地域の要となる市場の生産性向上

花き業界
 花は地域ごとに異なる文化を持ち、その使い方や飾り方もそれぞれである。そのため、地域の生活者が欲しい時、必要な花を届けることができるよう、地元文化を良く知る花き卸売市場や小売店(専門店や量販店等を含む)が不可欠である。また、地元で生産された花を購入し、飾ることは、その地域への愛着や絆を深め、地域社会に貢献することにもつながる。地産地消での地域の経済循環はとても大切だ。もちろん、地元の花が一年中生産がある訳ではないので、足りない時は大田花きからも地方市場へお届けし、多い時には大田花きを通して各買参人へ供給する。「花で人々に笑顔を届ける」ことを目指す大田花きはこのように支援し、地方市場が自立した経営を行うことが重要だと考えている。

 先週、青森県弘前市で講演を行ってきた。その内容はとても大切なことなので、少しだけその内容をお伝えしたい。これまでのデフレーション時代において、企業が最も警戒していたのは、需要の縮小だった。産業の担い手となる生産者が減少する一方で、需要や供給も縮小し、例えば花屋やスーパーの売り場も少なくなると予想されていた。しかし実際は、むしろ医療や介護だけでなく、電気や水道、ガス、道路等のインフラ、そして生鮮食料品花き卸売市場のエッセンシャルワーカーのサービス需要が旺盛でありながら、それを支える人手が足りなくなるという供給面での制約だった。今後、少子高齢化がさらに進行する中で、人手不足が一層深刻化すれば、企業による人材獲得競争はさらに激化するであろう。その結果、日本経済は予想以上に賃金が上昇する局面を迎えることになると予測される。2023年には働き方改革が進み、フレックスタイム制度や在宅勤務の普及、長時間労働からの脱却が進んでいる。このような環境の変化により、時間あたりの賃金は今後ますます上昇していくと予測される。もうすでに、時間当たりの賃金が日本中で上がっている。働く人たちの単価が上がれば、購買意欲も上がり需要が必ず出てくる。所得が高くなるということは、嗜好品の花が売れる。花は必ず売れる時代が来る。そう考えている。

 人材獲得競争が激化し、人が集まらない。このようなことが各組織体、とりわけ株式会社で起きている。花市場も株式会社だ。今まで集中しており効率的だった買参人への販売も、密度がまばらで地域が広がる。これに耐えられる大きさの事業体でないといけない。それに耐えられる人の採用、そして賃上げに耐えられる利益を生みだせる効率性を持った会社でなければならないのだ。省力化投資はどうなっているか。DX・GXに対する投資は出来ているか。生産性の向上が出来なければ、少子高齢化の日本において、企業として生き残っていけない。

 今後は、需要を心配するのではなく、供給を心配する時代になったということである。この変化はとても大きい。我々花き業界においても、2023、2024年の高値で理解できる。更にコメの大幅な値上がりと政府米の放出など、様々な経済変動が起きている。日本中に言えることなので、特に地方市場の皆さんは、生き残りをかけた合併、あるいは施策を行っていって欲しいと思う。


投稿者 磯村信夫 16:44