実情を分析し、花き業界のサプライチェーン正常化を目指す

花き業界
 新年度が始まり、早くも2週目に入った。春彼岸や年度末、そして新年度の始まりと、花が活躍するシーンが増える時期である。

 花き業界においては、本年の市況は例年とは異なる状況が見られた。東日本大震災やコロナの緊急事態宣言時に近いインパクトが業界を揺さぶり、3月末から4月にかけてその影響を強く感じた。それでも、生花店における「お彼岸~新年度」の売れ行きは、全体的に「悪くない」という回答が多く聞かれた。では、なぜこのように厳しい市況展開となったのだろうか。外的要因もあり、すぐに解決できることばかりではないが、改善の糸口を見つけていきたい。以下、実情を定量的に分析し、見えてきた課題を整理してみる。

 1.生育遅延による品薄予測
 例年、落ち着いた取引が行われる1月・2月が、今年は品薄傾向で推移した。燃油や電気代の高騰、そして猛暑の影響もあり、生育に影を落とし、品薄状態が続いた。そして3月の需要期を迎えるにあたり、生産者からは「品薄」との予測が伝えられた。このような状況を振り返ると、深い分析と途中での修正がなされることなく、粗い「品薄」の情報が広がってしまったと感じている。
 鮮度管理に気を配る花束加工業者にとっては、前半の品薄環境で商材確保が必要となり、出荷見通し情報は実情と合致した。しかし生育遅延気味であった事から、花は遅れて出荷される。品薄な前半に、例年以上の注文がまとまり、品薄環境に拍車掛かり「本当に増加して来るのか」と不安な気持ち高まり、仕入計画の大半を事前発注した生花店(例年なら間際仕入)が本年は多かった。

2.生育遅れの回復
 生育の遅れ気味だった花も、次第に間に合ってきた。しかし、仕入計画に役立つ情報の提供が足りなかったことを実感している。特に、1・2月の品薄傾向から、3月初旬にかけて生育の実態を適切に共有することが業界全体で欠けていた。修正情報の提供なども適切に実施されていないのではないだろうか。


3.加えて天候不順に泣かされた
 3月14日(金)にピークを迎えたお彼岸の入荷が、その後の悪天候によって影響を受けた。15日(土)から雨がちな天気、19日(水)には降雹もあって予報通りの荒れ模様で仕入れが停滞した。事前に確保していた花が捌けず、在庫が積み上がる中で、市場に強いブレーキがかかることとなった。

4.3/23(日)にかけて良好な販売
 彼岸の入りは雨模様だったが、中日から天候回復し、移動しやすい週末22(土)・23(日)にはお墓参りに出かける方が増えた。生花店では在庫が底を突く店舗も増え、需要が高まった。24日(月)の買い足し需要によって、相場が復調した。

5.新年度に向けて再び厳しい取引
 お彼岸需要が一段落した後、例年であれば年度末や新年度に向けてはさらに忙しい時期が続くものの、今年は少し様子が異なった。買い足し需要が動いた24日(月)を境に、28日(金)・31日(月)・4月2日(水)には、近年まれに見る厳しい取引が続いた。全国的な低調相場で、大切に育てた花を出荷制限するなど、苦渋の選択を強いる場面もあり、業界関係者として心を痛めた。

6.生花店の店舗運営実態が少なからず影響
 年度末の忙しい時期に生花店が多忙を極める一方で、少人数で運営している店舗が多く、配達ができずに注文を断らざるを得ない場面も増えた。特に、28日(金)・31日(月)は仕入担当者が配達に回るなどして、セリ市場での参加人数が減少し、生花店の受注状況と異なりセリ値が暴落する結果となった。参加頂いた方でも、注文の不足分をセリで補い、確保出来たら店舗へ戻る方が増えセリ後半は参加人数激減、近年稀に見る暴落市況に陥った。

 これらの状況が重なり、全国的に低調な市況が続いた。背景には、慢性的な高値基調の影響もあり、仕入れに対する心理的な影響があることは否めない。

 生産コストの上昇には理解が進んでいる。また、花を継続的に販売するためには再生産を意識して購入する必要があることも認識されている。課題は、欲しい時に花が品薄に、需要期を過ぎるとさらに供給が減少する現実があることだ。生花店は需要期における高値には耐えられるものの、その後の需要が一段落して販売見通しが弱くても、継続的に仕入れを行わなければならない。年間を通して見た場合、閑散期に失われた利益を需要期で取り返すのは難しくなりつつある実情がある。

 これらの問題を解決するためには、花き業界のサプライチェーンを正常化させることが不可欠である。気象変動への対策はまだ確立されていないが、業界の安定した維持と発展には生産者の安定的な生産が重要である。また、生花店は食品や消耗品と異なり、文化的な商品を扱っているため、売りやすい環境の提供が急務だ。生産者と生花店の距離を縮め、「高すぎる」「安すぎる」の「すぎる」を取り除いていきたい。

 近年、品薄状態による極端な高値が増えてきたが、産地は必ずしも十分な利益を得ていないことが多い。また、相場に沿った店頭売価設定を行う生花店も増えてきており、需給バランスを考慮しながら高鮮度・高回転率で花を流通させる努力が続けられている。業界全体が一丸となり、未来を切り開くために共に進んでいきたい。今日よりも明日がより良い一日になるよう、大田花きは引き続き役割を全うしていきたい。


大田区池上にて


萩原 正臣 9:00