農業の未来を見据えて、跡継ぎ確保
花き業界
需要はしっかりあるのに供給が少ないのは、1つには天候、そして2つには少子高齢化による人手不足が影響している。人手不足の問題はどうしようもない。いわゆるスマート農業やスマート流通等を取り入れ、省力化投資とともに、的確にオンタイムで需要を満たし、ロスを出さないようにする努力が求められる。今後も供給が足りないのは分かっているから、産地に行くと、新規就農者の獲得や面積の増大をお願いしている。そして、産地で相談を受けるのは、「後継者がいないが、どうしたら後継者を見つけられるか」という内容が多い。ご子息やお嬢さんが農業を継がないで他の仕事をしており、その多くは地元にいない。一方で、農業をやりたがっている若者は確かに多くはないが、いない訳ではない。私が知っている限りでも、農業に関心のある人たちはかなりの数いる。しかし、非農家の方が農業を始めるにはまだ敷居が高い。地方に住むことに憧れて移住しても、土地やハウス、もちろん肝心の技術等、どうすればよいか迷うことが多い。また、一定数、生産ができて生活の目処が立ちつつあれば、次は面積を広げたり、施設に投資をしたり成長路線に入ってくる。農場経営を家族で担わなければならないので、夫婦や家族で行う町工場の経営のように、なかなか難しい面がある。初めてのこと、初めての土地での生活など、不安があるかもしれないが、その地に移住して農業をすることに言えることは、その産地の人々や自治体、農協がウェルカムな姿勢で、「ぜひともこの地に住んで農業をやってもらいたい」と温かく迎え入れてくれることである。
先述した産地の方からの後継者問題については、「資本と経営(運営)を分離してやってください」と伝えている。そして新規就農者の採用活動等は自治体や農協と協力して都市部をターゲットにし、フェアを開催して獲得していくべきだ。移住してもらうためには希望者としっかり話し合い、理解を得ることが必要である。このように申し上げている。住むにあたり持ち家を持つ場合には、リフォーム代や取得代に一定額の援助金を出したり、生活や子どもの教育に対する不安を解消し、安心して子育てができる環境を整えることで、移住が決まる場合が多い。肝心の農業については、空いているハウスを利用したり、減価償却が難しいため農協がリース形式で提供するなど、農業経営を始める際のリスクを軽減できる仕組みを作ることが重要だ。東京から250~300キロ圏内では、雪が降る地域でも新規就農者が増えているが、それ以上となると色々な課題があり、どうすれば良いか迷うところである。ただ、基本的には先ほど言ったように、子供が跡を継がない場合、資本と経営を分離し、やる気のある人に継いでもらうことが鍵となる。できるだけ初期コストを抑え、農業簿記をはじめ、専門的な知識を教育することが大切だ。農業は素晴らしい仕事であり、やりたいという若者はきっと見つけられると確信している。
追伸:会社法人で花作りをしようとするところは各所でも多く見られるが、難しいことではある。しかし、チャレンジして成功しているところもある。問題は出口を確保することであり、私たちにそのような話があれば、どう販売するか、販売先、数量や売上などを品目別に作成し、そこから逆算して何を作るか、どのくらいの面積でコストをどうかけるかを話し合っている。個人と、特に異業種の法人は農場経営の勘所が違うが、農業が地域の産業であることを考え、行政や納税事務所、JAなど農業者に対するサービス機関を十分に活用して、生産者には安定した所得を確保し、安心して農業に従事できるようにすることが重要だ。
投稿者 磯村信夫 16:43