生産者の手取り安定と卸売市場の取り扱い方法の変化

花き業界
 3月10日、本日のセリ場は満席に近い状況だった。東京では4日も雪が降り、金曜日の取引は日本全国で弱含みや、2割安等の状況だったが、本日から需要が平常に戻れば、供給は1~2割品薄の品目が多いので、2月から続く高値水準に続いて、去年の10%~15%高に推移する予定だ。このように個人消費は天候によって左右されるので、相場も同様に天候によっても上下する。

 景気感は、企業は良く、個人が良くないとおおざっぱだが言えるだろう。その中で企業は中小まで含め、どのように賃上げをするかが問われている。これからの企業の未来を創る社員の賃上げをする。そして、他の生産経費も上がっているので、製品価格、あるいはサービス価格を値上げしてもらう。これを日本中の企業で行っていくのが、2025年の春のポイントだ。政治経済で不透明なことはあるが、賃上げをして、新しい価値を考えて値上げをしていく。2025年はとても大切な時期になるだろう。

 生鮮食料品花きは市場流通をしている。生き物だから腐りやすく鮮度が大切だ。天候によって出来や収穫量が変わる。供給の変動と同様、需要も天候によって変わる。寒い時には温かい食べ物を食べたくなるし、暑くなれば、すこしさっぱりしたものが食べたい。花も黄色、桃色、萌黄色、そして水色、紫。気候によって飾る花が変わってくるし、雨だとすると家庭用の花を買いに行こうとする気持ちが減ってしまう。従って、このように売るに天候、作るに天候なので、市場流通しているのだ。卸売市場では、需給バランス、品質、これによって相場が決まる。天候によって出荷量が上げ下げする。今冬のように出荷量が少なく高い時というのは、生産者のことを考えると、全員に利益が出ている訳ではない。一部の人は量多く出して高値になっているが、それ以外の人たちは、がくんと出荷量が減っている。天候異変の影響で出荷できないものが多くあるためだ。このように誰もが良いという訳ではない。そこで、リスクの多い農業者や漁業をしている人たちのため、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案が閣議決定された。指定品目の青果については(指定品目については、法施行後にも順次拡大予定)、生産コスト、また運賃などの流通コストまで含めた「コスト指標」を作成する。これを価格交渉の材料に、売り手と買い手に価格交渉へ誠実に臨むよう努力義務が課される。国の指導監督やGメンが配置され、場合によっては調査する。あまりに非常識と思われる場合には指導や勧告、公正取引委員会への通知などが実施される。青果生産者が安心してつくれるようにする法改正だ。さらに、卸売市場法改正案には、市場開設者に指定品目や指標公表を求めることも盛り込まれているという。これが衆参の農林部会で討議され、今国会で可決される予定だ。

 この法案は、最初は一部の青果品目に限られる。しかし、法案の意義は花市場にとってもとても重要だ。「安心してつくれて、一生懸命やれば収入計算出来そうだ」と、生産者の減少を止めるだろう。新たに農業をやりたいという人が沢山出てきて欲しい。「コスト指標」を一つの指針にすることが必要であるという意識を、花き業界にも及ぼし、花の産地もこの方向に向かってゆくだろう。市場で一定の評価を受けている個人出荷の生産者も、出荷市場に価格の要望を出して交渉をしてくるだろう。卸売会社もそのつもりでないと、花き生産者の減少の歯止めにならないし、供給の安定、更には増やしてもらうことなど夢のまた夢となってしまう。

 では、この法改正において、われわれの卸売市場の意義はどんなだろうか。漁業者も農業者も、数が足りない現状にある。これが国産の生産量不足に繋がっている。需要はしっかり存在しているが、供給が追いついていないのが現実だ。従って、卸売会社は今後とも予約相対や買い付け比率を高めていかないと、荷が確保できないという危機感を持っている。もちろん、大手小売店や仲卸業者も同じく、この課題に直面している。大手小売店や仲卸は、より安定した供給のために市場と一緒に産地に赴き、予約相対を行うことでリスクを抑えることができると考えている。もし万が一の時に代替品が必要になった場合、卸売市場を通して契約していれば、卸が代替品、代替産地、代替等階級を考える。さらに、品質という点でも、日本列島が縦に長いことを考慮すると、最も良い品質の産地は時期によって変動する。質にこだわる業者ほど、卸売市場を利用している。その意味で、今回の法改正は、食品産業による持続的な食料供給を実現するために、費用を考慮した価格形成の確立を目指すものだ。

 最後に「委託品の自己買受」問題をお伝えしたい。卸売市場で委託品を自己買受して、それより高値でも安値でも販売することが出来る。しかし、生産者から指値委託があった場合には、これは共選共販の産地なら、出荷奨励金の対象売上に含められる可能性がある。委託品を自己買受して、指値委託の値段では売れないので、欠損して安く買参人に販売する。その差損はどうなるのか。自己買受をしたから、仕切り改ざんではない。でも、本当にそうなのだろうか。自己買受ではなく、透明感を持って買付をすれば良いのではないか。もし、出荷奨励金も考慮するのであれば、それも上乗せした金額で買付すればよい。透明感のある取引をすべきというのが、卸売市場ではないか。
 またこんなこともある。買い手が決まっていない予約相対をする卸売会社があるのだ。値段は産地の協定値段で、予約相対を仕切っているが、売り先は無いので、最初は良いが、途中から安値で販売するようになる。とんでもない安値でその産地の花が売られると、その安値がその地域の相場の基準になってしまう。そうしてみんなが損をする。今までこういうことが繰り返される年もあった。「委託品の自己買受」については禁止とすべしというのが、市場流通ビジョンを考える会※の、開設者に対する市場規則の改定項目の一つの意見だ。

※「市場流通ビジョンを考える会」
東京聖栄大学の藤島先生が中心となり、青果・水産・花きの卸・仲卸有志が幹事になって進めている勉強会
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投稿者 磯村信夫 14:25