春に向けて

花き業界
 本日のセリ開始前に、一日遅れだが節分の豆まきを行った。「大荷は内、福は内」というのが、花市場・大田花きのかけ声だ。セリ場にいる買参人に投げたものをキャッチしてもらったり、配ったりした。

 「大荷は内」は、花き業界にとって最も大切なことだが、特に昨年の12月中旬から荷が遅れていることもあり、品薄で高値が続いた。月が変わりようやく品揃えが出来てきたが、それでも例年の2月初旬と比べると、1割は高い相場展開となっている。産地からすれば生産費が本当に上がっており、自分の人件費分の値上げも希望したら、卸値が例年の2割高でも「ちょっと手取りが足りない」ということになるだろう。一方、小売店でも、昨年末から小売価格の値上げをせざるを得なく、お客様に花を買ってもらうことが本当に難しくなってきており、「常連さんの買い物頻度が少なくなった」とぼやく買参人の方もいる。ここはもう一度、花き小売業界・卸売業界は、可能な範囲で値上げを忠実に行っていきつつも、消費者に納得してもらうように説明したり、あるいは価値の訴求を前面に出していく必要がある。また、卸売市場の社員の皆様には、花き業界を代表して消費者へ販売してくれている買参人へ、「相場が下がってきた今が正念場です。ぜひともセールスをしてください。そして花の価値を訴えることによって、値段と価値とのバランスを感じていただき、お客様にもっと花を手にとってもらうようにしましょう」と、素材提供の立場ながら、生産者を代弁して訴えかけて欲しい。
注)ただし、文化的消費であり義務的消費の仏花や榊は、極力値上げをおさえていただきたい。仏花は家庭の花そしてプレゼントの花とは財布が違うからである。

 このような厳しい状況の中でも、「花や緑を通じて持続可能な社会を、横浜から友好と平和のメッセージを発信する」と宣言する、「GREEN×EXPO 2027(2027横浜園芸博覧会)」が、横浜市の瀬谷地区(横浜から電車で約30分)で開催される。そして未来にこのイベントが控えていることもあり、横浜のみなとみらいの大さん橋そばの展示場では、JA愛知みなみ様が展示会と、ちょっとした販促場所を設けて、消費拡大のための「Minami Flower Days in 横浜」が開催された。また、ちょうど同じ日に、池袋サンシャインで「第73回関東東海花の展覧会」が開催された(元巣鴨プリズンの跡地に建てられたから、平和のシンボルでもある花のイベントが行われることは、この地にとって大変意義深い)。コンテストがメインの花展で、各県から選ばれた優秀な生産者が出品した、息をのむような美しい造形の花々が展示されていた。野山の花は人知れず楚々と咲いているところに魅力があり、宗教的な、また哲学的な想いを我々に抱かせる。一方で、文化の花として人間によって品種改良され、生産でさらに磨き上げた市場流通している花は、まず美しい。その中でも選抜され、関東東海花展に出品されたものは、言うなればオーラが凄い。ここが野山にある花とは違うところだ。そこにあるだけで場の雰囲気を変えてしまう。人間が真善美を求めて品種改良し、生産者が作りこむと言ったら花に失礼だが、花と一緒に協調しながら、美の目標に向かって育ててきた、その才能を伸ばしてきた姿がここにある。よく俳優さんで、遠くにいてもオーラがあって分かるといったような人がいるが、そういうようなものが品評会の中にあった。

 週末はそのような展示会を見学したりして過ごしたが、花の美しさをもっと引き出して、お料理のように取り合わせも含めて表現していくのが「いけばな(華道)」だろう。昨年12月、日本の「華道」が無形文化財に登録された。いけばなは沢山の流派が現在でも活躍している。これまでは無形文化財に登録されていなかったが、公益財団法人日本いけばな芸術協会、一般社団法人いけばな協会、一般社団法人帝国華道院、一般社団法人日本華道連盟が一堂に会し、新たに「日本いけばな伝統文化協会」を設立、文化庁に申請して認定されたのだ。今後、いけばなの先生方の中から、人間国宝が出てくることを期待したい。また、無形文化財になったということは、いけばなの先生方もまた、無形文化財保持者である。これを看板に大きな場所のディスプレイや、レストランでの花生け等、これだけ海外の方が多く来られるようになったので、新しい仕事を展開していって欲しい。また、観光業者と一緒になっていけばな体験教室を開催する等、力を注いで欲しいと思った。

 節分が終わり、いよいよ春がくる。まだ寒いので花き業界はこれからが本番だ。無形文化財に「華道」が登録されたことの意義を考え、そして荷がこれから沢山出てきて、しかし、生産者の「まだまだこれではやっていけない。もう少し」という要望に応えて、小売価格は値上げをしつつも、消費者に納得してもらいながら、決して割高に感じさせないようにして販売拡大をお願いする次第である。いよいよこれから、春の商戦が始まる。節分を期にやる気がみなぎってきた。


投稿者 磯村信夫 15:39