豊洲市場・魚卸の活性化方針は、花市場に示唆をくれている

花き業界
 先週2日(土)、「市場流通ビジョンを考える会※」の研修会が行われた。その中で、大都魚類(株)の橋本宏行社長が講演された。水産の話であったが、花き卸売市場(卸・仲卸)にもタメになるお話だったので、皆様にご紹介したい。
※市場流通ビジョンを考える会・・・
東京聖栄大学の藤島先生が中心となり、青果・水産・花きの卸・仲卸有志が幹事になって進めている勉強会

 橋本社長は元マルハニチロ㈱ 社員で、エビの買い付けや養殖等、商社として、いわゆる“市場外流通”をなさっていた。現行の卸売市場法は今までの規制法とは違い、むしろ「卸売市場を振興していこう」、「出来ることを増やして活性化していこう」という、自由度が高まった法である。今後は市場外流通を取込んだり、場合によっては、卸・仲卸が業容を拡大して市場外流通を行っても良いのではないかと仰っていた。橋本社長のような、市場外流通で長年経験されてきた方が大都魚類(株)の社長になられて3年弱、「市場はこうするべきだ」と提言をいただいたのは誠に有難いことであった。

 B to Bという点では、市場も専門商社も変わらない。決定的に違うのは、卸売市場はプロダクトアウト型で、原体が主体であることだ。品目別担当が商材の専門知識を持って進める。原体なので川下の小売店よりも商品数自体は少ない。一方の専門商社はマーケット・イン型で、消費者が買いやすいように原体を加工した品物が多い。今後、加工品であるお惣菜のニーズの高まりと同様、花も出来合いの花束や、ニーズに合った加工された商品の需要が多くなる。これは「コスパ」、「タイパ」のキーワードが流行っていることでも分かる。プロダクトアウト型になりがちの卸売市場だが、生産者も卸・仲卸も、最終的には消費者に買ってもらい、花で幸せになってもらうことが目的である。マーケットニーズが最も重要であることを忘れてはいけないのだ。弊社大田花きのことで恐縮だが、「フラワー需給マッチング協議会」を立ち上げ、花束加工業者や生花店へスムーズに、仕様に合った荷姿で供給できるかを模索し、「スマートフラワー規格」等の提案を行っている。業者が扱いやすいような規格で生産者に出荷してもらい無駄を省くことで、国内生産・流通の効率化を図ろうとするものだ。このような取り組みが業界でもっともっと必要だろう。

 現在においても、卸売市場はマーケットニーズの把握が出来ているかというと、まだまだだ。今後、勉強をして高めていかなければならないだろう。また、顧客別の担当者を置いておらず、商材別の担当制のみ敷いているところが多い。これも弊社のことで恐縮だが、大田花きでは、顧客別担当を置いてもう20年以上になる。顧客別担当を置くことは、実は非常に重要だと感じている。何故なら、卸売市場は生花店や量販店等の花売り場を通じて、生活者へ花を届ける。生活者は自身が欲しいと感じる花を買うことによって、メッセージとして卸売市場に反映され、生産者の作付けの大いなる参考となるからだ。従って、卸売市場も顧客別のマーケットニーズを汲み取っていく必要がある。生花店も差別化が必要な時代だ。差別化してもらえるような商品を卸さなければならない。卸が原体だとすると、仲卸で加工したり、予約相対・契約相対で差別化する商品になる原体加工を産地で行ってもらうなどが必要となる。こういったことが卸・仲卸、花束加工業者などの中間流通の仕事になる。顧客別に独自の商材スペックが必要だということを頭に入れておかなければならない。

以上が、橋本社長の講演の主だった内容だ。卸売市場で原体だけで取引していた時代、まさに1970年代までそうだっただろうか。家でお料理したり、いけばなしたりアレンジしたり、家で全てが完結していた時代は「卸す」だけで良かった。しかし、今の時代はそうではない。卸売市場の役割が明らかに違ってきている。橋本社長は我々卸売市場に向けて、まず意識改革をせよ、そして早く変化させよと仰っていた。  
 
 最後に、特に地方の卸売市場の皆様方におかれては、地域の花売り場のためにお役立ちをすることが卸売市場の役割、生きる道であることを念頭に、社員の意識改革や組織改革をしてもらいたいと思う。また、20世紀末まで、花の場合、品目に特化した産地のものが、地元の同じ品目の生産者の品物より価値が高いと見られ、地元の商品のセリ順が遅くなったりしていた。今でもその傾向が残る卸売市場がある。これは改めてもらわなければならない。地元の花は地元の消費者が一番求めるものだからだ。一番が地産地消、二番がメイドインジャパン、三番が輸入の花、これが消費者の欲しがる順位だ(勿論、日本産にない優れた特性のある輸入の花は、国産より優位に買われるものもいくつもある)。地元の花き生産の活性化を、卸売市場としてやっていく必要がある。

 
 投稿者 磯村信夫  15:10