地球環境の課題解決を、一緒になって考え、実践する時
その他
SDGs(持続可能な開発目標)は2015年、国連で採択され、国連に加盟する193か国が2030年までの達成を目指している。SDGsのメッセージには、「民間セクターに対し、持続可能な開発における課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを求める」「政府だけでなく、大企業だけでもなく、中小企業や協同組合にも求める」といったことが記されている。また、特に環境圏を改善する、カーボンニュートラルにする為に「新しく産業革命を起こしてください」と促している業界は、石油・ガスの業界、石炭業界、鉄鋼業界、セメント業界、アルミニウム業界、石油化学業界、運輸・輸送業界、建設・不動産業界、農業の業界となっている。我々花き産業も農業、あるいは運輸・輸送に関わっている。花き業界でもカーボン排出をしないよう、地球にこれ以上、負荷をかけないようにすることをもっと自覚すべきだった。こう私は考えている。
携帯電話料金を大幅値下げしてくれた菅元総理が、2020年に行った所信表明演説で「『経済と環境の好循環』を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。わが国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言いたします」とおっしゃった。
江藤拓自民党フラワー産業議員連盟会長が、再び農林大臣に就任されたが、就任記者会見では「25年ぶりに、『食料・農業・農村基本法』が改定され、初動の5年間を集中的に取り組んでいきたい」といったご発言があったことを思い出した。そこで「食料・農業・農村基本法」改正法をよく読んでみたら、第三条にこのような記載があった。「食料システムについては、食料の供給の各段階において環境に負荷を与える側面があることに鑑み、その負荷の低減が図られることにより、環境との調和が図られなければならない」。花きも同様で、「生鮮食料品“花”システム」として、同様に取り組んでいかなければならないと強く感じた。
パタゴニアはサーフィンや山登りの道具で有名だが、衣料品でも人気がある。パタゴニアの精神で「カーボンニュートラル」と「ネイチャーポジティブ」という2つの概念を下に、農業を実践している。それは有機栽培を実践した上で、さらに土壌の健康を高めることを強化した農法「リジェネラティブ・オーガニック」だ。その素材の綿や麻等を使ったウェア等を販売している。またFAO(国際連合食糧農業機関)でも新しい農法について推奨している。土を耕さない不耕起栽培、有機栽培、環境再生型農法、そして精密農業だ。これらの指標には、花のMPSがあり、青果のグローバルギャップがある。
このように農業は変革していく。花き業界でもSDGsの課題解決のために対応していく必要がある。生産面では、有機栽培で花を生産したり、また、オランダのMPS基準に沿って、肥料や農薬、そして水まで含めて適切な量にするために土壌分析をしっかり行ったり、スリーブ等の石油製品を極力最小限に使用する等の取り組みが行われている。日本の卸売市場ではどうだろうか。先行しているのはターレ―(ターレットトラック)だろうか。ガソリンを使わず、昭和の時代から電気式だ。これら以外にも、仕事のやり方、考え方をもっと考えなければならない。一人一人がもう一度知識を高め、自分事とし考えて行動しなければならない。
現在、日本の日常生活では、エンゲル係数が25%を上回って可処分所得がますます少なくなっている。また、来年からは団塊世代がすべからく後期高齢者になる。担い手不足はどこの産業でもある。このような中で各産業が産業構造を変えていく必要があるのだ。そうでなければ環境が保てない。そしてその上の経済は本当に立ちいかなくなっていくものも多いだろう。我々の農林水産業、JA、卸売市場、小売業の経済はどうなってしまうのか。各個人が真剣に考えて実行していく時だ。皆さん方と一緒に、問題意識を持って取り組んでいきたいと思う。 イギリスのシンクタンクはじめ国連は、このまま何もしないで受ける自然災害や社会損失、経済損失より、 SDGs、2050年カーボンニュートラルを努力し達成した社会的利益、経済的利益のほうが断然多いとしている。 今現在の日本の生鮮食料品花きの市場に出回る量の少なさ、消費水準から乖離した高値を見ても、これはうなずける。 このままではいけない。時間がかかろうが、良いと思うことなら何でもやるつもりで実行し、 多様な生物が生きてゆける地球の大自然を復活させていく努力を、日本の花き産業人としてやっていこう。
投稿者 磯村信夫 14:26