経済の活性化も、花き業界の活性化も生産性アップをすることに尽きる。~品種のバラエティは求められるが、「選択と集中」で特定サプライチェーンのパートナーを決め、無駄を削減することも必要だ~

花き業界
 今年の春の賃上げで給料も上がったが、物価高により家計収支は前年よりマイナスになっているという。10月・11月は物入りの月で、支出も膨らむが、よく言われる「品物を最初に見て値段をみる」のではなく、「値段を見てから品物をみる」といった買い物行動になる人が多い。そうであれば、花き小売店も今まで以上に工夫が必要だ。産地名を表記して販売したり、生産者が分かっているのであれば、生産者の写真まで紹介して販売する。枝物や葉物を必ず添えて、日持ちをよくするだけでなく、ボリュームをつけて販売する。現代は花の色や形が優先して選ばれるので、勿論、季節を取り込むことも欠かせないが、色を前面に押し出して販売する等、工夫出来るところは沢山ある。人件費や物流費、資材費の値上げを小売価格に適正に上乗せ出来れば、生産者は安心して生産出来るようになる。生産量が増えれば、消費も拡大出来る。しかし、今のままでは難しい局面まできてしまっている。

 人手不足は生産者の大きな課題の一つだ。海外からの研修生で労働力を補うのか。パート・アルバイトの人に来てもらうのか。あるいは、選別・出荷調整等をJAに委託するのか。生産請負を行っている法人やJAもあるので、場合によっては依頼するのか。そこまでして、生産を維持・拡大してもらうことがどうしても必要だ。ご存じの通り、農事法人は赤字のところが多い。北海道を除く国内JAの営農経済事業では、農事法人と同じように殆どが赤字である。JAの場合、この営農経済事業の赤字を銀行業務・保険業務等の金融事業で補填してきた。営農経済事業を黒字化するためには、数十年前に建設され、建て替えを余儀なくされている卸売市場と同様、老朽化した集出荷施設の建て替えや、新たに保管・保冷のための鮮度保持施設の建設が欠かせない。しかし、そこに資材の高騰や、トラック運転手の時間外労働の規制である2024年問題等、新たな課題が覆いかぶさっている。

 日本中のJAの集出荷施設をどうするか、日本は岐路に立たされている。基本的には鮮度保持を行い、1日出荷日を伸ばしても鮮度の良い状況で、積載効率の良いトレーラーや大型車で運ぶことだ。また、花の場合は台車も使われるが、11パレットの統一等、積載効率を上げることも欠かせない。更には生産請負、あるいは、出荷調整業務等、新たな生産性アップのための一歩を踏み出さなければならない。特に青果では、少子高齢化や共働きの増加による、中食や冷凍食品の需要増加で、国産青果の冷凍化も必須だ。面積の拡大・冷蔵庫による生産性アップが必要となっている。

 とりわけ地方は人口密度が薄くなり、広域に市町村合併を行い、ある意味で文化的な背景をもとにした仮の道州制のような、地域割りの農協や卸売市場を運営していかなければならない段階にきている。大手スーパーはそのように地域を捉えており、県内スーパーも一つの県で、あるいは県を跨いで、特徴を持った経営をしていくことになる。ここを想定し、生産性の向上を追求しなければならない。地域の文化背景を良く知る地方の卸売市場は、出来れば地産地消で、2024年問題が出る前からお取引している生産者の荷を扱う。出来ない時期は、集散機能の強い卸売会社から、自社に合った品揃えを行う。小売のカテゴリーでは、ホームユース用の切花や苗物で、ガーデニングをしたり、鉢物を育てたりする為の、一般受けする花や緑を扱う小売店と、個性的な、あるいは、センスの光るものを販売していく小売店に棲み分けがすすむ。若い人たちは、花をスーパーではなく近所の専門店から購入する傾向がある。その若い人たちに向けた斬新な色合いやデザインの花も必要だ。

 花き業界それぞれの場において、生産性アップを図り、上手に生活者に買ってもらえるようにすることが必要だ。その為には今のトレンドを反映した色、形、デザイン等をしっかりと身に着け、基本は品種を絞り込んで量を多く生産し、生活者に販売する。ここを目指していけば、生産が減少している国内・輸入のどちらの花きも、今よりも上回り、花き業界全体の成長を促していける。現在、花き生産量が少なく心配している方も多いと思うが、やるべき方向性は決まっている。まず生活者が「買いたい」と思うものを、仮説を立てて作り流通させていく。そして生産でも、流通(卸・仲卸)でも、小売でも業務の生産性アップを目指していく。一連のサプライチェーンがチームとなって出来れば、必ず花き業界は前進する。チームでお互いに重複作業をさけ、無駄のない流通で生活者まで届けるのである。  


 投稿者 磯村信夫  14:23