「プロボノ」
大田花き
赤倉のゴンドラは15分程乗っているので、二回目に乗り合わせたときには、世間話を超えて自身についての話になった。その人は金融関係の人だったが、僕が花の仕事をしていると言ったら、自分の庭でやっているガーデニングの話にもなった。「私もそろそろリタイアをしなければならない年齢になっている」と話をしたところから、先のネルソン提督の話になった。ネルソンは「自分の責務を行った」と言っている。この話から、「今後どうしていくべきか」という話になった。
東京に帰ってから、イギリス人の彼と話したことが心に残っていた。そんな時に自宅で本を読んでいて、「プロボノ」という言葉に出会った。「プロボノ」は日本ではあまり聞きなれない言葉だが、ボランティアは本業と無関係の分野で活動するのだが、プロボノは公益のために、自分が持っている専門的な知識や技術を用い無償で労働することだ。引退後、他の人もやっているようにマンションの管理人を引き受けるのも良いだろう。しかし、「プロボノ」として無償で働くのも良いのではないかと思い立ったのだ。今、花の生産が一時に比べ少なく、高値になっている。高くならないと生産者の生活は楽にならない。しかし、高すぎると生活者に花を買ってもらえない。これでは駄目だ。今までの経験を生かして、生活者が欲しがる花を生産者にもっと作ってもらうよう働きかける。また、生産面積を拡大してもらい、花き農業を継続してもらう。あるいは、「こうしたらもっと売れるのではないか」と、小売や中間流通の人たちにお伝えしていく。そして花き業界がもっと繁盛するようする。こういったことが出来ないだろうか。
イギリス人の彼も、公益の為に働きたいという希望がある。イギリスにはボランティア活動やプロボノ活動が少なからずある。そう言っていた。首都圏は、2030年まではまだそこまで人口が減るわけではない。しかし、地方は消滅する市町村があるかもしれない。このような中でどのように花き産業のお手伝いが出来るのか。そして「その地に住んでいて良かった」と生活者に思ってもらえるだろうか。この意識で臨むことが、私の「プロボノ」には必要で、自分自身を生かしていけるのではないか。そのように今は考えている。
投稿者 磯村信夫 15:34