危機感を持つ
経済
イスラエルは私の大好きな国の一つで、5回は行ったことがある。そのうち1回は、エジプトからガザを通り、テルアビブやイェルサレムに行った(昔だったからこのルートで行けたのだ)。旧約聖書に登場する「ジェリコの戦い」のジェリコにも行ったし、死海の近辺にも行った。デルアビブ近辺やギリシャローマ時代の遺跡のすぐそばの釣り場でよく魚釣りをした。勿論、違った楽しみも沢山ある。とにかく、日本とはまるで違う考え方をする国に行って時を過ごすのは、私にとって最高の時間だった。
イスラエルは花の生産も盛んだ。乾燥していることもあり、ネイティブフラワーやルスカスが有名なのは皆さんもご存じの通りだろう。農業については、まさに先進的な国である。ここのところ、大きな生産出荷会社がいくつか倒産する等、生産に陰りが出てきた。しかし、現地の友人・イジックからのメールでは、それなりに生産は続いており、今年も今まで通り輸入会社YMS様やクラシック様を通じて、日本にも出荷があるのではないかとのことだった。
旧約聖書のヨシュア記の内容が現代まで影響を及ぼしていることを「ヨシュア・コンプレックス」と呼ぶそうだが、紛争の影響で今後もイスラエルからの花を21世紀の最初のように、潤沢に得ることは難しいかもしれない。しかし、ダンジガー社のような優秀な種苗会社が、品種改良を行う等、優れた生産技術を持つイスラエルが、今後とも日本に素晴らしい商品を出荷していただけることを期待したい。
話は変わるが、花き業界で危機感を持ってもらいたいのが、戦後ベビーブームで生まれた団塊世代の人たちが、2025年には後期高齢者になり、2040年までに亡くなっていくということだ。人口が減るだけでなく消費者もいなくなる。生産から流通、小売りまでの、花き業界の中で頑張っている年配者もいなくなる。ここにもっと危機感を持ってもらいたい。
農水省によると、2023年の基幹的農業従事者は116万人と、ここ5年で約30万人も減った。そして2023年の新規就労者は前年比5%マイナスだという。前年比3.5%減がずっと続くと、絶滅危惧種の生物にしても、植物にしても、衰退してこの世からいなくなってしまう。これが花き業界でも起きてしまっているのではないか。そんな結果にならない為にも、どのように効率化し、生産性を上げていくかが課題になる。生産者も卸売市場(卸・仲卸)も、生花店も、もちろん運送会も、花き業界に携わる会社、人にとって大きな課題だ。
2024年問題は、少子高齢化を睨んだ運送改革だ。我々市場は改革出来ているだろうか。産地はどうだろうか。農協の経済事業はどうだろうか。集出荷所は今後とも採算を合わせることが出来るようになっているだろうか等々、2025年、団塊世代が後期高齢者になるタイミングまでに、行動を起こさなければならないのだ。我々卸売市場は地域の生産者に花を作って農業を継続してもらう。あるいは新規就農者になってもらう。県や農協、全農の皆さんとも協力して、地産地消も行っていく必要がある。肝心の花が少なければ、単価が高くても縮小均衡で、広く人々に花を使ってもらえない。
生産振興を行い、各自の組織の生産性をアップさせ、2040年までに生きていける体制をつくる。卸売市場だけでなく、花き業界全体で考えて実行に移せるよう、皆さんにお願いしていきたい。
投稿者 磯村信夫 13:21