基本にあるのは地産地消の観点

大田花き
 来る12月2日、「市場流通ビジョンを考える会」の秋期研修会が開催される。「市場流通ビジョンを考える会」は東京聖栄大学の藤島先生が中心となり、青果・水産・花きの卸・仲卸有志が幹事になって進めているものだ。私が中央魚類(株)の伊藤会長から代表幹事を任されたため、現在では大田花きで会議を開催することが多い。

 来年は新市場法の施行から5年目で、第一回目の見直しの時期である。現在、生活者は家で料理するよりも、出来あいの総菜を買ったり、外食したりすることが多くなっている。また、昨今の天候異変にできるだけ左右されない、鮮度保持貯蔵や冷凍品の需要が高くなっている。従って、鮮度保持やカット野菜などの加工を、花きであれば、切花の下葉処理や水揚げ処理、また、アレンジや、場合によっては籠花まで作っていく。このようなことが卸売市場にも求められている。更に、市場自体の建て替えの時でもあるので、ここをどのようにしていくのか。2024年問題を経て、市場が変わっていかなければ生き残っていけない。「市場流通ビジョンを考える会」では、このようなことを話し合っている。

 花き卸売市場の場合、供給不足で地方の卸売会社は品揃えをしにくくなっている。前年は切花も鉢物も絶対量が足りず、全国的に単価が高かった。つい先日まで「四か月間も菊類が足りない」というようなことが起こった。

 切り花の共選共販産地は2024年問題もあり、市場を絞る方向に向かっている。この中で活躍するのが荷扱い所だ。東京・大田市場のすぐそばには、花き専門の荷扱い所が2つある。また、飛行機便で羽田に到着したものについては、日通さんが仕分けを行っている所もある。浜名湖以東の多くの卸売市場は、東京の共同荷受け所に月・水・金と荷物を取りに来ている。産地からトラックで直送してもらっても、4t一台分、大型車一台分の荷物を受けきれない。そんな市場は、東京の荷扱い所が50程の卸売市場に分けてくれるので、一定に小さくなったロットで荷物を取りに行ける。これが浜名湖以東の卸売市場が質・量ともに切花類を揃えることが出来る仕組みだ。また、不十分な品揃えを補充するため、都内の中央市場でも調達する。地方市場は地元の生活者の求める花を供給する社会的責任がある。

 地産地消を振興していこう。あるいは、国産を買って応援しよう。SDGsとは別に、このような気運が高まっている。地方市場は改めて、地元や県内の産地を大切にしなければならない。鉢物は地元産地から集荷して回っているが、切花も集荷に回るくらいの意気込みが必要だ。また、系統農協と一緒に花作りを奨励したり、あるいは、個人的なつながりで花を作ってもらってグループ化したり、このようなこともとても大切な市場の役割だ。そして、基本的には同じ花飾り文化を共有するエリアの地産地消を優先し、地元の生花店を通じて生活者に販売する。これが卸売市場の第一の目的になった。勿論、日本列島は縦長のため同じ品目でも産地リレーをしたり、地元で生産出来ないものも多いだろう。そういった時に、東京の荷扱い所を利用し、地元の生活者のために荷揃えをしていただきたい。産地の意向で「物流にしても商流にしても、東京の中央市場から荷を調達してほしい」というのであれば、市場同士でネットワーク化を図るのが自然だろう。

 少子高齢化・人口減の日本では、あらゆる業種で今後ますます労働力不足が深刻化するため、合理化して生産性を上げなければならない。卸売市場で物流加工から最終商品まで作り、川下に付加価値をつけて生花店を応援する一方で、やはり素材流通においては地産地消が大切だ。地元に愛着のある生活者が望むからだ。そしてメイドインジャパンだ。生活者には国産を買いたい意向がある。勿論、輸入品も日本のマーケットを維持するためには欠かせない。その際、数量確保のためだけでなく、トレンドを捉えた嗜好品としてのニーズにあった商品も今まで以上に意識していただきたい。

 市場外流通の場合でさえも運賃、事故処理、代替品、決済などあらゆる点から、取扱高20億円から30億円規模の地方市場を介した方が総合的には経費を抑えることができるだろう。取扱高20億円未満の市場は、デポか仲卸的な視点で機能を発揮する。道州制を仮定した時、同地域で合理的に集散する機能を持つ卸売市場は、取扱高50億円から80億円の取扱い規模、そして全国規模ないし輸出拠点の卸売市場には、200億円前後の取扱いが必要である。

 共通の文化的な背景、そして花飾り文化の地域に根差した地元の卸売市場が、社会的に役割を果たす場所になるよう、地産地消を基本に荷揃えを行っていただきたい。その為には、全国の花市場はスケールメリットが生かせる規模にする努力(合併・業務提携等)をしなければならない。  


 投稿者 磯村信夫  15:08