小売店と一緒になって納得価格の商品をつくる

花き業界
 買い物や食事に行くと「これもこんなに値段が上がったのか」と、思わず手を引っ込めたり、注文をやめることがある。その時本当に必要なもの以外は我慢してしまう場合もあるが、こと水道光熱費や通信費等は使わないわけにはいかないから、そのまま値上げを飲むことになる。通信費と言えば、妻が「来年から年賀状をやめます」と記載して今年の年賀状を送っていた。花市場では通信費が出荷者負担となっているが、今年の10月からの郵便料金の値上げを受け、売買仕切書や送金明細書の通信費を値上げさせていただいた。仕事上の場合、我が家のように年賀状をやめれば済むという訳にはいかないので、生産者の皆様には負担となってしまう。そこで、大田花きが提供するオンラインシステム「OLIVE+(オリーブプラス)」を紹介したい。OLIVE+では、注文返答や送り状作成機能の他、売買仕切書・送金明細書を確認、ダウンロードすることが出来る。簡単3分で新規申し込みOK。通信費を削減出来るので是非ご加入、ご活用いただきたい。
※通信費改定のお知らせ・OLIVE+(オリーブプラス)のご案内はこちらから⇒クリック

 さて、郵便料金の値上げもそうだが、肝心の花の卸売価格も値上がりしている。花の生産費のコストプッシュが大きな要因だ。とにかく肥料からはじまり、生産経費が何でも上がってしまい、運賃も上がった。昨年の価格では利益が出ない、あるいは赤字になってしまう方が沢山いる。それではいけないと、卸売会社は価格を高くしようとしている。今年は猛暑で作柄も悪く、供給が足りなかったため単価が高い。従って、小売価格も高くせざるを得ない。しかし、仏花のような文化的需要、ある意味では必需品のような側面のある商材については、卸売価格ほど小売価格を値上げ出来ない現状だ。これも小売商にとっては大変な状況である。スーパーの仏花は一年中、大体同じ価格で売っているから、花束の納品業者は利益が十分に出ているとは思えない。四苦八苦してどうにか赤字にならないようにするだけでも大変だろうと想像する。

 我が家は一週間に一回、妻が主に三カ所の花き専門店を順番に回って花を買ってきてくれている。そしていつも報告してくれるのだが、「最近は自分が思っている支払価格より千円以上高いことが多い」「これだと少し花離れになるかもしれないわね」との感想であった。また、私の妹も同様に毎週花を購入しているが、「出来るだけ四千円以下におさえたいけれど、この頃は五千円くらいになることもあるのよ。実家が花市場だったから週一でお花を買うけれど、普通の人は花から離れてしまうかもしれないよ」と漏らしていた。身内ばかりの話で恐縮だが、結局マーケティングの基本は「自分だったら買うか買わないかが最終判断になる」ということだ。そこから言えば、花き業界はかなりギリギリの線まできてしまっているのではないか。各店でヘビーユーザーの来客頻度は減っていないだろうか…。

 今のこのタイミングで一番大切なことは、割高感を払拭することだ。素材を大切にする時価の寿司屋や天ぷら屋、あるいは日本料理屋も値上げで、お金を支払う段になると「こんなに高くなったのか」と、思わずその店を敬遠したくなる。美味しいけれども、満足するのであるけれども、しかしお金を払うとその満足がすっ飛んでしまう。素材を大切にし技術を売る花の専門店も、良いものを扱う寿司屋や天ぷら屋、日本料理屋と同様に値上げが激しいのだ。

 このように、いたるところで価格が上がっている。国民は今までのデフレに慣れきっていて、ここのところのインフレに中々ついていけていない。私は、花の場合には(その理由が)理解出来る。高い値段をつけているのは大田花きだからだ。「でも」なのである。花き業界の上得意の人たちの花離れを起こさないよう、花市場(卸・仲卸)は小売店と一緒になって、値上げしても納得できるだけの満足を与える価格帯・商品群を開発していかなければならない。それも早急にとの危機感を持っている。また、小売店は値上げしたことによって信頼を無くさないように、「オネスト(正直)カード」ではないが、現在の花の価格の上昇を消費者に伝えていただきたいと思う次第である。


投稿者 磯村信夫 15:43