・美味しいものを少量多品目、時間や空間まで楽しむ上級者もいる。
・美味しい食材を目一杯頬張る働き盛りの者もいる(チートデイもその一つ)。
・新しいジャンルやメニュー・至福の味をひたすら探求し続け、巡り合う事に究極の喜びを感じる者もいる。
・美味しい味に巡り合い、一途に同店・同メニューを頼み続ける食の保守派もいるだろう。
筆者は比較的4番目の行動特性を持ち、新たな発見に心躍らせるよりも、気に入った味で安心感を得たい性格かもしれない。挑戦して後悔した体験が、保守的な感覚を自身で育てて来たとも感じている。
今日は保守的な「食」の日常を少し紹介したい。筆者の好物の一つにラーメンがある。
そのバリエーションを広げようと、様々なジャンルや店舗・メニューにチャレンジした時期もあったが、ある日巡り合ってしまった。
提供された味は然る事ながら、スープの温度・麺のコシや艶・鳥油のさっぱり感、店員の一杯に掛ける情熱や体育会系な雰囲気が心地よく、極めつけは「いらっしゃい!」が「毎度!」に変わったその時の感動を今も心に大切にしまっている。
それからというもの、他店で新たな味を探すワクワク感より、この店の感動を下回ってしまったら残念と思う気持ちの方が勝り続け、いつしかラーメンならその店に訪れるようになってしまった。
信頼性の高い行きつけのラーメン店で、信頼性の高い定番メニューを注文する事が多くなったが、店舗まで断続的に続く30kmの渋滞と、45分~60分の行列に並び、漸く絶品に舌鼓を打ち、また30kmの道を運転して帰る。
「ラーメン中盛・濃い目・多め・海苔・ライス」といった具合で、細かな好みを聞かれることなく「いつもの、で宜しいですか?」と聞かれアイコンタクトする域まで上り詰めた。
気持ちはまだまだ若いが、徐々に年齢を重ね「(味)濃い目、(油)多め」は止めよう!と一念発起し、ついこないだからリハビリを開始した。(スープ飲み干すのも終わりにした)
ロシアの戦争を契機に小麦の出回りが減少し、ラーメン本体の価格が値上がりした時があった。奇しくも消費財全般も同時に値上げされたが「平和に楽しく食事できるだけ幸せじゃないか・・」と自分に言い聞かせたことを思い返す。
またしばらくすると、ライスや海苔・チャーシューなども値上げし始めた。ライスは100円が130円に上がり、コメ不足と言われる現在より前の改定であったため値上げ幅は軽微で済んだ。今の流通実態を考えるともう少し高くないと合わないのではないか?と感じている。
今回強調して申し上げたいポイントは、些か失礼な話だが5枚の「海苔」トッピングが当時100円だったものが200円に高騰した。倍である。チャーシューやライス他の軽微な値上げに比べ、消費者としては「海苔なのに・・」「5枚なのに・・」と、正直愕然とした記憶が残っている。 しかし、味のバランスや、配膳されてから最後に机を拭いて「ご馳走様」と発するまでの起承転結を考えると、もはや拒む理由も見当たらず、今が普通であると慣れて来たのは言うまでもない。今だからこそ、海苔生産者の事を思うと当然であると深く反省している。
今回コラムを書くにあたり、改めて「何故5枚100円の海苔が200円に改定されたのだろうか?」と気になり調べてみた。すると、既に2023年6月から海苔業界では価格改定がなされており、以降中間流通業者や実需者が値上げ相当分を利益圧縮しながら提供してきたことがわかって来た(いま思えばそうだよな、と)。 その他関連する仕入や水道光熱費・人件費・地代家賃他、様々な値上げラッシュを総合的に鑑みて、正に苦渋の選択が敢行されたのだろうと理解する。
どうやら海苔の主産地である有明海が特に凶作で、海苔業界全体の生産量が急速に落ち込んでいるそうだ。主な理由は以下の通り。
・雨不足で海の栄養が減った(山に降った雨が栄養分を海まで運ぶ)
・赤潮の発生が顕著で、なおさら栄養分が減少している
・地球温暖化で海水温が高まった(漁師に聞くと有明海を熱帯魚が泳いでいるらしい)
・佐賀+兵庫で生産量シェア約45%を誇るが、2024年と2022年の対比では、佐賀で42%、兵庫で57%と半減している
改めて、海苔の品質が落ちることなくトッピングされ、調和のとれたハーモニーを得られることがどんなに幸せな事か!と感謝しながら有難く頂いている。
最近、青果・果実と合同の会議に参加する機会が増えてきた。食料・農業・農村基本法が改訂され、安全保障上の観点から国民へ安定的に食料を供給する重要性が改めて強調さることとなった。農家所得を安定化させ、生産面積の維持・拡大を図ることが肝要であり、食=安全保障であり、国民が安心して生活できる環境を産地と共に築き上げていく必要性を再確認している。
同時に、花も「生鮮食料品花き」として分類されているように、生活者に潤い豊かな生活を提供する上で欠かせない必需品となっており、引き続き業界の活性化を目指してまいりたい。
地域活性化の観点から花き生産も大変重要な産業の一つであり、時と場合によって有事の際には花き生産であれ、農業を継続していただいていれば必要な作物に適宜転換する事は、勤めに都会へ出て、耕作放棄地が増えてしまうよりは大変ありがたいと言えよう。本来の花き流通の発展と共に、農業全体と捉えても継続生産を応援する事が重要であると大田花きは考えている。
海苔も米も花も野菜も、猛暑や長雨などの気候変動による影響が甚大で、どの業界も猛暑下での生産対策を各々の立場で検討していただいているが、なかなか明快な回答が見当たらない。
そこで大田花きが事務局を担っている「フラワー需給マッチング協議会(FMA)」では、日本気象協会と連携して過去の気象データ(最高・最低・平均気温、湿度・降水量、日照量他)と、各地の産地の定植状況・生育・出荷数量変動・出荷終了のデータをプロットする事で、「こんな気象になったら今後の出荷にどのような影響が出るだろう?」といったシミュレーションを確認する事が出来る仕組みを整えようとしている。
今後、種苗会社・生産者・農協・県連・輸送会社・生花市場・生花店が利用できるようにして参りたい。それにより需要期や閑散期含め、計画的なアプローチ・再生産に繋がる販売方針・力強い広告宣伝が図れるのではないか?と考えている。
走りながら業界に寄与できる方策はどのようなことなのか?連携するパートナーと意見を交わし、最適解を見出してまいりたい。

Canon EOS 6D MarkⅡ/70mm F2.8 DG MACRO|Art 018
ISO1600/70mm/-0.7ev/f6.3/1/125s
萩原 正臣 9:00