15年ほど前にも同地を訪れていたが、当時に比べて私自身も、生産者やJA職員の方々も、それぞれに年月を重ね、貫禄を増していた。面白いもので、白髪が増えてダンディーになり、一瞬誰か分からないほどご無沙汰していた方も「久しぶりー!元気だった?」と強く握手すると、当時のやり取りが昨日のことのように思い出された。15年前の「相場が高かった、安かった」など、真剣だった会話やそのときのセリフまでも鮮明に蘇り、「あの頃は青春だったな」としみじみと感じながら、昔話に花を咲かせた。
さて、今回出席した総代会における組合長や部会長のご挨拶、県行政機関の来賓祝辞にもあったが、ご当地のみならず各地の会議に参加すると、全国各地で気候変動や少子高齢化の影響が農業の現場を直撃しているとのコメントが多くなっている。地域振興を「ワンチーム」として盛り上げようとする取り組みは増えているが、実際に就農人口が増え、活気づく地域や農協の話を聞くことは極わずかだ。
情勢報告を依頼されていたため、準備を整えて会に臨んだが、会場を見渡しながら主催者や来賓の言葉に耳を傾けていると、かつて満席だった席に空きが目立つ。かつての、もっと多くの組合員が着席し、熱心にメモを取っていた光景が記憶に新しい。だからこそ、少しでも業界活性化に繋がる元気になりそうな話をしたいと思い再考した。
農家はもちろん、関係者も皆、地域を元気にしようと懸命に努力している。無責任な発言は憚れるところだが、花き流通のパートナーとして伝える義務があると感じ、「なぜ生産者が増えないのか」「なぜ地域が活性化しないのか」という根本的な問いを投げかけた。私なりの考えは「情熱ややりがい」だと考えている。
IターンやUターン、あるいはご子息が後を継いで就農するという動きが、そう簡単に進むものではないことは、私自身もよく理解している。地域に根ざし、生活の基盤を移すことや、農業という生業を新たに始めることのハードルは、想像以上に高い。それでもなお、私が長年いろいろな会議に参加してきた中で、ずっと感じてきたことがある。それは、「その会場に集う人々の熱量が、その地域における生産者戸数の推移に比例しているのではないか」ということだ。
ギラギラした情熱や好奇心、ワクワク感、そしてやりがいを見つけて充実した花生産を行っているか。これが非常に重要だと捉えている。 多くの産地で「現状維持で十分」といった空気を感じることが多くなってきた。確かに、若手とベテランでは所得への考え方も異なる。また、生涯現役を貫き、しっかりと稼いで生活を謳歌したいと考える人も勿論いらっしゃる一方、健康を維持し、孫の小遣いを賄えれば十分だという人もいるだろう。そこで、改めて問いかけたのが「誰のたのめ花生産か?」ということである。
花農家として生まれた人、異業種から転身してきた人、経緯はさまざまだが、一人ひとりの生産者との出会いは、かけがえのない財産である。そうしたご縁を大切にしながら、適地適作で安定した生産供給を続けていただきたいと強く願っている。中でも、若手生産者が地域に加わり、花づくりを通じてやりがいを見出し、消費者の生活を豊かにする花きの生産を頑張っていただきたい。その実現には、現役世代が十分な所得を得て、やりがいのある生活を送っていただくことが不可欠だ。50代の生産者が子育てや教育に最も費用を要する時期に差しかかっていることを考えれば、特に、生活設計を組み立てられるが何より重要ではないだろうか。ここをサプライチェーン上に乗った関係者は連携し、持続的な業界発展を念頭に、無理のない安定した流通ビジョンをイメージして切磋琢磨する事が何よりも欠かせない。大田花きの役割は 、生産者から生花店まで、関わるすべての人々が繁盛し、利益を分配出来る構造を築くことだと考えている。
人は年齢や経験を重ねる中で周囲から学び、働き方のステージを上がっていく。また、年齢を重ねるごとに、自分自身よりも家族、パートスタッフ、地域振興、さらにはお世話になっている農協や運送店、花市場や生花店へ感謝しながら、「生活者に喜んでいただく花生産を頑張りたい!」と、経験や年齢を重ねながら徳を積み、人のためとなる花作りを行うことが、やりがいに変わってゆくのではないだろうか。
では、その実現に向けて、具体的に何を取り入れるべきだろうか。生活者を喜ばせるためには、まずはパートナーである生花店からの支持を得ることが近道である。指名買いをしていただくためには、可能であれば上京し、生花店の声を直接聞いて想いを共有することが重要である。そうした対話を通じて、明日への工夫が図りやすくなる。その上で「使いやすくなった!」「今までよりも良くなった!」「凄く助かる!」「もっと買わせていただきます♪」といった声をいただけるようになれば、それは経済的にも精神的にも張り合いのある状態といえるのではないか。
相手が求めるモノやコトを満たすことで、所得が増す。同時にやりがいや活力も増していく。そんな姿を見せることができれば想いが伝わり、「自分も就農してみようかな?」と考えてもらえるようになるのではないか。そう考えている。
仕事には、レベルに応じて4つの種類がある。我々自身が成長を重ねることで、その姿や取り組みが関係者の皆様の成長にも良い影響を与えられるよう、共に歩んでいきたいと考えている。
仕事の4つの種類
ライスワーク:
米を食べるための仕事、生きるため・家族を養い・好き嫌い問わず実施しなければならない仕事がこれに当たる
ライクワーク:
好きな事・やりたい事で働ける、暮らせる状態。仕事人生でかなりレベルアップした状態といえよう
ライフワーク:
その仕事が天職であり、生涯携わるべき事柄に巡り合えた人が極稀に手にする事の出来る幸せな状態
ライトワーク:
ライフワークの更に上で、人に光を当てる仕事・人のために働く仕事(ボランティアや財団など)を精力的にこなしている状態
ライスワークからライフワークまでの主語は自分であるのに対し、ライトワークは主語が第三者である点が大きく異なっている。
米を食べるための仕事、生きるため・家族を養い・好き嫌い問わず実施しなければならない仕事がこれに当たる
ライクワーク:
好きな事・やりたい事で働ける、暮らせる状態。仕事人生でかなりレベルアップした状態といえよう
ライフワーク:
その仕事が天職であり、生涯携わるべき事柄に巡り合えた人が極稀に手にする事の出来る幸せな状態
ライトワーク:
ライフワークの更に上で、人に光を当てる仕事・人のために働く仕事(ボランティアや財団など)を精力的にこなしている状態
ライスワークからライフワークまでの主語は自分であるのに対し、ライトワークは主語が第三者である点が大きく異なっている。
大田花きは「関わるすべての人を幸せにしたい」と考え、社員の成長を後押ししている。もし社員が不幸であれば、その社員が努力して取引先を幸せにすることは果たしてできるだろうか。「幸せ」の定義は多様であり、明確に断言することは難しいが、少しでも社員を幸せにできれば、取引関係者や生活者の皆様を幸せにすることにつながるはずだと信じ、取り組んでいる。
そして大田花きの社員は情熱を持って、好奇心ややりがいを大切にしながら、皆様と共に歩んで参りたい。

明日も、よし!頑張ろう🌿
スノードロップの花言葉【希望】
萩原 正臣 9:00