ライブであることの価値、セリの価値
大田花き
大田花きは、セリを大切にしている。青果でも、東京青果ではメロンはじめ、嗜好性の高い絶品のものは、セリにかけている。マグロの大物も、豊洲の魚市場ではセリにかけている。そうなのだ。セリは品評会と同じで、目利きが品定めをして、質と需給バランスで時価を決める。劇場における劇のようなものだと大田花きは思っている。ネット取引が増えてきているが、現物を見ないと分からないことも多い。同じ品目品種でも、産地によって品質や枝ぶりが違う。また、特に新品種は見なければ評価出来ない。ネットで買う時には、まだ見たことのないようなものは、あるいは初めてものは、よほど冒険心がないと買えない、あるいは余裕がないと買えないだろう。普通は頭の中に既にあるものを買う。だからこそライブのセリが必要なのだ。ライブである価値、また、セリ場が品評会である価値。この価値が欠かせないと大田花きは考えている。幸い、入荷量が本当に少ない時期でも一時間半、普段は二時間以上、セリに時間を要している。それくらいの入荷量があり、またセリで見た商品を「自分の店でも売りたい」と思って、セリ場に買いにくる様々な業態の買参人がいる。セリで生み出された相場が一番納得感のあるものではないかと思っている。
関西では、鶴見市場がセリを全て在宅セリに変えたが、その後も素晴らしい成績を維持し発展している。市場運営の手法として、一つの成功事例である。社内でも様々な意見があるが、私が社長の時は、リアルのセリを最も大切な販売手段としたい。花のプロのセリ人と、花のプロの買参人だけが取引をしていると言っても、産地によって異なる品質や規格、同じ当階級でも、切りはじめや切り終わりの品質の差、そして新品種等、初めて見るものについては、やはり「百聞は一見に如かず」だからだ。社員も花のプロになる勉強のため、セリ場で現物を確認し、記憶することが多い。セリ前取引の後にセリが行われるが、残ったものだけをセリにかける訳ではなく、セリ前取引の時点で、セリにかける商品を一定数確保している。その上でセリ前取引が行われるが、誰にいくらで売れているかを、生産者は24時間システム上で把握出来る。物流面では、セリ前取引品はセリ前に搬出され、それ以外のものはセリ順を組んでセリにかけ、セリ後に分荷される。いくつか重複する作業があるのは承知で、即ち、経営サイドからすると経費をかけてでも、このライブのセリに価値を置いているのである。
投稿者 磯村信夫 13:34