花き業界一番のニュース
花き業界
さて、本年の花き業界一番のニュースは、温暖化、熱帯化により生産量が減少し、消費においても、家庭需要が減ったことである。特に6~9月の暑い時期は、花瓶の水が三日で悪くなってしまう。水の取り換えを心がけてくださっている消費者を除き、花屋さんに行く頻度が少なくなってしまった。温暖化が来年も続くと考えると、生産面では、暑さに強い品種群への変更や、冷房装置、雨が集中豪雨のように降ってきても大丈夫なよう、水はけを良くする設備投資等、対策が必要になる。
サプライチェーン全体の流通面では、産地で切って出荷してから、農協の集出荷所、トラックでの輸送、卸売市場の卸・仲卸での温度管理、小売商が市場から持って帰って店に着くまで、ここまでを1,000温度時間値※①以内に収める努力をする。そうすれば、店頭に並べてから三日以内に売れば、消費者の手元で一週間花もちする。花もちのよい品目だけでなく、様々な花を消費者に楽しんでもらいたい。
販売面では、2023年度に比べて家庭消費が振るわない今、消費者が持っている内的参照価格※②に花の小売価格を近づける努力をすることだ。そしてその一方で、値上げもしていかなければならないので、内的参照価格との隔たりが大きい時に、その理由、もしくは価値を訴求していく必要がある。
「今年は天候異変で、農家の人たちが頑張っているけど供給量が少なくなっています」などと言った理由や、「○○県の××さんが作りました」「こんな価値があるからこのお値段なんです」といった価値を、値段と一緒に表示してアピールするのである。
さらに、小売店では、販売構成も変更していかなければならない。最近は特にご年配の方々の方が、ダブルインカムの世帯の人たちよりも買い控えが多かった。花束加工業者が納品しているスーパーマーケットや地域の花き専門店でも、50歳前後の団塊ジュニア、ミレニアル世代、Z世代の人に向けた、小さくても可愛らしい自然長の花束を増やしていく必要がある。これが今年の家庭需要が前年よりも振るわなかったことの反省と解決策だ。
最後に、水替えが少なく済む薬剤の使用も欠かせないと思う。大田花きでは「silite(シリット) 」をオススメしているが、このような水が腐らないような薬剤を消費者に使ってもらうことを徹底していきたい。
現在、自動運転で分かる通り、人工知能(AI)と合成生物学の二つのテクノロジーにより、今までの人類の進歩とは異なる波が押し寄せてきている。今まで知性は、人間の活動領域を広げるためにあり、人間がコントロール出来るものだった。それが今では、人間を超越する場面がかなり出てくる。例えばスーパーコンピューターと囲碁の名人との対局でもそれが分かる。スーパーコンピューターは、かつての様々な一手のアルゴリズムではない、自主的な新たな一手を出してきている。新しいイノベーションが、瞬時に、独自に、あるいは自主的に出てきたということだ。
こういったものと人類はどう付き合っていくかが問われている。日本では、従業員数1,000人以上の大企業でも約30%しかAIの導入にふみきっていないが、アメリカでは有力企業「フォーチュン500」の大半が既にAIに取り組んでいるそうだ。
「その時の相場」を創り出す役割を担う、花市場プラットフォームを運営する花き卸売会社も、AIを導入していくべきだろう。出荷物も、その日の産地の天候情報から輸送中の蒸れリスクを予測したり、販売予測をしたり、アルゴリズムで予測出来るのではないか。現段階で大田花きは、産地のバーコードを機械で読み取り、情報が記載された入荷シール、販売シールを手で貼って自動分荷機で仕分けしている。これを、人の手を介さず、自動でシールを貼るテストをしている。この機械が大いに利用出来るようなものになれば、(一社)日本花き卸売市場協会のメンバーに共有し、全体で使ってもらえたらと考えている。まだまだこの段階だが、AIによる画像認識や学習により、バーコード無しで対応出来るようになるかもしれない。AIを取り込む、AIと仕事をしていく必要性を強く感じている。
※①花もちには諸条件があるが、切花収穫後の温度×時間が重要だ。例えば一日平均20℃だとすると、切り花後二日、20℃×24時間×2日=960温度時間となる。オランダは500温度時間値だが、日本の夏は暑い。だから、日本の場合、まず1,000温度時間値とする。1,000温度時間位で小売店に届けられれば、消費者の家庭で一週間花をもたせることが出来る。
※②消費者が商品やサービスの価格が妥当かどうかを判断する際に基準となる、自分の経験に基づく記憶の中の価格情報。
投稿者 磯村信夫 17:07