これからの花き流通を考える
大田花き
相場の安値は消費を拡大するから、業界全体で考えれば良しとする見方もあるが、そうではない場合もある。それは需要期が過ぎてしまった所に、今回の場合だったら仏花素材の、中国のカーネーションが行き所が無くなったので出荷されるような場合だ。この結果、国内のカーネーション生産者に多大なダメージを与えた。2月まで寒かったので暖房費もかさんだだろう。暖かくなってきたので、カーネーションも元気になってきて、量的にもまとまってきた。その矢先のことだったので、国内生産者に大変なご迷惑をおかけしている。「安値は消費拡大」と捉える考え方は、一つには正しいが、一方には、「ロスフラワーに繋がる」という、現在マスコミが取り上げている見方があることを忘れてはいけない。生花店で、あるいは仲卸、花束加工業者でロスフラワーになってしまったら、何のためにその花が生まれてきたのか。その花が生産されて店頭に届くまでのCO2排出、運賃や段ボール経費、その他諸々の生産経費が全て無駄になってしまう。もう一度、サプライチェーン全体でコミュニケーションを取り合い、無駄のない生産流通を構築しなければならない。そのためには、システムの共通化や高度化から始まり、物流でもIOTによる仕組み作り等を導入しなければならない。これらも、ある意味では地球規模で必要だ。
花は30年前の国内作付面積の半分になってしまった。これからもう一度盛り返そうとしている。その1つが、この業界内のコミュニケーションによる無駄の排除でロスフラワーを減らして、お金を出してでも買いたいと思う花を生産・流通させてゆくこと。そしてもう一つは、需要も供給も天候に左右されるリスクの高い商材なので、このリスクに見合った生産経費に、そして下代・上代の価格にしていくことだ。この価格を生活者に十分に納得していただき、買ってもらう。従って生活者までコミュニケーションをしていく必要がある。この2つを頭に入れて、もう一度20世紀の後半の生産者数、生産面積、そして売上高5,000億円に近づけていかなければならない。
農林水産省農産局園芸作物課花き産業・施設園芸振興室(通称:花き室)の、花き振興策が固まってきた。花き園芸事業者も国の花き振興策を自分事として捉えてやっていかなければならない。また、現在、食品等流通法や卸売市場法の一部を改正し、特定品目について適正な価格で取引されるように進めていく動きがある。現段階は青果の一部品目だが、全ての生鮮食料品花きも今後この方向性に動いていくはずだ。この改正法の意向は、もう一度国内生産者に日本の園芸農業を頑張ってもらうことだ。これが消費者にとって健康で幸せになる為に、大切なことだからである。園芸農業の衰退は、国を危うくするという危機感がある。自給率の問題だけでなく、1つの地域文化が無くなる。美味しい物やバリエーション、美しい物がなくなってしまう。遠くからくるものは、その分だけ環境に負荷をかける。従って、国内生産物を持っていることが、日本の国益に繋がるのである。
【最後に】
長い間お世話になりましたが、磯村信夫の、社長としての週一のコラムは本日でおしまいです。次回からは、新代表執行役の萩原正臣が担当いたします。私自身は相談役として、取締役会会長として来年度の1年間も、花き業界に寄与出来るよう尽力して参ります。
私自身は仕事をはじめ、あらゆることは最初と最後をきちんとすることが、人間の行いだと思っています。真ん中は仕事上でも、そして私生活でもミスや様々なことがあると思います。しかし、ミスが起きたとしてもその一日の最後にけじめをつけて、このミスを糧とすべく次のところに向かう。その日一日に礼をする。このことが必要だと感じながらやってきました。始末は明日を創る生き方です。一日を大切にする生き方です。今後は新しい執行部が、今までよりももっと素晴らしい大田花きグループにするべく、即ち、社員がのびのびと始末・礼をもって仕事の始まりと終わりに臨み、中身の実働で皆様方のお役に少しでも立とうと努力してくれるでしょう。マンネリ化ではありません。良いと思うことを考えて、今までのことを、ある意味では否定します。それは時代が今も次に進んでいこうとしているからです。また、大田花きはAIとロボティクスで人手不足を軽減しようと考えながら進んでいきます。それはより人間しか出来ない仕事をする為です。
「創って作って売る」。これをこれからも大田花きはやっていきたい。今までコラムを読んでくださっていた皆様方におかれましては、次回からどうぞ萩原代表執行役の生の声をお聞きいただければ幸いです。
磯村 信夫
※萩原代表執行役のコラムは、4月2日(水)から毎週水曜日に掲載いたします。