品不足の時こそ知恵でカバー

花き業界
 毎月15日は榊を入れ替えたり、仏壇の花を入れ替えたりする月半ばの需要がある。昔と違ってカレンダー通りに入れ替えるわけではない。しかも、涼しくなったから花持ちも良い。従って15日前後の二、三日、そして一日前後の二、三日が、榊や仏花が動くときである。ただ、本日16日は、店頭の在庫はまだあるものの、積極的に仏花素材を仕入れるというわけではないようだ。

 仏花素材の菊類は、他の露地花と同様、不作が続いている。生花店の方は「高いので利益が出ないので困る」とよく仰っている。そんな時、私はこう返答している。「専門店より大変なのは花束加工業者の皆さん方だと思います。専門店の皆さんは、色々なものを取り入れて、工夫して花束やアレンジを作る等、技術でお客様に納得していただくことも出来る。従って、利益が少なくなっているのは事実かとは思いますが、技術でカバーすることが出来るのが専門店です。一方、花束加工業者の皆さんはなかなか大変です。スーパー買い取りのところでは、売価や入れる素材まで一定に決まっていますから、本当に利益が出しにくい。スーパーに委託して花販売を行っているところはまだ良いですが、それでも大変です。スーパーにお祝いの花やプレゼントの花を買いに行く訳ではなく、家庭用のものですから、小売価格はせいぜい家飲みワインと同じ金額です」。

 利益が出ないと嘆く生花店の方に、私は問いかけた。「人は何のために働いているのか」と。すると異口同音に「お金のため」と答える。それは私もそうである。しかし、確かにお金のため、食うためではあるが、「あなたは何のために働いているの」と更に問いかけると、まさに「人はパンのみに生きるにあらず」で、自分のやりたいこと、夢、生きがいのために働いていると、生花店の皆さんは仰った。「お客さんが喜んでくれたり、笑顔を見るのが嬉しくてね」や、「自分は花づくりの農家を応援したいから、一生懸命、花を販売する」だとか、「私は花で毎日幸せにすごしている。お客様にも同じように思ってもらいたいから」等、いくつも答えがある。いずれも自身のことではなくて、社会に、あるいは周りの人々に尽くすことに繋がっている答えだ。

 利益が出ない、赤字になりそうだ。そういう時にもう一度思い起こしていただきたいのは、「人はパンのみに生きるにあらず」だ。なんのために働いているのか。ビジョンでもいいし、夢でもいいし、それからよく言われるパーパスでもいいが、これらを明確に持っていただくことが必要である。これらを突き詰めて考えると、身体の内からエネルギーが出てくる。知恵が湧いてくる。生花店だったら、時代の色目を取り込んで、今まで使わなかった花と花、あるいは葉物や枝物を取り合わせたりして、自分の技術で素晴らしい花束を、あるいはアレンジを作って、お客様から喜んでもらえるのではないか。また、同様に販促のアイディアも出てくるだろう。今まで通りやっていたことから、更に知恵を使い、自身の持っている能力を総動員して、お客様に買っていただくのだ。こういうことが出来るのではないか。

 もう一度、「人はパンのみに生きるにあらず」で、自分はなんのためにやっているのかを明確にし、社員がいたら社員と一緒に知恵を出しながらやっていっていただきたい。この秋の不作はもう少し続く。知恵で、アイディアで乗り切っていただきたいと思う。  


 投稿者 磯村信夫  14:03