みずみずしい花を市場流通で

花き業界
 最高温度が30度を超えるようになって、夜も蒸し暑い。従って鮮度保持対策が欠かせない。花き業界では、産地で花を切って出荷してから、農協の集出荷所、トラックでの輸送、卸売市場の卸・仲卸での温度管理、小売商が市場から持って帰って店に着くまで、ここまでを1,000温度時間値※① 以内で届けようという目標がある。そうすれば殆どの花が10日間(小売店で3日間、家庭で7日間)、花もちしてくれる。一週間もてば、お客さんも損をしたと思わないだろう。温度管理を怠って早く枯れてしまったら、お客さんはもう店に行かないし、花に失望してしまい、花き業界は大切なお客様を失うことになってしまう。

 業界を挙げて温度管理に取り組んでいるが、現実にはそこまで出来ていないところもある。生産地での作業場の温度はどうだろうか。農協ないし地元の出荷所では温度管理が出来ているだろうか。運送トラックは保冷車を使われているだろうか。市場では温度管理が出来ているだろうか。生花店が市場から店頭まで運ぶ時、ライトバンなら空調もきかせられるが、幌付きトラックで常温のまま運ばれていないだろうか。温度管理を徹底したサプライチェーン構築を、実現させていかなければならない。
 
 温度管理と一緒に注意が必要なことに、湿式縦箱輸送している切り花がある。バケツ輸送や、段ボールの中に水の入ったソフトバケツを入れて、縦輸送をしているものだ。生産地からの輸送の際、前処理材とは別に、輸送中に水が腐らないように殺菌剤を、また、咲く時にエネルギーが必要なので品目によっては栄養剤を添加して水に溶け込ませている。湿式縦箱輸送をしている産地で一部このように取り組んでいるところもある。殺菌剤も何もなく水だけでは、飲みかけのペットボトルの中でバクテリアが繁殖するのと同様、花の茎についていたバクテリアが繁殖し、結局、道管を詰まらせてしまう。湿式縦箱輸送の際は、バクテリアが繁殖していることを前提に切り戻して水揚げをしなければならない。バクテリア等の菌の増殖が分かるルミノメーターでチェックするのも良いだろう。

 先日の市場流通ビジョンを考える会※②事務方会議にて、帯広地方卸売市場株式会社の藤井取締役に講演頂いた。帯広地方卸売市場は、鮮度管理を強く打ち出されており、素晴らしい卸売市場運営をされている。業界全体で鮮度管理を強化していかなければならないと強く感じた。伺うところによると、帯広卸売市場は主体的になんでも自分ですることがモットーの会社だそうだ。勿論、ノウハウやICT等をアウトソーシングすることもあるが、基本的には何でも自社で考えて、自主運営で卸売市場を展開されている。青果・水産・花き、場内に場外市場、食堂等の事業展開をされており、鮮度を保って、その品物本来の味を提供する。この想いを胸に市場経営をしていらっしゃるとのことだ。講演では、北海道も夏の暑さが厳しくなってきたため、鮮度保持対策・温度管理にも注力したいとの話が出た(北海道・帯広は、冬は凍らせないようにするのだけでも大変だそうだが)。

 農協の集出荷所、運送店、花き市場(卸・仲卸)の皆さん、鮮度管理は我々の使命です。消費者に暑い夏でも花もちの良い花を供給して、失望させないようにしましょう。

※①花もちには諸条件があるが、切花収穫後の温度×時間が重要だ。例えば一日平均20℃だとすると、切り花後二日、20℃×24時間×2日=960温度時間となる。オランダは500温度時間値だが、日本の夏は暑い。だから、日本の場合、まず1,000温度時間値を目標とする。1,000温度時間位で小売店に届けられれば、消費者の家庭で一週間花をもたせることが出来る。

※②市場流通ビジョンを考える会
東京聖栄大学の藤島先生が中心となり、青果・水産・花きの卸・仲卸有志が幹事になって進めている勉強会


 投稿者 磯村信夫 16:27