花き業界の維持発展は生活者の幸せな暮らしを育んでいく

その他
 全国的に梅雨入りが近づいてきた。1951年の統計開始以降、初めて沖縄・奄美地方よりも先に九州南部が梅雨入りした。先行して梅雨入りした要因は、偏西風が平年よりも北に位置している事が影響していると気象庁は見ており、今後大雨となる可能性が高まる事から、備えを呼び掛けている。

 現在は父の日まで少し期間のある、いわゆる「閑散期」で、落ち着いた取引となっているが、以降、七夕・新盆・旧盆と断続的にイベント目白押しの夏がやってくる。長期予報では昨年よりも高温推移が予想されているようだが、生産や販売に大きな影響が出ないことを祈るばかりである。

 さて、2025年は食品や飲料・タバコ・ティッシュなど幅広い品目で、原材料高、物流費・人件費・下請け業者からの要請などによるコスト増加要因が膨らみ、2万品目に迫る値上げが予定されているようだ。花き業界は、生産者<市場<生花店<消費者と、段階を経て最適流通しているが、他業種同様、どの場面でも必要経費の上昇が顕在化しており、店頭売価設定アップが喫緊の課題となっている。前述の値上げ品目を認識すると大変心苦しいばかりだが、無理な流通を進め過ぎればいずれは安定流通がどこかで破綻し、かえって生活者へ癒しの力を持つ花の魅力をお届けできなくなる危険性を孕んでおり注意が必要である。出来る限り価値のあるメリハリ効いた商物流を推進して参りたい。

 しかし、どの階層でも相手ある事であり、値上げ以上の価値を提供する事が何よりも重要になってくる。一般的なマーケティングの指標として、新規顧客の獲得は既存顧客の維持に比べ5~7倍のコストが発生すると言われている。よって、既存顧客を失わないための対策を常に考え心掛ける事が、ローコストに収まる事となる。一方、長期的に市場拡大を推進するためには新規開拓が不可欠であり、プロモーションを進め、ブランドの認知度を高め、信頼を勝ち取り、興味を持ってもらい、成約率を高める必要がある。

 他業種の事例を若干紹介しよう。外食産業ではお子様向けに小振りなサイズを用意し、ジュースや簡易おもちゃ付きの商品を投入するケースがある。お子様向け商品が用意されている事で家族連れ顧客を集客し易くなるメリットがあり、家族連れで盛況だ。加えてアンケート調査を頻繁に行い、顧客の嗜好を調査し、魅力ある店づくりに生かしている。
 お菓子業界ではラインナップ数を減らして生産効率を上げたり、売価設定は維持しながら内容量を減らすステルス値上げを行ったり、試行錯誤しながら損益を下回らない努力を続けている。
 筆者は以前、流通価格が高騰した際にステルス値上げを実施する生花店を見て来たが、生活者の花離れに繋がるのではないか?と心配したものだった。しかし、生産量減少局面においては、生活者へ花の魅力を維持提供して頂く事を前提に、やむを得ない企業戦略の一つかもしれないと改めて感じている。

 B2Bの花き流通では、見通しの立つ長期予約相対の本数を増やしていきたいと考えているが、シーズンを通して生花店は確約された売先を前提に契約する事ばかりではない。前述通りリピート頂く維持管理コストの方が、新規開拓するより安価に収まるケースが多く、経営に安定感を携えることが出来る。よって、産地と市場は継続契約頂けるような対策(契約単価と実勢相場の乖離是正)を常に協議しながら推進する事が肝要ではないだろうか?また、経済行為では一般的だが、高付加価値・高単価商材は、数量を調整して高値安定流通を推進するべきだ。付加価値を維持するため、本物の高級ブランドバックが生産量を間違え、値下げしてワゴンセールするようなことは先ずない。高単価が必要な商品を大量生産して短命に終わるケースを何度となく見て来たが、ターゲットや価格帯・必要量等を鑑みながら綿密に商品政策を推し進めてゆく事が必要ではないだろうか?

 いずれにせよ、産地・市場・生花店と、それぞれ独りよがりにならぬよう、確りと情報交換を行いながら業界の維持発展目指し、生活者の花を通して潤い豊かな生活の実現を主体性持って取り組んで参りたい。


Canon EOS 6D MarkⅡ/70mm F2.8 DG MACRO|Art 018/ISO100/70mm/-0.7ev/f4.5/1.0s



萩原 正臣 9:00