続・令和の仕事のやり方

花き業界
 先週のこちらのコラムにて「昭和・平成の仕事のやり方ではなく、令和の仕事のやり方をしよう」、あるいは「令和の花き業界の形を各自が作っていこう」と呼びかけさせていただいた。根底には、16歳から64歳までの生産年齢の人口が減少してきた、いわゆる「人口オーナス」がある。人口減少による人手不足解決のためには、以下の3つの要素が鍵になると思う。①女性も働くようになったが、まだまだパート勤務にとどまっている方も多い。家庭や社会からの就労支援、子育て応援の仕組みが今以上に必要だ。そして②高齢者の定年が55歳から60歳に、60歳から65歳になってきたが、更に70歳に引き上げていく必要があるのではないか。更に③海外からの幅広い職種の労働力を、どこまで日本に招き入れていくのか、真剣に検討していかなければならないだろう。

 地域の人口減少が続くと、その地域へ集荷するのも販売するのも手間がかかる。小さな会社であるほど利益が出しにくい。従って、会社が連携するか、もしくは合併することで黒字化していくことが必要だ。1つの会社では規模の小さなビジネスだったものをまとまって大きく扱うことで、「規模の経済」でコスト削減していかなければならない。既に、大企業でも他社と連携を取って効率化を図っているところもある。また、市町村合併や農協合併も起こっている。卸売市場も同様に、中央卸売市場の2社体制を1社体制に、更には県内や周辺の県まで含めた卸売会社統一、同じ食・花文化を共有する統一も視野に入れて、「規模の経済」を少しでも働かせるようにしなければならない。
 
 先日、上伊那花卉生産者会議の50周年記念式典に出席させていただいた。今、上伊那エリアには二つの組織がある。個人出荷・事業家農家が中心の「上伊那花卉生産者会議」と、上伊那農協の花き部会である。この2つの組織も、統一してコスト削減していけることがあると感じている。とぴあ浜松農協の生産者と同じように、個選出荷、共選出荷を上手く分けての出荷が出来るのではないか。運送コストの削減や、送り状情報や売り立て情報の処理、入出金処理等の事務作業の一元化が出来るのではないか。ただし、与信管理上の問題のある市場への出荷はご法度だ。また、これは品目によってだが、切り花後そのまま出荷調整・荷造りも農協にお願いすることも出来る可能性があるのではないだろうか。地域での重複作業をどのように減らしていけるか。これが令和の花の産地の仕事のやり方だ。

 これは卸売市場も同様だ。地域で同じ買参人を取り合っていないだろうか。また、重複作業があるならば、合併して重複を避けるべきではないだろうか。少なくとも管理部の人数は少なく出来る。合併して1つになると「買い手の選ぶ権利」が侵害されるという反対があるかもしれない。しかし、物価高、少子高齢化の日本において、今後、全ての卸売会社が存続することはもう出来ない。業界内の無駄を排除していかなければならないのだ。

 花の場合だが、生産地からすると、県庁所在地にあり、取扱金額が20~出来れば30億円規模の取扱いの卸売会社が取引先としてあることが望ましい。この規模の卸売会社があると、大手買参人にとってもバラエティ豊かで量も満足出来る取引先となる。また、生産地から250~300㎞圏内に、少なくとも30億円規模、出来れば50億円~80億円規模の取扱いがある卸売会社があり、そこと取引関係が出来れば、品目や品種を絞っても安定して売れていくので利益が出しやすい。大切なことは、取引先の卸売会社とコミュニケーションを密にとって、自分の商品を販売してくれる小売店までのサプライチェーンを明確に意識することだ。例えば弊社大田花きの場合、生産者は自分の商品がいくらで誰に売れたか、web上でいつでも見ることが出来る。目標としているのは、市場の先のお客様が誰か、そのお客様が必要とする花が何か、販売店でのPOSに近い情報を知り、来期の作付けに生かすことだ。

 上記が令和の仕事のやり方だ。もちろん変革期の今、GX※の推進も欠かせない。そして会社と社員個人の成長が出来る仕組みのある会社にすること。これが大切となっていく。BtoB、BtoC問わず、精神的な充足感が消費や仕事においても大切な核だ。ここを意識して、仕事の仕組みも変えていく必要がある。

 ※GX・・・グリーントランスフォーメーション。脱炭素と経済活性化を同時に実現する、持続可能な未来へ向けた取り組みのこと。


 投稿者 磯村信夫 14:23