日本の農業は強い。家族経営の農業にもっと誇りを持って
経済
私はスキーが趣味で、冬以外はトレーニングを兼ねて低山に登るが、山に入ると農地がある。また、関東平野は広い。東北道を行けば栃木の佐野あたり、関越自動車道だったら高崎のあたりまで関東平野だ。そこから山間部に入るが、山間部にも農地がある。それはそうだ。日本は山が多く、しかも南北に長いため、農地も40%は山間部にあるのだ。そして、大規模農業をするには緯度が同じ平地がなければならない。日本はその意味で、大規模生産には不向きな国土だと言えるかもしれない。そのため、日本農業は家族経営が全体の98%もいるのかと思っていたら、EUでも96%、アメリカでも98%が家族経営の人たちだという。すると農業というのは、まさに一家で行うものだということになる。農家の人たちは地域保全の担い手であり、地域文化の担い手でもある。
その人たちの生活をどのように考えていくかが、地域活性化のポイントだ。地球温暖化や天候異変、そして今世紀は「地震の世紀」と呼ばれるほど地殻異変があり、私は農業が大変難しい仕事だと思っている。しかし、その中でも、日本の農業は他国と比べて強いと思っている。国産自給率の比較がよく話題に上がるが、農業関係以外の人たちは、海外から輸入した飼料を食べた牛や豚、鶏は国産品の扱いになっていないのをご存じない。米は100%国産だし、野菜も80%、花は市場流通と産直・直売所を含めると90%が国産だ。日本の家族経営の農家の人たちは、強い経営を行っているのだ。因みに、大規模農家ほど転作など政府補助の作物を作っていて、それが大切な収入源の1つになっていることを知っておかなければならない。ベースは野菜にしても花にしても家族経営で、国産は品目・品種の多彩さ、そして品質、量、美味しさ、美しさにおいてレベルが高いのだ。
近頃の生活者の懐具合としては、ボーナスのあった7月の可処分所得は前年を上回ったが、それ以降はまたマイナスになっている。食料品が値上げされるとエンゲル係数も上がり、個人消費が更に振るわない悪循環だ。衆院選での各党の方針を聞いていると、アルバイトの最低賃金を上げることを打ち出している。また、企業には正社員のベースアップをお願いしたいと言っている。私は、その前にアメリカのフードスタンプ(アメリカの低所得者に配られる食料品購入支援:現在はSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)という制度で、適用されると電子カードが配られ、食料品に使うことが出来る)のような仕組みを、日本もやるべきだと思っている。そうすれば、小売のスーパーマーケットにしても、値上げを要望する農家にしても、上手く売価の値上げ、そして所得増が実現していけるのではないかと思っている。
「衣食足りて礼節を知る」ではないが、人間は根源的な欲求を満たした先に、自己実現や生きがいを求める。そのアイディアが新しいビジネスやイノベーションに繋がっていく。子供食堂に頼らざるを得なかったり、夏休みに給食が無いから食事に悩む親御さんが多くいては、良い日本が作れない。
こういった格差解消が、経済の活性化に繋がっていく。この夏の米不足を思い出していただきたい。資源が不足しているところのみ経済が存在する。そしてあらゆる経済は、機能し続けるために成長を必要とする。生鮮食料品花きの値上げ、農業者に所得増、少なくともサラリーマン並みの所得確保が出来る農業の在り方を、私見ではあるが考えていくことが必要だと思っている。
PS:後日、立憲民主党代表・野田佳彦氏が、水田だけでなく田畑を含む農地全般を対象とした農家への直接支払いを公約としていることを知った。
投稿者 磯村信夫 11:58