どんな部屋に住みたいか。ドラマや宣伝で見る「素敵」と思う部屋に似合う花が売れている
大田花き
昨日12月8日(日)は松市が開催された。本年の異常気象のため、草丈の長い商品の出荷が多くなり、逆に使い勝手が良い、短い細いものの出荷が少なかった。大きいものは門松として使われることが多いが、東京はマンションが多くなってきたので、需要も年々減ってきている。松市での単価も下がってしまった。逆に短いものはよく売れ、“カラゲ”という当階級の商品の需要が年々高まっている。根引き松は、大きい商品と小さい商品の値段が殆ど変わらず、小さい方に人気が集まった。年数をかけて大きく立派につくられた松は、ショーウィンドウやホテルで大きくいけこむ時に欠かせないはずだが、どうしても家庭用、あるいは、室内でテーブルの上に置いたり、邪魔にならないところに置いたりするようなものを意識した、短いものに需要が大きく、松市では本当に人気だった。最後に、ここ五年、五葉松の需要が年々落ちている。11月23日の勤労感謝の日が終わると、世間はクリスマス色の深い緑と赤色の需要が高まる。五葉松は深い緑だが、お正月にはもっと黒松のような緑が人気なのだろうか。生産が減り、本年は2022年比で半分も出荷が無かったため、久しぶりに採算が合う高値となった。
どんなライフスタイル、室内装飾が人気になっているかというと、トレンドの中心は20歳代、30歳代の若い人で、彼らが「素敵だな」とイメージする部屋の価値観に似合うようなものが、松でも花でも売れているのだと思う。これが、博報堂生活総合研究所が提唱している「消齢化社会」なのだろうか。花の市場での取引を見ていても、平成とは違い「令和はこの花がこの値段になるのか」というような、価格の底上げが各品目にある。それはきっと、昭和から平成と続いた花の価値観、あるいは使い方、似合う場所が違うのだろうと思われる。
さて、今年のお正月はどんな飾り付けをして、新年を迎えようか。伝統を貴ぶことも大切だが、時代に合った飾り方をしなければならない。大田花きの取引をみていると、そんな気持ちにさせられるのである。
投稿者 磯村信夫 10:53