼岸の失敗を教訓に、大田花きを含め、全国の産地・生花市場・生花店が、適切かつスピード感ある情報共有を行い、安定的な取引を図ることが重要だ。誰も価格の高騰や暴落を望んでいない。再生産につながる持続可能な取引、そして生活者の「花のある暮らし」の実現が共通の目標である。今期第2四半期以降の立て直しができなければ、生産量の減少に拍車がかかる分岐点に、業界全体が差し掛かっている状況にある。
 コールドチェーンの寸断を減らすことや、川下の販売情報(POS管理など)を川上にフィードバックすることなど、技術的で高度な課題は山積みだが、まずは、生育情報や出荷情報の事前共有を強化し、酷暑による出荷時期や商品品質の変動に対して柔軟に対応できる環境を、買参人とあらかじめ整えておき、ソフトランディングを目指すことが足元の課題である。

 種苗会社や生産者、資材メーカーも高温対策に取り組んでくれている。品種開発には時間が、暑熱対策にはコストがかかる。そのような中で、それぞれの立場で最善を尽くしている方々に応えるためにも、我々生花市場も、自らのやるべきことを徹底していきたい。
 そのためには、やはり「成果の追求」が要である。

 取締役会終了後は、筆者の行きつけのもつ鍋店で、美味しい料理とお酒を囲んで反省会を開催した。福岡の方々は、醤油味のもつ鍋を好まれる傾向が強い。確かにさっぱりしており、いくらでも食べられそうだが、筆者は断然「味噌派」である(もちろん醤油も好きだが、味噌に軍配が上がる)。日中の暑さで消耗した体力を補うには、ぴったりのメニューである。味噌の風味は豊かで、濃すぎず、薄すぎず、絶妙な味わいであった。また、福岡の夜を彩るもう一つの楽しみとして、地元らしい一品料理も堪能した。定番のゴマサバや、柚子胡椒でいただく煮込み豚足など、どれも滋味深く、美味だった。締めにはチャンポン麺を注文し、スープの旨味をしっかり吸った麺で心もお腹も満たされた。
 福岡は、人の温かさ、豊かな自然、そして何より食の魅力にあふれている。仕事でもプライベートでも、訪れるたびに新たな発見がある地域である。皆様も仕事の合間や休日にぜひ足を運んで、地域の味を楽しんでいただきたい。


Canon EOS 6D MarkⅡ/105mm f2.8/ISO100/105mm/3ev/f8/1/200s



萩原 正臣 9:00