世帯構成から考える

その他
 今のマンションに引っ越してきて、10年余りになる。南海トラフの大地震予報の時も、マンションが耐震構造のため、今までの家より安心感があった。そして今回の台風の時も、ベランダにある植物を取り込む程度で、後は災害時の普段から準備しているものの確認だけで終わる。このようにマンション生活は楽ちんなようだが、実はマンションに住んでいる人たちとの横の繋がり・連帯が無いので、いざとなった時の不安がある。表札を誰も出していないので、住んでいる人の名前も分からない。妻は同じフロアの6室の家族構成は分かっているようだが、私は両隣のご主人と奥様、子どもたちが何人いるかなど、簡単な家族構成が分かるだけで、他は何も知らない。特に東京では、それが普通になっている。

 今日、単独世帯が増加している。統計を見ると、2020年の単独世帯は40%弱、夫婦と子供の世帯が全体の25%、私のように夫婦のみの世帯が20%、ひとり親と子供世帯が10%だ。こうしてみると、夏に旅行に行けば夫婦世帯、子供と両親世帯が目につくが、実は単独世帯と”ひとり親と子供世帯”を足すと同じくらいいるのだ。単独世帯でも、友人や恋人とショッピングや観光に行くこともあるだろう。確かに食事に行けば、そういった人たちを沢山見かける。しかし、この単独世帯はかなりの人たちが単独行動もしている。私が住む大森の駅から徒歩15分圏内には、ワンルームマンションが多く存在する。そしてこの単独世帯の人が気軽に行けるようなカウンターのある店や、一人でも入りやすい店が多く出来てきている。駅にあるフラワーショップでも、単独世帯らしき人が花を買っているのをよく見かける。

 単独世帯でも、自由に動きながらも社会と繋がりを持っている人がいる一方、今日問題視されているのが、あらゆる共同体から切り離された個人や家族の出現だ。個人が地域の共同体から、そして会社からも、マンション族であればその集合住宅からも切り離されてしまっている。この精神的、社会的孤立のため、若い方で孤独死するケースも増加している。一方には、この不確実な世の中でも積極的に良い人的繋がりを持ち、やる気を持って一つのことに打ち込む人がいる。そこには必ず富が生まれる。その富は一番大切な家族だったり友達だったり、仕事上の深い繋がりであったりする。そういう風に出来ている。そして残念ながらもう一方には、社会や企業への所属意識が薄く、孤立してしまう人がいる。この二極化が存在しているのだ。

 大森駅の近辺でも、高層マンションが二棟建設中だ。そろそろ出来上がる一つのマンションには、「完売御礼」の垂れ幕が下がっていた。話を聞いてみると、20階以上の高層階でも、若いご夫婦が買われることが日常化しつつあるという。今までは年配夫婦が一軒家を売って移り住む等、そういう人たちが20階以上には多いイメージだった。しかし今は、所得のある個人が、事実婚か結婚か分からないが一緒になって、一定金額の高層階のマンションを買っているようだ。
 単独世帯の増加、そして世の中の二極化で、いかなる共同体からも切り離された個人の存在。この姿を前提に国も社会も企業も、私であれば住んでいるマンション組合も考えていかなければならない。少なくても、近所に保育園があるように、子育ては個人のものではなくて、社会全体で見ていく。人はバラバラで非力だから、社会がシステムとして援助を行う。このように社会の仕組み、そして共同体の在り様を検討していく必要があると、街を見ていて思う次第である。


投稿者 磯村信夫 13:12